遺書
これは或る一人の青年が自ら命を断つまでの記録である。何故この青年が自らの命を断たなければならなかったのかという疑問はこの遺書によってすぐに消え去るであろう。
遺書
これを誰かが読んでいるということは、もう俺がこの世にいないってことになるな。初めて遺書を書くから何書いていいかわかんねぇや。とりあえず最初に親父、お袋、ごめん。こんな歳になるまで精一杯愛情込めて育ててくれたのに、何も親孝行出来ずに本当にごめん。でも、俺もう限界なんだ。このまま生きてても、俺にとっては正直生き地獄なんだよ。会社が倒産して、俺に残ったのはでっかい借金だけ。こんな借金死ぬまで働いても到底返せるもんじゃない。おまけにヨメさんは愛想つかされて出てちまったよ。今までこんなこと古臭い昼ドラの空想物語かと思ってたけど、案外現実に起こるもんなんだな。まるで他人事のようだわ。幸い、俺が死ねば生命保険でいくらかマシになると思う。本当にごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
この遺書は、遺体が発見された部屋のテーブルに置かれていたという。遺書が書かれている紙に所々水滴が落ちたような跡が残されていた。
はじめまして。とりてんと申します。
今回は短編小説です。
次回作もお楽しみに!