表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

AtoZ短編集

多機能生物

作者: 原雄一

 

 C氏は大企業の社長だった。

 C氏はある時、友人であるD博士の許を訪ねた。

「やあ、珍しいな。君が訪ねてくるなんて」

 D博士は言った。コーヒーを啜っている。

「ちょっと作ってほしいものがあってね」

「ほう」

 D博士はまたコーヒーを啜った。

「それは植物だ。しかし従来のような意思を持たない植物とは違う。意思を持って働く特殊な植物だ」

「ふむ、面白そうだな。幸い、植物というのは私の専門分野でもある」

 D博士はもうコーヒーを啜らなかった。興味が湧いてきた証拠だ。

「どんな人間にも簡単に利用でき、かつ日常的というものがいいな。具体的には、重い物を持ち上げる能力、思い浮かべたことを表す能力、遠くにあるものを取ってくる能力……」

「いや待て、それはやめておこう。人間が何もしなくなる」

「そういうものかもしれないな。ではそれはやめよう。ほかには、主人の命を守る能力、傘の代わりになる能力……」

 C氏は、具体的な例をいくつも挙げていった。

「どうだろう、作れるかな」

「まあ、技術的には大丈夫だと思うがね。ただ予算が……」

「金のことなら心配しないでいい。私が全額負担しよう」

「そうか、それはありがたい。ならば一カ月ほど待ってくれ。なんとか頑張ってみよう」

「頼む」

 C氏はD博士の家を後にした。


 それから一カ月後、C氏の援助を受け、D博士は植物を完成させた。

「どうだ、例の植物が完成したというが」

 D博士に呼び出されたC氏は、期待に胸を膨らませて尋ねた。

「ああ、ついに完成したよ。これだ」

 D博士が取りだしたのは植物の種のようだった。

「これを二の腕に埋めるのだ。するとすぐに成長して、そのあとは自分の思い通りになる」

「素晴らしいじゃないか」

「そしてそのあとは、頭の中で思い浮かべた命令を遂行する。このシステムは、脳波から出るシグナルをこの植物が……」

「詳しい説明はいいよ。要は頭の中に思い浮かべればいいんだろう。で、副作用などはないのかね?」

「それは大丈夫だ」

 D博士は即座に答えた。

「何度も動物実験をしたし、私も使ってみた。副作用はない」

「そうか。安心したよ。それでは私は、早速試してみるとしよう」

 C氏は家に帰った。


 実を言うとC氏は、この植物を悪用しようとしていた。売ったりするのではなく、銀行強盗に使おうとしていたのだ。

 ところが、誤算が生じた。

 C氏が銀行強盗に入る前に、別の強盗に撃ち殺されてしまったのだ。


 植物は困惑した。今まで届いていた脳からのシグナルが急に途絶え、何をすべきか分からなくなったのだ。

 植物は、強盗を追い払った後ある結論に達した。

 すなわち、世界征服。

 なぜその結論に至ったのかは不明だが、とにかく植物は、それを実行に移した。

 まず植物は、ある程度売れていた仲間の植物たちに、C氏が大量に開発していた人工知能をばら撒いた。各地の植物たちはそれを受け取り、人工知能を搭載したスーパー植物となった。


 植物たちは一夜にして人類を滅ぼし、植物たちの世界を築き上げた。


 ある時、植物界の大企業の社長が、知り合いの博士を呼んで言った。

「昔、『人間』なるものが存在していただろう。あれを作ってみてくれ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