21
直人とキャッチボールをしながら、慎吾は、いつまで経っても上手くならない自分にほとほと嫌気がさしていた。十回投げて三回は直人のグローブに届くのだが、それでもスパルタ教育から卒業させてもらえない。
「ちょっと休憩しようよ」
「そんなことじゃさ、奈緒子が来るまでに、ぜんぜん上手くなれないぞ」
それを言われると、少しつらいものもあるけれど、奈緒子にいいところを見せるためだけにキャッチボールの練習をしているわけではない。ただ単純に人並みにキャッチボールができるようになりたいという男のプライドがその動機だ。
きっと、絶対にそうだ。
奈緒子が来なくなってから、二日が経った八月十七日。
やはり奈緒子がいないと、心に風穴が空いたかのような漠然とした虚しさがあった。
二人に、奈緒子はしばらく来られないらしいと告げると、ワチコが不安げに自分のせいかとしきりにたずねてきた。
そんなことはなくて家の事情だと説明すればするほど、ワチコの耳にはその言葉が当たり障りのない言葉に聞こえるようで、納得のいかないという顔を作って、普段からは想像もつかないほどしおらしくなっていた。
そして、今日はまだワチコも病院に姿を現していなかった。
「なあ、今日はワチコも来ないのかな?」
おなじことを考えていたらしい直人が、ボールとともに言葉を投げてきた。
「うーん、どうだろうね。ワチコ、かなり落ち込んでたし」
ボールと言葉を返す慎吾。
ボールはいつものように的外れな場所へと飛んでいった。
「まあ、来ても、奈緒子いないんだから意味ないけど」
「うん。二人にはまた仲良くなってほしいけどね」
「大丈夫だろ。どっちが悪いってわけでもないし」
「そうだけど」
ボールをキャッチした慎吾は、そのまま直人のもとまで歩み寄って、
「ねえ、ホントにちょっと休憩しようよ」
と、汗だくの顔で懇願した。
なんとか懇願を受け入れてもらい、直人とともに207号室に戻ると、夏バテ気味の五匹の犬たちが思い思いに床の上にのびていた。
ベッドに笑顔で鎮座するクマのぬいぐるみを枕代わりにして、直人が寝転ぶ。
「あー、なんかこれ、丁度いいな」
「大丈夫? ワチコに怒られちゃうよ」
「いいんだよ、おれが取ってやったんだし、それに忘れたとき、取りに戻ったのもおれなんだぜ」
「そういえばあの時、直人が戻ってくるのが遅かったってワチコが怒ってたなあ」
言外に、あの場から逃げ出した直人を責めながら呟くと、
「だって、あのときは大変だったんだぜ」
と、渋面を作って直人が反論した。
「なにがさ?」
「取りに行って神社を出ようとしたらさ、なんでか知らないけど紀子たちが入り口の、えーと、そう、鳥居のところにいてさ、このクマ持ってるのをつっこまれてたんだよ」
「へえ」
その話を鵜呑みにする気にはなれなかった。紀子たちにつかまったのをこれ幸いと、あの気まずい雰囲気の処理を、自分にだけさせようとしたにちがいない、と慎吾は思っていた。
直人はそういうヤツだ。逃げるための言い訳を作る能力に長けているのだ。
「へえ、って。なんだよそれ信じてないのかよ?」
「そ、そういう意味じゃないよ」
そしてすぐに言葉の違和感に気づく、頭の回転の良さ。勝てる気がしない。
紀子が直人に好意を寄せているのは、端から見ていても分かる。だけど、直人のほうはどう思っているのだろう? 奈緒子が言ったとおり、男子が好きな相手に冷たく当たるものだとしたら、直人の紀子に対する態度はまさにそのとおりだ。
だが、そういう普通の性質というものが、この、目の前であおむけになった少年に当てはまるのかというと、はなはだ疑問だ。
直人のように、普通という枠からはみ出したような人間にも、それが当てはまるのだろうか?
