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「母さんに言ったら気味悪がると思ったから言わなかったんだけど、私ね子供の頃その人形が生きてるってずっと思ってたの」


「……そんな……バカ言わないでよ」


「もちろん生きてる訳ないんだけど、あまりにも精巧にできてたから子供の目にはそんな風に見えたのよ」


「…………」



背中を流れる嫌な汗は止まらない。


考えないようにしていた。

妙な考えが脳裏を掠める度に、馬鹿馬鹿しいと一蹴した。

だけど心のどこかで私もずっと感じていた事だった。



ナルキッソスは生きてるんじゃないかと……。



「いつの間にか売れて無くなっちゃったけど、フィオナにも見せてあげたかったわ」



そう話すマリアはまるで私を試すかのように上目使いでこちらを窺った。

そんな彼女に私は乾いた笑みを頬に張り付けて、「そうね、見たかったわ」と返事した。


こんなのは戯言でしかない。

人形が生きてるんじゃないかなんて考えるだけでもどうかしてると思う。

そう……マリアの話は子供の頃の事だ。

いくら何でもれっきとした大人である彼女が、今もまだ作り物の人形を生きてると思ってるはずもない。


不思議な夢とナルキッソスを繋げて、私が少し敏感になってしまっただけのこと。

ましてや彼女は例のオルゴールの在り処も知らないんだから。



「今日は私ちょっと調べものがあるからもうここへは戻って来ないわ、戸締りよろしくね……あ、そうそう、あなた最近顔色が良くないわよ。夜更かしせずに早めにベッドに入りなさいね」


「……ええ」



一方的に話して私を不安にさせて、そしてマリアはさっさと帰り支度を始めてしまった。

そんな彼女に少し腹を立てながら、私はただ見るともなしに鳥かごのオルゴールに視線を投げた。


夢に囚われて逃げ出せなくなってしまったのは私だろうか?





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