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湊がみんなと奏でるストーリー  作者: 輝晒 正流
第九話 新米女子と死の記憶
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新米女子と死の記憶 の 2

 テレビでゴールデンウィークの初日といわれている土曜日は授業があり、月曜日も授業があった。火曜日が祝日というスケジュールだ。

 連休の合間のその月曜日の授業というのは、全く集中力に欠けていて、みんなダルそうにしていた。

 そんな中で、湊は心配をするような、時々不機嫌そうな様子をしていた。その原因が友香たちにコスプレ写真を見られた一連の出来事だとは、誰も知る由もなかった。

 休憩時間、湊から離れた場所で、理沙が有紀と恵に声を掛ける。

 「今日の湊って、様子が変だよね。落ち着きないっていうか。どうしたのかな?」

 「直接聞いてみれば?」

 そっけなく有紀が答える。

 「生理に決まってるじゃない」

 対して恵は、ニヤニヤとしながら言う。

 「それはないわ。だって……」

 有紀はそう言い掛けて、口を噤む。そして、

 「なんでもない」

 と言うと、不愉快そうに湊の方を見る。

 その湊に聡美が近寄っていく。そして理沙たちを手招きして呼び寄せる。

 「ねえねえ、おいしそうなケーキ屋さん見つけたんだけど、今日の帰り寄ってみない? ひとりじゃ、入りにくくて」

 聡美が声を掛けたのには、今日の湊の様子が気になってというのもあった。

 「うん。……あっごめん。部活なんだ」

 湊は一度は頷いたが、思い出してそう答える。

 「わたしたちも、そう」

 理沙も続いて答える。

 「あ、でも一時間くらいだから、待っててくれたら一緒に行くよ」

 しかし、せっかく誘ってくれたのだからと思い直し、甘いものの魅力に背中を押されて、そう言った。

 「わたしも少し委員の仕事があるから、そのくらいなら待ってるわよ」

 「それなら、わたしたちも大丈夫だと思う」

 「うん」

 理沙の言葉に恵も頷く。

 「わたしは部活遅くなるから、行かない」

 有紀は突き放すような言い方をする。そして、その場を離れていった。

 湊は有紀のその態度が気になった。先週末くらいから、自分を避けているような気がしていたからだ。

 「付き合い悪いわねえ。いいわ、わたしたちだけで行きましょ」

 「じゃあ決まり!」

 恵がはしゃぐように言った。


 放課後の写真部。

 「なんだ、お前ら気持ち悪いな」

 ニヤニヤする有紗と友香に向かって、部長の道彦が言う。

 「友情に誓って言えないけど、とってもすばらしい写真を見たんです」

 友香の言葉に、そこまで言ったら詮索されるじゃないかと、湊は心の中で文句を言う。

 「もったいないことしたなぁ」

 博がつぶやく。

 それを見た湊は、博を睨みつける。他の人がいなければ、杖を振り下ろしていたかもしれない。

 ひとり置いてけぼりを食らっていた岩永広幸は、みんなの様子から湊の恥ずかしい写真のことだろうと推測する。

 「三沢さんのエッチな写真だったんでしょ。僕も見たかったな。」

 「ここにもいたよ。セクハラ男子」

 広幸のつぶやきに、友香がぼやいた。

 その隣で置いてあった湊の杖を、届かないところまで有紗が移動する。

 湊の頭の中にあった、消そうとしても消えないコスプレ写真の映像が、広幸の言葉によって少しエッチなものに置き換わった。

 真面目な湊は、浩太郎のときから、エッチなマンガはほとんど見たことがないが、裕一郎と同じ部屋だったために、ほったらかしになっていたマンガのエッチな表紙だけは時々見ていた。そのせいでコスプレをした自分が、妄想の中では豊満な胸を強調し、男を誘うようなポーズで、艶かしい表情をしている。そんな想像が湧いてきて、それを全力で振り払った。

 「そんな写真はないよ!」

 湊は叫んで否定した。

 「ワイセツな写真の撮影や持ち込みは禁止だからな。三沢」

 部長の道彦は、湊の写真には興味を示す気配もなく、そう注意する。

 カメラが欲しかったとはいえ、コスプレをしてしまったことを今更ながらに後悔した。

 「うー、違うのに……」

 机に突っ伏して、湊は嘆いた。

 「あの写真が残っていたら、説明できたのにね」

 友香が湊の背中を優しく撫でて、慰めてくれる。

 が、湊は友香を恨んだ。

 写真がなくても説明くらいしてくれたってと思う。

 確信犯なのは分かっていた。絶対に話さないと約束したことを盾にとって、擁護もせずに成り行きを楽しんでいるのだ。

 落ち着いたところで部長が話を始める。

 「えー、写真部最初の活動だが、体育大会の記録写真だ。各自の空いている時間で交代で撮影を担当するので、出場する時間が決まれば報告して欲しい。カメラは部の物をみんなで引き継いで使うこととする」

 道彦の話が終わると、写真部として知っておくべきカメラの仕組みや基本操作などを先輩たちが教えてくれた。

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