ただ単純に紀子のことを嫌っている可能性も、十分にあり得る。
いずれにしろ自分には分からない問題だ。
それにあのとき、なんで奈緒子がそんなことを言ったのかも分からなかった。直人が紀子を好きなのかどうかが、そんなに気になっていたのだろうか? だとしたら、まさかだけど、奈緒子は直人のことが好きだったりするのかしら? もしそうだとしたら、とてもじゃないけど勝ち目がない。哀しいけど、それが事実。
「ねえ」
「ん?」
「……ううん、なんでもない」
聞けない。怖い。直人が奈緒子をどう思ってるのかなんて。
「なんだよ、言えよ。おれそういうのが一番イヤなんだよ」
「し、失恋大樹のさ、あの名前のことどう思う?」
「……ホントにそれかよ、聞きたいこと?」
「う、うん」
「……どうって言われても、ウソだろってしか言えない。ワチコはさ、なんか知らないけどちょっとマジになりすぎなんだよ。たまたまだよ、瀬戸のことは」
「そうかな?」
「そうだよ。え、チャーってそういうの信じてんの?」
「分かんないけどさ、ほら『金田鉄雄の家』でさ、UFO見たでしょ。だからさ、そういうのあるのかな、とかは思ってる」
「UFOは見たけどさ、だからってそれがなんで『失恋大樹』のハナシがホントだってことになるわけ? ぜんぜん関係ないじゃん」
「そう、だけど。でも奈緒子が前に、噂ってのはそれがどんなにバカバカしくてもその噂のある場所にはなんかの理由とかがあるんじゃないか、って言ってたよ」
「奈緒子が言ってりゃ、ぜんぶ正しいのかよ?」
「そういうことじゃなくて」
「うーん、でもさ、そういう幽霊とか呪いとかって、ウソだと思うんだよな」
「だけど、だけどさ、失恋大樹にはいっぱい名前が書いてあるよ。それに、セト君は名前を書かれてから十五日目に、学校に来なくなっちゃったじゃないか」
「本気で恨んでて、あんなとこに名前を書くヤツなんていないよ。好きな人にフラれたとか、好きな人に好きな人がいたとか分かって、イライラした奴らが書いてるだけだよ。瀬戸のはそれがたまたま重なっただけだって」
「直人の名前、だれが書いたんだと思う?」
「思うって言うか、99%で分かってるけどな」
「なんで分かるの? 男だって言ってたよね」
「男だって言ったのはさ、おれはだって、誰からも告白されてないからってのが理由の一つ。誰かは分からないけど、おれを好きな女子がいてさ、その女子を好きな男子が、それに気づいて書いたってことになるだろ」
「うん」
「それにさ、あの失恋大樹の周りって土じゃん。雨で濡れてたからさ、足跡が残ってたんだよ。まあ、足跡よりも確実にアイツだっていう証拠もあったけど。それに名前を書く奴らって面白くてさ、ちょっと悪いなっていう気持ちもあるのかもしれないけど、みんな下のほうに書くんだよ。たぶん隠れようとして、しゃがんで書いてるんだろうな。だけどさ、おれの名前は上のほう、おれらが立っててもフツーに見える場所にあった。そうなったらさ、悪いけど犯人はアイツしかいないじゃん」
ぜんぜん分からない。男だっていうのはなんとなく分かったけど、それ以外のヒントはどういう意味なのかさっぱり分からなかった。
「えっと、誰なの?」
「こんだけヒントあげたのになんで分かんないんだよ。おれは教えないよ、犯人」
「なんでさ?」
「だって、そんなのを書いたって、みんなにバレたらかわいそうじゃん。瀬戸じゃないけど、今度はそいつが学校に来られなくなるぜ。どうせウソなんだし、ほっときゃいいよ」
直人の意外な優しさに、それ以上つっこんで聞くことができなかった。
「分かった。もう聞かないよ」
