予兆(2)
時は10日前に戻る。俺( 新道 悟 しんどう さとる)はいつものように東京にある高校に行くために電車に乗っていた。外は電車のスピードで1秒ごとに風景が変わっている。
外の風景を眺めていた俺は気まぐれにポケットに手を入れた。ポケットの中には携帯と1枚の手紙が入っている。
「ん?なんだこれ?」
俺はポケットに入れた覚えのない手紙を取り出した。手紙はきれいに封がされており、いかにも開けていないことが見た目でわかる。俺は少し考えて手紙を開けた。手紙の中には1枚の紙とチケットが入っていた。手紙の内容はこうである。
『 新道 悟 様
あなたは東京代表としてあるゲームに参加してもらいます。ゲームの内容は集合場所で告げます。10月1日、午後5:00までに羽田空港に来てください。もし・・・来なかった場合は・・・・』
最後の文字は擦れてぜんぜん読めなかった。もちろん、チケットは羽田空港行きのチケット。
「結構、力入れているんだな・・・・このゲーム」
俺はチケットを確認した。東京代表というのだ、あと46枚のチケットを用意したに違いない。それに羽田空港である。旅行に行くときぐらいしか行けるところじゃない。そう思った俺は今日学校を休み、空港に向かった。
もし、ポケットの中に紙が入っていることに気付かなかったらどうなっていたのか・・・・最後のかすれている文字が気になった。いったい、あそこには何が書いてあったのか・・・。
そうこうしているうちに羽田空港に着いた。羽田空港にゲームの主催者がいると紙には書いてあったのだが、空港は多くの人で引き締めあっていて、どこにいるかわからない。
「あの・・・あなたも参加者ですか?」
あたりを見渡している俺に対して一人の女性が話しかけてきた。
「はい、そうですが・・・なんでわかりました?」
「そんなの簡単ですよ。手紙を持ってうろちょろとあたりを探している人なんて参加者ぐらいしかいません」
たしかにそうだ。空港であたりを見ていたら知っている人から見ると参加者ぐらいにしか見えない。現に目の前にいる女性が持っている手紙と同じ種類の手紙だったらなおさらだ。そういうことならこの女性も参加者になる。
「すみません。名前を教えてくれませんか?」
「ああ、私ですか。私の名前は神崎 真央 (かんざき まお)といいます。埼玉代表です」
「俺の名前は新道 悟です。東京代表です」
「東京代表なんですか!?近いですね」
真央は笑顔を見せながら言った。それにしても本当に全国から人を集めているなんて・・・どんなゲームなんだ?
「神崎さん」
「真央でいいですよ」
「じゃあ、真央さん。主催者がどこにいるかわかりますか?」
「それは・・・あの人じゃないんですか?」
真央が主催者の場所を指差す。そこには空港では不釣合いな格好をした男性が1人立っていた。顔には仮面。服はマントを羽織っている。気が付かなかった俺がおかしかった。
「たぶん、あの人だと思いますが・・・1人ではかけづらくて、話をかけたんです」
真央の証言に俺も同意だった。あんな人に1人で話しかけたらおかしく思われる。だったら2人で話をかけたい。
「話・・・かけますか?」
俺はゆっくりとその男に向けて歩いた。真央も後ろから付いてきている。男に近づくにつれて仮面の絵柄がよく見えるようになってきた。仮面は不気味に微笑み近寄りがたい。
しかし、話かけなければ意味がないので俺はおそるおそるだが話をかけた。
「あの・・・主催者ですよね?参加者なんですけど・・・」
俺がそういうと男は無言のまま歩き始めた。