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その時にこんな事も話していた。
『このオルゴールはね、自分で持ち主を選ぶんだよ』
自分を大切にしてくれる人の所に行くのだと。
そんな母の言葉には不安など欠片もなかったからその時は深く詮索もしなかった。
だけど今のフィオナがあのオルゴールを持っていると考えるだけで、何故こんなにも胸がざわつくのだろう?
母はフィオナの事が好きだったし、不吉なものなら手渡すはずがない。
それなのに言い知れない不安と恐怖心に苛まれる。
あのオルゴールは生きている……そんな子供の直観がもし事実だったとしたら?
もし母が何も知らなかったら?
母もフィオナも私も、みんなが何も知らないままオルゴールに操られているとしたら?
ガラスケースに入りたがらなかったのは、次の持ち主に見つけてもらう為。
母の手元にあったあのオルゴールが自分からフィオナを選んで彼女の元に行ったのだとしたら?
彼女の夢とオルゴールがもしも繋がっていて、それが今の彼女の様相に影響をきたしているのだとしたらこのまま放ってはおけない。
杞憂で済めばそれに越したことはないけれど、最悪の事態だって考え得る。
今の生気の無さを思えばその可能性は決して低くない。
とにかく調べよう。
あのオルゴールについて。
それほど古い物ではなかったから、もしかしたら実際にあれが作られた頃の事を知ってる人もいるかもしれない。
幸いこんな商売をしていれば骨董品の出自は探りやすい。
早い方がいいだろう。
取り返しのつかない事になる前に。
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