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火般山☆僕の住む街

殺暦2015年。


僕は詳しいことは知らない。多分歴史の授業で習ったのだろうが、生憎と居眠りでもしていたのだろう。

とにかく、平和で、どこかよそよそしくて、それでいて少しだけ暖かいと言われた古き良き日本は滅び去って久しい。


今僕を始め、多くの人々が暮らすこの島国は、弐本(にほん)と言う。一回滅んだから二番目でいいやと、当時の大人達も投げ遣りに考えたのだろう。とにかくきっとそれだけ大変だったのだ、多分。



変わったのは国の名前だけではない。昔の日本に暮らす人達は、とても親切で礼儀正しかったと、海外でも有名だったと言うから驚きだ。今の弐本人達は、自己中心的で他人を蹴落とす事に必死で、時には暴力も辞さず、自分の欲望を満たす為なら何だってやる。まさに鬼、悪魔だ。昔の日本人が見たら腰を抜かすに違いない。


そういう諸々の悪に対して有効な、道徳と言う概念がその昔あったそうだけど、それが示す言葉の意味も、今では誰も知らない。なので道徳に期待は出来ない。この暴力に満ちた混沌の世界を僕は生きていかなきゃいけないのだ。


さて、ここで僕の住んでいる街を紹介しよう。なんせこの弐本の中でも、指折りに治安が悪くて混沌としている街なんだから。


その名は火般山(かはんざん)。弐本の裏社会、いや時代が時代だけに、裏と言うよりは「半分表社会」を牛耳る恐るべきジャパニーズマフィア、獰衝会(どうしょうかい)の総本山があり、警察も彼らの手先となって市民を恐怖に陥れている。


え?警察は治安を守る市民の味方だって?ははは、馬鹿を言っちゃいけない。あいつらの悪事に泣かされた人は、僕の短い人生の中でも両手両足の指で数えても足りない位見てきたよ。


まあでも、中にはたまにイイ人もいるけどね…まあこの話はまた後日。


そんな火般山で僕が今まで生きてこれたのは、ある意味奇跡かもしれない。ママが高い学費を払って、比較的平和と言われる中学校に通わせてくれたからだろう。


そう、この火般山では、大人が悪なら子供も悪なんだ。


イジメ、喧嘩は日常茶飯事。学校同士で対立して武力衝突しているし、無銭飲食、万引き、カツアゲ、強盗、何でもありだ。


僕の学校も比較的平和とはいえ、番長もいたし、喧嘩もしょっちゅうあってた。警察が来たのも一度や二度じゃない。まああいつらはさっきも言った通りの市民の敵だから、中学校の中で悪いことする口実が欲しかっただけだろうけどね。女子のスカートをめくってニヤニヤ笑いながら帰ってたな。あの鬼畜共め。


ちょっと話が逸れたけど、僕が今まで生きてこれたのは、まあ幸運の賜物なんだろうと思う。薔薇色の学園生活は無かったけど、イジメにも合わなかったし、五体満足で出られるんだからね。




そして僕の人生の本番はこれからだ。


僕は手元にある高校のパンフレットを開いた。


「火般山市立 火呆高等学校」


高名を読んでみる。かほう高校と読むのだ。


この火呆高校は火般山地区で唯一の進学校だ。偏差値は当然火般山の高校でぶっちぎりのトップ。僕の学力で合格出来たのは奇跡だろう。だがしかし、僕は勉強目的でここに入学を決めた訳では無い。そう、火呆高校は火般山地区にありながら、暴力とは無縁の平和な学校として知られているのだ。


きっとここなら不良に目をつけられる事も無いし、勉強は捗ってスポーツでも活躍。いつも友人に囲まれて、女子からは熱い視線を集めるだろう。そして学園一の美少女に告白されて二人はカップルになり…。


後は分かるな?まあ、そういうことだ。


ああ、早く入学したいなあ。そして暴力や理不尽に怯える日々から脱却するんだ。

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