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僕は鏡の前に立っていた。映る顔は平凡で、伸びた髪が目元を隠して、冴えない顔立ちを更に陰鬱に見せている。しかしこれで良いのだ。目立つ格好をして入学早々から不良共に目をつけられる位なら、地味で没個性的な方がずっとマシだ。


サイズが合うか試着した制服は、ちょっと大きめだが、まあそれほどおかしくはないだろう。

僕はブレザーにシワが寄らない様に気を付けながらもう一度服装を正して、最後にネクタイもズレを直した。


「うん。こんなもんかな…」


何気なく呟いたつもりだったが、部屋の外まで聞こえたらしい。

ドアがノックも無しに開かれて、ママの満面の笑みの顔が覗いた。そのまま部屋に入るとまじまじと僕の格好を眺め、あらあら素敵だのパパの若い頃にそっくりだの騒いでいる。


「もう…それくらいで良いでしょ。ママはいっつも大げさなんだよ」


僕としては迷惑だよというオーラを割と強めに出したつもりだったが、ママは全く意に介さない様子で、僕の新しい制服姿を様々な角度から眺め続けている。

僕はため息をつくと、ママの不満の声は無視して制服を脱ぎにかかった。部屋着に着替え終わった頃には部屋にママの姿は無くなっていた。




中学時代の僕は、幸せで充実した学園生活とは無縁の暮らしをしてきた。友達は一人もいなかったし、当然彼女も出来た事が無い。勉強もスポーツもろくに出来た試しが無い。イジメられていた訳じゃ無かったと思うが、クラスの誰ともまともに会話した記憶が無い。クラスで、いや学校で、僕は空気そのものだった。


だからこそ、と僕は強く思う。


高校生になったら、友達を作って勉強もスポーツも頑張って、彼女だって作るんだ。充実した薔薇色の学園生活を送るんだ。必ず。

壁にかけたブレザーを眺めながら、僕はそう決心していた。

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