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湊がみんなと奏でるストーリー  作者: 輝晒 正流
第六話 新米女子はまだ知らない
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新米女子はまだ知らない の 2

 ところでクラブ活動を決める期限は過ぎていて、まだ見てないクラブを見学してから決める余裕はもうなかった。

 それで、湊はこれまでのところで一番よかった写真部にすることにした。

 放課後、入部の希望を伝えにいく。ちょうど一年が参加しての初めての部活の日だったので、そのまま湊も参加することにした。

 もちろん今度は忘れず、身体の状態のことも説明する。それでも、快く迎えてくれた。

 最初は自己紹介から始まった。

 新入生は湊のほか、立花友香と岩永広幸の二人だ。部員は二年が渡辺孝太郎と佐藤博、三年が藤原有紗と部長の久保道彦だ。

 湊の自己紹介を聞いて友香が質問する。

 「湊はボクっ娘を狙ってるの?」

 親しげを通り越してなれなれしく話しかけてくる友香だが、彼女の明るい雰囲気を湊は好きになれそうに感じた。

 「そんなんじゃないよ。昔からこうだったから」

 いつかは直さないといけないのかなと思いつつ、自己否定にもつながりそうで、湊は出来れば今のまま「僕」を使い続けたいと思っていた。

 自己紹介が友香の番になると、自ら質問する。

 「あたし、カメラってそんなに興味ないんですけど、だいたいシャッター押したら、ちゃんと写るじゃないですか。それでいいかなって感じですけど、大丈夫ですか?」

 友香の言葉に上級生たちは、困った後輩が入ったなという顔をする。

 「大丈夫なわけないだろ。プロのカメラマン顔負けなくらいみっちり教え込んでやる」

 孝太郎が意地悪そうに言う。

 「なんですかその体育会系みたいなノリは。やめてくださいよ」

 笑いながら友香が返す。

 「部活なんだからいいんじゃないですか。ちゃんと写れば。今のカメラは性能がいいですし。でもせっかく写真部に入ったんだから、一緒にカメラのことを先輩に教わろうよ」

 「湊いいこと言う。渡辺先輩もそのくらいのこと言わないと。だいたい名前がなんとか太郎だなんて、ちょっと古臭いからダメなんですよ」

 「名前は関係ないだろ! 全国の太郎を敵に回す気か」

 言葉の内容ほど、怒ってないのは顔のニヤつきを見れば分かる。

 「初対面からケンカしないでよ」

 有紗が割って入る。

 「立花とは初対面じゃないんで。中学校の後輩で、そのときからこんな感じです」

 「幼稚園のときから後輩です」

 友香がさらに茶化す。

 「僕は、孝太郎って、いい名前だと思うけど」

 元浩太郎の湊としては、言わずにはいられなかった。

 全員の視線が湊に向く。

 「そんなこと言うと、こいつは付け上がるわよ」

 有紗が孝太郎を指して言う。

 「湊はあたしの味方だと思ってたのに。さては、渡辺先輩に惚れたな?」

 そんなつもりの言葉ではないのにと、湊は思う。仮に男だったときに言ったとしたら、「そうだね」くらいの話しで済むはずなのに、今は男女間の話に拡大解釈されてしまう。

 「なんでそうなるんだよ」

 不満を口にする。

 「えー、そろそろ部活の話をしたいんだが……」

 部長の道彦が自己紹介が終わらないことに業を煮やして、言葉を発した。

 先輩たちが活動の内容の説明を始める。

 カメラの仕組みや撮影技術の勉強と、クラブ活動や学校行事や風景等の撮影と発表、そしてコンテストへの応募などが主な活動だ。

 カメラは自前で用意することになっていて、ある程度のズームや広角が使えること、デジカメなら最低限度の画質が指定されていた。

 それは写真部としての撮影技術の習得と、卒業アルバムなどへの掲載のためということだった。

 湊は、一度兄に相談してみようと思った。兄の裕一郎は写真が趣味でカメラにも詳しい。湊がカメラに少し興味があるのは、兄の影響とも言えた。

 その裕一郎は就職して家を出ている。新入社員の間はだいぶと忙しいらしい。

 湊が最後に会ったのは正月だ。

 だから、久しぶりにゆっくりと話がしたい、そう思った。


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