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これは夢の中なのか。

それとも現実なのか。

私の周りは霞がかかったように全てが朧げで、ジョゼの別れの言葉さえもどこか別の世界から聞こえてるようだった。

彼は目の前にいるのに。



だけどこの状況を不思議だと思う反面、頭のどこかでは全てを理解していた。

そう……きっと最初から私は知っていたのだろう。


ジョゼが何者なのか?

何を望んでいるのか?


瞳に乗せようとしていた絵筆は宙に浮いたまま。





琥珀の瞳……そこに色を乗せればジョゼの絵は出来上がる。


何となく分かっていた。

私がここにいるのはこれを描くため、ジョゼの姿をキャンパスに残すために彼に選ばれて呼ばれたのだと。


ずっと不安だった。

怖かった。

この絵を描き上げてしまったら自分がどうなってしまうのだろうかと。

夢の世界に囚われたまま戻ってこれなくなったらどうしようかと思ったし、そのくせジョゼと離れ離れになるのもまた怖かった。



だけど今、心は穏やかだ。

私が恋をしたのはナルキッソス。

本を読む彼が本当は何を考えているのかなんて分からないけれど、ジョゼと別れても彼は永遠に絵の中にいるし、ナルキッソスはいつも私の側にある。

きっと私は毎夜ナルキッソスに語りかけ、そしてキャンパスの中のジョゼに微笑むだろう。


これを描き終えれば、私の夢も終わる。





そう……君のおかげで僕はこの姿を与えられたんだ

だからもう思い残すことはないよ



君に逢えて良かった―――ありがとう





動かないジョゼ。

動けない私。


だけど何かが変わり始めている。

私達を包んでいる霞が徐々に薄れ始めている―――。





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