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湊がみんなと奏でるストーリー  作者: 輝晒 正流
第十二話 新米女子はキモイかこわいか
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新米女子はキモイかこわいか の 4

 五時間目の後の休憩時間。

 湊のところにやってきたのは、友香だった。

 手には雑誌を持っている。

 「あっ!」

 その友香を見つけた瞬間、恵が指差す。

 「この学校だったの!」

 「この学校だったのです」

 にこやかに答える友香。

 「友達?」

 「ただの知り合い」

 理沙が尋ねると、無愛想に即答で返す恵。

 「知り合いとは、つれない言い方だね。親友と言ってくれ」

 同じ学校に入学してるのを知らない段階で親友と認めたくなくなるものだが、友香は親友でありたいようだった。

 「ところで、僕に用事?」

 湊は限りある休憩時間内に友香の用事が済むように、話を変えた。

 「そうそう、湊にも用事。今日の部活休みになったの、連絡あった?」

 「うん。昼休みにメールを見たよ」

 「それでだよ。部活のときに『彼氏にしたい男性タレント』の結果について、湊ととことん話し合おうと思ってたのに、部活が休みになったから、今話し合おうと思って」

 持って来た雑誌を指差して、友香が言う。今月の特集が『彼氏にしたい男性タレント』となっている。

 「いや、僕はそういうの余り興味がないから」

 湊を囲む友香以外「当然よね」というふうに頷く。

 「でも鷲見晃一すみこういちは知ってるでしょ。なんで二位なのよ」

 「いや知らないし」

 「「「「えっ!」」」」

 と今度は友香も含めて、湊を囲む全員が驚きの声を上げる。

 「おととしメジャーデビューした超人気の男性デュオ・ホーク&イーグルの一人よ」

 「楽曲売り上げ去年のナンバーワンよ」

 「去年はドラマで主演もして、視聴率二十パーセント越えで、評論家も高評価の鷲見晃一だよ」

 それぞれに評価ポイントを上げていく。

 「ちょっとワルな雰囲気と、時々見せる目元の優しさのギャップがたまんないんだけど」

 友香が鷲見晃一の魅力に身をよじる。

 「唯一残念なところは、スタイリストとかメイクさんとかスタッフからの評価が悪いところよね。ちょっと天狗になってるみたいね」

 通りすがりに千穂が意見を述べてゆく。

 「本当に知らないんだよ。ねぇ、知ってる? 鷲見晃一って」

 湊はとなりの席の元木翔に聞いてみる。女子だからみんな知ってるのだと考えたからだ。

 「知ってるよ。ちょー有名だから」

 翔の答えに湊は、自分が流行についていけてないことを再確認した。

 小さいときから流行りものに興味がなく、友達とそういう話をすることが苦手だと自覚はあった。

 だから、みんなが知っていることを自分が知らなくても、今更ショックを受けることも、劣等感を感じることもなかった。

 しかも、デビューがおととしなら、ほとんど知る機会がなかったから尚更だ。

 「さてはもぐりだな」

 何のもぐりかは分からないがそう言って、友香がじゃれるように湊の襟首を絞めあげる。

 「もぐりだよ。元々興味はないし、それに寝たきりだったのと、リハビリで忙しかったのとで、テレビとかはほとんど見てないんだよ」

 その言葉に、全員言葉に詰まる。

 芸能情報に疎くても、少しくらいは聞いたことがあって普通なのに、それを湊が知らなかったのはちょうど事故から入院、リハビリというときに重なっていたためだ。それに気付かず、知らないのはおかしいという言い方をしたことをその場の全員が反省する。

 「バカバカバカ」

 友香が自分の頭を叩く。

 「ゴメン湊。わたしがバカだったよ。少し考えれば気付いたのに。許して、嫌いにならないで」

 「ならないよ」

 「良かった。じゃあ今度、鷲見君の魅力についてじっくりと教えてあげるよ」

 「そんなのいいって。それより用事はそれだけ?」

 「そうそう、大事な用事を忘れるところだった。鑑定人にこれを見てもらおうと思って」

 友香は恵に向き直って言った。

 その言葉を聞いただけで、恵は顔を引きつらせる。

 雑誌の間に挟んでいた写真を取り出す。

 湊の背後に謎の光が写った写真だが、湊は撮影されたときに見たのとは少し違うなと感じた。

 それを見た恵は、引きつらせていた表情から普段の表情に戻った。

 「この光が何か知らないけど、ただの写真だよ」

 「じゃあ、こっちは」

 と言って取り出したのは、湊がこの前に見た写真だ。

 「うわぁ」

 短く叫んだ恵の全身の毛が逆立つ。

 「ダメダメダメダメ」

 その写真を拒絶するように、恵は後ずさる。

 「ということはこれは本物か。湊は何かに取り憑かれているかもしれないよ。一緒にお祓いに行こ」

 「どういうこと?」

 状況を十分に理解しきれず、理沙が尋ねる。

 「恵は心霊写真になぜか拒絶反応がでるのよ。だからこれは本物の心霊写真ってこと。ちなみに最初のは先輩に作ってもらったフェイクだよ」

 恵がフェイクに反応せず、本物にだけ反応したのは、見た目ではなく本当に霊的な何かを感じたからなのではということに、すでに理沙は思い至っていた。

 しかし、心霊写真の存在ということには、半信半疑だった。

 「心霊写真なんてあるわけないよ」

 心配そうに見つめる友香を気にせず、湊はそう笑い飛ばした。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

たいへん長らくお待たせしました。

いろいろありすぎて、時間が取れず今になってしまいました。

ちょっとオカルトなので、夏の間に掲載できて良かったです。

今後ともよろしくお願いします

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