【maria side】~1
フィオナは嘘を吐いている。
それは直感だった。
彼女はきっと今も夢を見続けているし、その夢は私に話せないくらい先へと進んでいる。
そう思う理由はただ一つ……彼女の変わり様だ。
美しく艶のある金色の髪、湖のように透き通ったブルーの瞳、抜けるように白い肌……それがかつてのフィオナだった。
それなのに今はなに?
艶を無くしてパサついた髪と何を考えているのか分からない昏い瞳、そして頬のこけた青白い顔。
誰が見ても寝不足が続いてると分かるような姿なのに、まるで本人だけが気付いてないかのように飄々と過ごしている。
それともう一つ気になったのは例のオルゴール。
私がその話を持ち出した途端に彼女はあからさまに目を逸らしたのだ。
母はあれを誰に譲ったのか言わなかったけど、きっとフィオナの手元にあると今の私は確信している。
まるで作った人の念が籠っているかのような人形。
姿かたちを与えられたと同時に命までもが吹き込まれてしまったんじゃないかと、子供心にゾッとした。
大人になるに従ってまさか本当に生きてるとまでは思わなくなったけど、それでも何か不思議な力が働いているような気持ち悪さは付きまとっていた。
それなりに高価なものであったはずなのに、店の片隅に無造作に置かれたオルゴール。
一度母に尋ねた事がある。
どうしてガラスケースに入れないの?と。
そしたら彼女はこう言った。
『あの子がケースに入りたがらないんだよ、あの場所がいいんだってさ』
『人形がそんなこと言う訳ないじゃない』
そう反論した私に母はただポツリと『あの子は特別なのさ』と笑ったのだ。