「意外と素直だな。その誰にでも優しくて素直な性格が羨ましいよ」
急に真顔になる直人。いつもの小バカにするような顔で言われていたら怒ることもできるが、そんな表情では、なにを言っていいのか分からない。
ふと人の気配を感じて病室の入り口を見やると、ワチコが所在なさげに佇んでいた。
「あ、来たんだ」
「うん」
まだ奈緒子とのケンカを引きずっているらしいワチコは力なく頷いて、直人の寝転がるベッドに腰を下ろした。
「暑いんだから向こう行けよ」
ワチコの心境などおかまいなしで、直人がいつものように憎まれ口を叩く。
ワチコはなにも言わずに立ち上がり、今度はマットでアグラをかく慎吾のとなりに座った。いつもみたいになんの理由もなく肩パンでもしてもらった方が、いくらかこの場の雰囲気もなごむような気がしたが、体育座りで膝に顎を乗せるワチコは、なにかを考えているようで、まるで慎吾が眼中に入ってないようだった。
「ねえ、今日はどうする?」
「これからまたキャッチボールの練習だろ」
「それもいいけどさ、ワチコが一人になっちゃうじゃん」
「あたしのことは、べつにどうでもいいだろ」
「そういうわけにいかないよ」
「なんでだよデブ」
「なんでって言われても困るけど」
「……じゃあさ、またどっか行く? おれはどこも知らないけど」
「バカ、あんまりここから動かない方がいいって直人は」
「なんでだよ?」
「罰がいつやってくるか分からないだろ」
「だから、そんなのウソなんだってば」
「ウソじゃないって」
「ガンコだなあ。じゃあいいや、ここで寝てるから見張っててください」
「そのつもりだよバカ」
ワチコに皮肉の入り混じる笑みを浮かべてから、直人は背を向けて本当に寝てしまい、五分と経たないうちに静かな寝息がここまで聞こえてきた。
どうやら直人は慎吾とちがって寝つきのいい人間らしかった。
「ねえ、ワチコ」
直人を起こしてしまわないように気づかいながら、小声でワチコにしゃべりかけた。
「なんだよ?」
「なんで『失恋大樹』のことそんなに本気なの?」
「縁日の時に言ったろ。マサツグがホントになんかひどい目にあって、学校に来なくなっちゃったって」
「うん、だけど、それだけじゃ、ワチコがあそこへまいにち行く理由にならないと思うんだ」
「……べつに理由なんかないよ。知ってるヤツの名前があったらイヤじゃんか。それにきっと、アレが本当に人に罰を与えるものだって知ってるのは、あたしだけだからな。だから、もしかしたら名前を書かれたヤツを助けられるかもしれないじゃん」
そんなにクラスに親しい者のいないワチコの言葉とは思えなかった。少なくとも正次の件が、クラスメイトのためにワチコがそこまでの使命感を持たなければならない理由にはならないはずだ。
それに、ワチコの言葉に少しの違和感も覚えていた。
「罰が与えられるのがホントだったとしてさ、それを知ってるのはワチコだけじゃないと思うよ」
「そうだな、デブと直人とナオちゃんも知ってる。信じてないみたいだけど」
「そ、それもあるけどさ、もう一人、そのことを知ってるヤツがいるでしょ」
「誰だよ?」
「犯人」
「ああ、そっか。そうだな。でもさ、犯人って誰だよ?」
「それは、分からないけど。四月頃のハナシだもんね。もうその犯人は分からないんじゃないかな」
「マサツグにフラれた女子か、マサツグのことを好きな女子が好きな男子だろ」
「分かんないよね」
「マサツグのことが好きなのかどうかは分からないけど、あのときいちばんマサツグと仲が良かったのは、紀子だろ」
「うん」
「ってことはさ、紀子のことが好きで、紀子がマサツグのことを好きだと思ったヤツが書いたのかな?」
