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坂道の途中に私の生まれ育った家がある。

タイルの壁と窓を彩るのはアズレージョ。

古くても狭くても居心地の良さは格別だ。



「ただいま」


「フィオナ、おかえり」



まるで玄関で待ち構えていたのじゃないかと思うくらいの勢いで、いきなりママに抱き締められた。

いくつになっても子供は子供なんだろう。

ギュっと確かめるように力を籠めてから、少し身体を話して顔を覗き込んでくる。

そんなママの表情が心配そうに微かに曇った。



「あなたちょっと痩せたんじゃない?」


「そう?でも体調はいいのよ」


「それならいいけど……ちゃんと食べてる?眠れてる?」



確かに少しは痩せたかもしれないけど、それほど見た目は変わっていないと思う。

普通なら誰も私の変化には気付かないだろう。

だけど母親の目は誤魔化せない。

他人なら見逃してくれる事でも、此処じゃ通用しないのだ。

だからあれこれ詮索されるのは避けたかった。



「大丈夫よ、心配しないで。それよりお腹が空いたわ」



さっさと話を変えるようにそう言って、私は彼女を促すようにリビングへと向かった。

背中に痛いくらいの視線を感じながら。





夕飯に並んだのはいつも必ず食卓に上っていた生ハムとオリーブ、トレモッソ。

そしてオリーブオイルとビネガーをかけただけの山盛りのサラダ。

それにママ特製の鶏のスープや定番の魚料理。

この地方ではタラを使ったバカリャウが母親の味と言ってもいい。

私も子供の頃から食べてたタラのオーブン焼きや干しタラのコロッケが大好きだった。

その他にも魚介を使ったリゾットにデザートまで。

親子3人で食べるには多すぎるくらいの料理がテーブルいっぱいに並んだ。



「さぁ好きなだけお食べ」



こんなに食べられないわよと苦笑を浮かべながらも、嬉しそうな両親の顔に肩の力が抜ける。


料理はどれも本当に美味しかった。

久しぶりに会話も弾めば、それがまた極上のスパイスになった。

今私が住んでる町の話や仕事の話、そして私の知らない所で繰り広げられている親戚の話やご近所の話。

父さんはワインも進んで上機嫌のまま、いつの間にかソファーに移動して夢うつつ。

そんな父さんに「ここで寝ないで」と文句を言いながらも楽しそうなママの声。


やっぱり実家はいい。

今日は夢も見ないくらいぐっすり眠れそうだ。

そんな事を思いながら幸せな気分のまま、私は懐かしい部屋で眠りについた。




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