新米女子は新しい友達をつくる の 3
ホームルームも終わり、帰ってもいい時間になるが、ほとんどの生徒はクラブ見学をするようだった。
「今日もリハビリ?」
「ううん、今日は休みって決めたから、お茶もして帰れるよ」
「そうこなくちゃ」
みんなが部活紹介で興味をもっていたのは、文化祭でのファッションショーの為に衣装をつくる裁縫部や、作った料理が食べられる料理部とか、やはり女の子らしい部活に興味があるようだ。
湊たちは、絶対嫌というところを除いて、教室の並び順に文化部を見て回ることにした。
歩きまわっていると、いきなり写真を取られてびっくりする。
「ごめんびっくりさせて。メモリカードは入ってないから」
プロが使うかのような黒い一眼カメラを持ち上げながら、彼女は言った。
「Wi-Fiカードでデータ飛ばしてるからでしょ」
「ばれたか。わたしは、新聞部員の一谷です。新聞部はいかが?」
四人は彼女の案内で、過去に発行された新聞をとりあえず見せてもらう。
校内や近隣の情報を載せた新聞をおよそ毎週発行している。
「この部の特徴は一番財政が豊かなところよ。生徒会からの活動費以外に広告収入があるから。取材と称して旅行もできるわよ」
旅行と言う言葉に、湊以外のみんなは誘惑されたみたいだ。しかしまだ入部を決めるには早すぎる。
「考えておきます」
理沙がそう答えて、みんなは次に向かった。
しばらくするとまたカメラを構えている人がいた。
「記念写真はいかが? すぐプリントするよ。もちろん無料」
「いや別に……」
湊が渋る。
「撮ってもらおうよ」
理沙の言葉に有紀と恵も同意した。
「じゃあこちらにどうぞ」
教室内には数人の部員がいて、三脚にセットされたカメラがあり、黒板に大きく書かれた『入学おめでとう』の文字が目に入る。
「座りましょうか」
湊のことを気に掛けてか、三年生と思われる女子部員が椅子を四つ用意する。
四人が座ると、彼女は湊たちの襟やリボンを直す。
「膝をくっつけて、ちょっと右に傾ける。顎をちょっとだけ引いて」
「じゃあ撮りまーす」
カシャとういうシャッター音とともにストロボがまぶしく光った。
「はいオッケー」
「いまプリントするからちょっと待ってね。ところで部活決まってなかったら写真部はどう? いろんな人と友達になれるわよ」
「どうしてですか?」
恵が尋ねる。湊も同じく疑問に思った。
「校内の活動や運動部の試合に出向いて行って、記録写真も撮るからよ。卒業アルバムの写真のほとんどはうちの部が撮影したものよ。だから仲良くなれるのよ。新聞部以外とはね」
「新聞部はだめなんですか?」
「あいつらは、自前で写真撮るから、うちから写真撮りに行くことはないし、似たような活動しているけど、写真に長々と文章つけて説明するから、写真の出来は悪くてもいい上に、事実と多少違っても文章が面白ければ見てもらえる。あの連中とは一生分かり合えないわ」
過去に何があったのか知らないが、かなり嫌いなようだ。
「できました」
はがきサイズの写真が四人に一枚ずつ配られる。
そこには四人の女の子が映っていた。湊は、他人からは女装した男子に見えているんじゃないかとずっと心配していたが、そうでもないのかもしれないと思うことができた。
「いい写真をありがとうございます」
理沙の言葉に湊もありがとうございますと答えた。
「良かったら入部してね」
彼女はそう言って四人を見送った。