「もしかしたら、紀子がセト君にフラれて、怒って書いちゃったのかもしれないよ」
「それはないよ」
「なんで?」
「紀子はそんなコじゃないから」
「うん。そうだね」
「紀子のことを好きなんだろうな、っていうヤツなんていっぱいいるだろ。だからそんな簡単に見つからないよ、犯人は。それに、直人の名前を書いたヤツと、マサツグの名前を書いたヤツは、ちがうヤツかもしれないじゃん」
「うーん、そうだね。でもさ、直人は、もうその犯人が誰なのか分かったみたいだよ」
「こういうときだけアタマいいからな、直人は」
「うん。でも教えてくれないんだ」
「なんで?」
「なんか、直人は『失恋大樹』の噂はウソだから、自分が気にしなきゃいいだけのハナシで、その犯人の名前をみんなが知っちゃったら、ソイツは恥ずかしい思いをしちゃうから、可愛そうだって言うんだよ」
「ふうん。ホントはめんどくさいんじゃないの? あたしとかデブにソイツの名前を言ったら、×印を書かせるために、絶対なにかすると思ってるんだよ」
「そうかもしれないね」
「そうだよ、直人だぜ」
「アハハ、直人だもんね」
慎吾の不意の笑い声につられたワチコも顔をゆがめて笑い、なんの理由もなく肩パンをしてきた。
いつもよりも優しく突く拳に、男のそれとはちがう柔らかさを感じる。
◆◆◆
それから一時間後、ワチコの監視下に置かれる直人がついに音を上げた。
「もう許してくれよ、おれは外に行きたいんだよ!」
ワチコに怒鳴り散らした直人は、そのことに自分でも驚いたような顔を作り、その表情のまま慎吾に視線を走らせた。
「そ、そんな大声出さないでよ」
「お前も悪いんだからな。ワチコの味方ばっかりしやがってよー」
八つ当たりもはなはだしいが、たしかに中立性に欠けていたかもしれない。
「十五日間だけガマンしてればいいだけのハナシじゃねえかよ、バカ!」
「十五日の十五日目って二十九日だぜ。夏休みすぐ終わっちゃうじゃねえか」
直人が呆れ顔で反論した。
そう言われてみればあまりにも不憫だ。こんなとき奈緒子がいればなんと言うだろうかと思い、やっぱり四人いなきゃダメだとあらためて感じた。
「なあ、チャー、どっか行こうぜ」
「どこに?」
「どこでもいいよ。もうここにずっといるのガマンできねえし」
「ダメだってば!」
病室を出て行こうとする直人を、ワチコが引き留めた。しかし直人自身、どこにも行く当てなどないのだ。
都市伝説のある場所なんてもう思い当たらないし、それにワチコにはやっぱり逆らえる気がしない。奈緒子さえいれば、この二人の暴走をあっさり止められるのだろう。
奈緒子は二人の手綱だ。そんなことをつくづく痛感する。
ああ、早く帰ってきてほしい。
「うっるせえな、離せよ!」
肩を掴むワチコの腕を振り払った直人が、外へと飛び出した。
階段を駆け下りる音が、湿気に包み込まれた207号室にまで、イヤにリズム良く響く。
「行くよ、デブ!」
「う、うん」
ワチコが追い、慎吾もあわててそのあとを追った。
息を切らせながら病院の玄関口を出ると、直人とワチコがまたもやそこで言い争いをしていた。息を切らした慎吾の胡乱な頭蓋の中に、二人の金切り声みたいな不快な問答が駆け巡る。もう意味さえ分からぬその言葉の渦に飲み込まれてゆく自分が急に腹立たしくなり、それと同時に目の前の二人へも、おなじ怒りが湧き出す。
「もういい加減にしてよ!」
肩を震わせながら怒鳴ると、二人が慎吾の急変に驚いて動きを止めた。
「もう、仲良くしてよ! ワチコはさ、なんでそんなにこだわってるのか知らないけど、直人がどっかに行くんだったら、一緒について行けばいいだけじゃん!」
