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自分でも説明のできないこんな現象をマリアが納得するように話す自信なんてなくて、結局当たり障りのない夢の話だけで終えた。



マリアが心底心配してくれてるのは分かっている。

だけど困惑と恐れだけではなく、私自身もう少しだけ先を覗いてみたいという欲求を抑え切れなかったから。

だから彼女が『単なる夢だ』と決め付ける事に反論もせず、申し訳ないとは思いながらも適当に話を合わせる事に終始した。



「だけどねフィオナ、今回みたいに連絡が取れないのは嫌なの。だからあなたの部屋を教えて」



マリアは夢の話より現実を見据えてそう言った。


元々ルタに雇われた時には私はまだ実家に住んでいたから、マリアが知っているのも実家の住所なのだ。

今回のように電話が繋がらないと、マリアとの連絡手段は絶たれたも同然。

ここからアパルトマンまでは自転車で20分ほどなのに、マリアは1日中ここで心配してくれていたのだろう。

実の姉のように時には口うるさく私を心配してくれるマリア。

だけどジョゼに惹かれている私。

少し後ろめたい気持ちも確かにあって、結局私は彼女に自分の住所を書いたメモと合い鍵を預けたのだった。






その日は特にお得意様が来る予定もなく、私は家に帰って休むように言われた。

マリアも地域の集まりがあるから店は閉めるらしい。

夜までいつも通りに店番するつもりだったけど、雇い主にそう言われれば無理強いするほどここにいなきゃいけない理由もなく……。

結局言われるまま店を出て、私は家に帰る事にした。



歩きながら思うのはあの夜のこと。

そして自分が描いたとしか思えないデッサン。

やっぱり夢だとは思えない。

あの場所で何かがあって、そのまま私は記憶がないまま自分の家まで戻りあの絵を描き、そして丸1日以上眠り続けたのだろう。



緑の館。

周りからは隔絶されたかのような異質な空間。

空気の色も風の音も匂いも、全てが霞がかかったように曖昧で。

まるで不確かなギミックだ。



だけどそこに住んでいたのはジョゼ……ナルキッソスのように美しい彼。

まるで人間じゃないみたいに冷たい手。

そして琥珀の瞳。


あそこに行けばもう一度逢えるかしら?





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