選別 - 1
固有名詞を考えるのって大変ですねっ!
エイルの住む国ミストラスは小国である。
大陸の中に存在する7つの大国が争う中で現在まで独立国家として存在出来ている理由は二つ。
一つ目はその気候の厳しさにある。元々岩山だったところを開拓して出来た国であり、作物は殆ど育たない。そして夏は酷暑、冬は厳冬に見舞われる為、誰も好んで住もうとは思わない。始めてここに住みだしたのは自分の国を追われた人々であったと言われている。
二つ目は徹底した軍国主義にある。いくら住むのに不向きであっても、労働力として奴隷、見せかけとしての領土を欲しがる国は多い。その為、それらを得られるメリットよりもそれに必要となるデメリットの方が大きいと思わせられる力が必要だった。
この二つの要素が重なることで一つの残酷なシステムが誕生した。児童選別である。
赤子が生まれ、名前が付けられると直ぐに両親から引き離され、8歳になるまで施設で個別教育を受けさせられる。そこでの教育内容は学問、武術、魔術と一般的なものだが、選別を兼ねているので生易しいものではなく、約半数が命を落とす。
無事に8歳を迎えた場合、最後の関門となるのがエイルが今受けている審査である。
このシステムが誕生した当時、反対する者は少なかったと言われている。建国時から増え続けていた人口が、歴史的な大不作により激減したショックは大きかった。他に逃げ場の無かった彼らが苦肉の策として産み出したものであったが、その判断が正しかったと歴史が証明している...とされている。表立って侵略してくるところがなくなったというのがその主張の根拠だ。
現在のこの国の合理的性に不満を述べる大人はいない。彼らはこの国で生きていく事の厳しさを知っており、そうでなくては国が崩壊してしまうことが身に沁みて分かっている。