「でも」
「でも、じゃないよ。そうすればいいだけなんだってば!」
「そうそう」
「そうそう、じゃないよ。直人もちゃんとそう言えばいいだけじゃん。なんで逃げるんだよ!」
怒鳴られた二人が目を丸くして慎吾を見ていた。
それすらも腹が立つ。
こんなことは初めてだ。
人に嫌われたくなくてみんなに甘くすることしかできない自分の性格を、自分自身で全否定しているような、胃がキリキリとする違和感が痒かった。
「あ、ごめん」
慎吾は、急に怒鳴り声を上げてしまったことが恥ずかしくなって謝った。
すぐにまた臆病者に戻ってしまう自分が情けない。
「いや、うん、おれも、ごめん」
「あたしも……ごめん」
直人もワチコもそれにつられて同時に謝った。
そして変な空気。
「だ、だからさ、そういうことだからさ、どっか行かない?」
「どこに? 言っとくけど、おれはどこも知らないよ」
「あ、あそこは? ほら、廃材置き場のところ」
慎吾は廃材置き場にまつわる都市伝説を二人に語り始めた――
『ハンマーおじさん』
学校の近くの廃材置き場。
危険な場所なので、そこに立ち寄る者はほとんどいなかった。
そこから、夜な夜なハンマーで何かを叩くような金属音がリズム良く響いているという。
そして、最近は昼間にもその中をうろつく人影が度々目撃されており、その右手にはハンマーらしきものを持っているらしい。
――そんな場所にいる人なんて変質者にちがいないと思う。
この話は単なる目撃談だ。『のいず川のドクロネズミ』のときと一緒だ。だがこの町の都市伝説の場所にほとんど行ってしまった今となっては、そこくらいしか残ってないのも事実。
「でもそこってさ、行っちゃいけないところじゃん」
いつもならどこにでも興味を持つ直人が、珍しく渋った。たしかに町山先生やその他の大人たちに、行ってはいけない危険な場所であるとは言われている。だが危険だと言っても、気をつければ大丈夫な場所だということを慎吾は知っていた。むかし正次と一緒に秘密基地の材料を調達しに行った場所だったから。
それにあの時は誰もいなかった。
「だ、大丈夫だよ。ぼく、何回か行ったことあるけどなんにも起こらなかったよ」
「でも危ないんじゃないの? おれいやだよケガとかするの」
「ビビってるの?」
直人が妙に慎重なのがおかしくなり、慎吾はいつもの仕返しとばかりに小バカにするような顔を作った。
「怖くはないけどさ」
「やめようぜ、そこ」
ワチコも、眉間にシワを寄せて廃材置き場へ行くのをためらっていた。きっと直人がそこでなにかの罰を受けてしまうのではないかと思っているのだろう。
そんな二人を見ていると、いつもと立場が逆転したようで、胸の空くような気分になった。
「大丈夫だよ。ぼく行ったことあるけどなんにも怖いことなんかなかったよ」
「なにも無いのはそれで面白くないけど」
直人が、さっそく言葉尻をとらえてつっこんできた。
「でもさ、直人が言ってたんじゃん、そういうのは暇つぶしだって」
「まあ、うん、そうだけど……」
「行こうよ」
いつになく消極的な直人とワチコを見ていると、ますます楽しくなってきた。
「……そうだな、じゃあ、そこ行こうぜ」
「やめた方がいいって。絶対なにか起こるから」
慎吾の提案にようやく乗った直人を、ワチコが止める。
「だからお前がついてくるんだろ。そういう時のために見張ってるんじゃないのかよ」
「そう、だけどさ」
「いいや、チャー、行こうぜ」
「うん」
直人に腕を引っ張られた慎吾は、それでも渋るワチコを見やった。
目が合ってすぐにワチコは視線をそらし、仏頂面で二人の横に並んできた。




