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胸がざわついた。

だけどね、マリア。

私は全て分かっているの。

自分が夢と現実の狭間に絡み取られている事も、ジョゼが危険な相手だという事も。

とっくに夢からは覚めている。

それでも……。



「……マリアったら、ただのオルゴールなのに。そっちの方が夢物語みたいよ」



動揺を悟られたくなくて笑い飛ばそうとした。

正直に言えばオルゴールの話を避けたかった。

自分の中でもジョゼとナルキッソスを繋げて考えるのは少し怖かったから。

だけど彼女の言葉は更に思いがけない方向へと向かったのだ。



「ふふ、そうね……あ、そういえば昔ここに不思議なオルゴールがあったのよ」


「不思議なオルゴール?」


「ええ、人形が本を読んでるの」


「……っ」


「とてもリアルで綺麗で……そして怖かったわ」



心臓が鷲掴みにされたように苦しくなり、背中にジワリと汗が滲んだ。


ジョゼの事はマリアにも打ち明けていたけれど、何故かナルキッソスの事は言えなかった。

理由なんて判らないけど、ナルキッソスに止められている気がした。


マリアはあのオルゴールが私の手に渡った事を知らないはず。

ルタが元気だった頃はマリアの子供はまだ小さくて、子育てに追われていたマリアはここへ来る事はほとんどなかったのだから。


でもオルゴールが無くなってる事に気付けばルタに聞くだろうか?

ううん、知ってるはずはない。

だって知っているのなら普通に持っているのかと聞いてくるだろうし、こんな風に意味ありげに話を持ち出す理由が分からない。



「古い物でね、綺麗な男の子の人形が本を読んでるんだけど、なんだかちょっと気味が悪くてね」



鳥かごのオルゴールを元の場所に置き直してから、マリアは私の正面に椅子を持って来て座った。

冷めた紅茶に軽く口を付けてから、ほんの少し声を潜めるように身を乗り出して。

その姿はまるで内緒話をする少女のようだった。

だけど、鋭く光る瞳は私から逸らされることはなかった。




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