新米女子は新しい生活をスタートする の 1
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません
また医療技術や法律も実際のものとは異なります
交通事故のシーンがありますので、不快に思われる方は、ご注意ください
また物語は現在と過去が平行して進んでいきます。
▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ は過去部分へ切り替わり、
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ は現在部分への切り替わりです。
それでは どうぞ お楽しみください
もう四月だというのに、快晴だがまるで冬のような冷え込みの朝。
両親の手を借りて湊はタクシーを降りると、その冷たい空気をマスクごしに深呼吸した。
「大丈夫かなぁ?」
湊は母親に、服装の乱れがないか見てもらう。
「大丈夫よ」
松葉杖を両側につく湊を、両親は左右から見守りながら校舎へ向かって入って行く。
そんな湊の横を、手を繋いだ女子が笑いながら走り抜けていく。
クラス分けの掲示がされている場所には新入生たちが溢れている。
他にも校庭の片隅などに生徒たちが集まっていて、楽しそうに話をしている。
自分と比較して湊は女子生徒たちを眺める。
自分とは全く違う。新生活に対して自信に満ちて、キラキラと輝いていて楽しそうに見えた。
そんな彼女たちの一員として、いよいよ女子として高校生活が始まるのだ。湊は緊張と不安の高まりを感じていた。
顔の半分ほどを隠している大きめのマスクがなかったら、緊張はきっとさらに数倍になっていたろう。
そして試着以外では今日初めて着たブレザーとスカートの制服が恥ずかしかったこともあり、湊は顔を火照らせながら、昇降口へと急いだ。
母親に確認してもらったとはいえ、自分の格好はおかしくないだろうかと心配だった。
それに入学式の日から松葉杖をついてくる女子高校生の姿は、他の生徒の目に、どう映るのだろうかということも。
そして歳の違うクラスメイトとうまく友達になれるのかと。
不安ばかりが湊の頭をよぎっていた。
湊と両親はまず保健室により学校医の阪元先生に顔を見せる。
阪元先生は気さくに話しかけてくれるし、男口調だが優しい雰囲気の女性だ。
入試当日の体調を気にかけてもらっていて、おかげで入学できたことを感謝とともにまず報告したかった。
「予想以上にかわいく仕上がってるじゃないか」
髪形からブレザー、襟元のリボン、スカート、膝上丈の白い靴下とゆっくりと観察する。
「ありがとうございます」
今までなら嬉しくないその言葉も、今はなぜかとても照れくさくて、うつむき加減にお礼を言った。
「具合が悪くなったらすぐわたしに連絡するんだぞ。先生方にも話はしてあるが、まぁ素人だからな。どこまで分かってくれてるのか。それからクラスメイトには自分で話すって言ってたな。忘れるなよ」
「はい」
「それと女は顔だぞ。笑顔を忘れるな」
先生はそう付け足す。どういう意図で言ったのかわからず湊は少し首を傾げる。
「それではよろしくお願いします」
と両親が頭を下げる。
あまり時間もないことなので、三人は次に向かう。
職員室だ。
無事に登校できたことを報告し、いろいろとややこしいことになるかもしれないからとこれからの学校生活の支援をお願いする。
入学式直前で忙しそうだったので、すぐにお暇した。
それから入学式の行われる体育館へ向かう両親と別れ、湊だけは教室へと向かう。
別れ際、湊は心配する両親に「大丈夫だよ」と笑顔を送った。