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「あのオルゴールかい?知ってるよ」
いろいろ調べていくうちに私が辿り着いたのは、町の古い時計屋さん。
その店の主人は私の話を聞くなり懐かしそうに瞠目して頷いた……。
最初は博物館へ行った。
それから町の役所へ。
仕事柄、骨董品を扱う協会にも入っていたのでそちらの情報にも頼ってみた。
有名な物ならネットに載っているかと思って調べもした。
だけどどれも空振り。
疲れ果てて、たまたま行き着いた古いカフェで思わず愚痴を溢したのだ。
『もう何なのよ、あのオルゴール!』
エスプレッソに砂糖を大量に入れてガチャガチャとスプーンを掻き回せば、柔和な顔をした壮年の店主が声をかけてきた。
『オルゴールがどうかしたかい?』
古いオルゴールの出自を調べているのだと言えば、それなら時計屋のリカルドに聞けばいいよ、と地図まで書いてくれたのだ。
カフェからは2ブロックほど先の角の店。
この店は普通の時計ももちろん売っているが、どちらかと言えば時計の修理がメインのようで年代物の古い時計があちらこちらに飾られていた。
大きな柱時計や凝った造りのからくり時計。
ガラスケースの中にも、今では滅多にお目にかかれないようなアンティーク時計などがあった。
店の主人は70はとうに過ぎたと思しき銀髪の男性で、カフェの店主から聞かされていた通りリカルドと名乗った。
「わしが直接会った訳じゃないがね、うちの爺さんが例のオルゴール職人と親しかったらしくてガキの頃に何度も聞かされたもんさ……そのオルゴールももちろん知ってるよ」
少しくたびれたグレーの帽子に丸眼鏡の人の良さそうなお爺さんは、懐かしむように目を細めて話し始めた―――。
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