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子供の頃の記憶にある緑の館。

そして夢で何度も訪れたこの場所。

だけど実際にこの目で見るとそれは思いの外荒れ果てて、寂れた様相を呈していた。

ひび割れた窓ガラスにほとんど枯れかけた蔦の葉。

現実に今の状態を見れば、あれは確かに夢だったのだと納得できた。




樫の扉を押せば、ギーッと軋んだ音。


今まで闇でしかなかった玄関ホールに外からの光が差し込み、改めてこの屋敷の内部を見る。

現実には初めて来たはずのこの家……だけどその様子は夢で見た通りだった。

とはいうものの、積もった埃とあちこちの蜘蛛の巣は到底数日でできるものではなく、この家が数年……いや、数十年は放置された空家であることを示していた。


「うわ、凄い埃……マリア、気を付けて」


「うん……マスクを持ってくるべきだったわね」


ギシギシと軋む廊下を歩き、階段の踊り場に辿り着く。

何故かその場所に引き寄せられるように。

ここも知っている。

毎夜、ここを通って2階の部屋へと階段を登ったから。




この数日は感じなかった脂汗を背中に感じながら、恐る恐る見上げてみる。

夢の中では何度見ても暗闇に紛れて、見る事が叶わなかった踊り場の絵画。

目を見開いて悲鳴を飲み込んで。



白いソファーに腰かけて横顔を見せた美しい青年。

黒い髪、白い肌。

甘く妖しい琥珀の瞳。



そう、あの日……最後の瞬間に。

私は瞳に絵筆を乗せた。

8500万年前の太古の自然を封じ込めた、甘い蜜のような石の色。





その瞳が私を見て光ったような気がした………。





Fin...





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