鶇凪 vert somber の件
「たて。りょうて。あげろ」
え、えーと……
なんで俺、朝っぱらから背中に銃突きつけられてんの?
* * *
「……しくった」
朝。俺は一人下駄箱の前に立ちつぶやいた。
「今日、部活ねぇじゃん……」
そう。部活が無いのに朝早く学校に来てしまったのだ。
…………最悪だ。
もっと寝てたかったのに。
まぁ、何だ。早起きは三文の得っていうし、ソレを信じよう。
それに、いつも朝ギリギリだから朝早くて誰もいない教室と言うのもいいものかもしれない。
あぁ、そうだ、そろそろゴールデンウィークだから、部活の予定も立てておかないとな。
なんて思いながら階段を登っていく。
いつも思うのだが、この学院の階段の多さはどうにかならないものか。
「……ふぅ」
教室のある三階まで登りきり、教室に向かう。
「おはようー」
誰もいない事を前提にがらっとドアを開ける。
と、
「……」
いた。
いましたよ生徒。
「あ、……ええと、おはよう」
「……」
無視。
「えーと、いい天気だね」
「……」
無視。
「朝、早いんだね」
「……」
……無視。
ダメだ、俺の心が折れて来た。
もういいや、と俺は相手とのコミュニケーションを諦めた。
教室にいたのは、俺の一つ後ろの席に座る鶇凪vert sombre。どうやら、フランス人と日本人のハーフらしい。
染めたのか、ショートカットの綺麗な碧色の髪に、琥珀色の瞳、そしてそれらを引き立てる真っ白い肌。
はっきりいって、美人。
なのに、何故かいつも銃をメガネ●ーパーのメガネクリーナーで磨いている。
一回、「それ、本物?」って聞いたら「……」って言われた。
いや、無視されただけなんだけどさっ!!
「……はぁ」
溜め息をつき、自分の席に座ろうとしたそのとき、
「……っ!!」
「え?」
鶇凪さんが息をのむ音が聞こえたかと思った次の瞬間、
ジャキッ
……。
銃が構えられた様な音がして。
しかも俺の背中には固いものが当たってるような感触があって。
「えーと……」
「……すわるな」
初コンタクト!
「たて。りょうて。あげろ」
これにて冒頭に戻りまする。
で、なんのこっちゃコレは。
「えーと、何で?」
「……」
無視ィ!?
「……む」
「え?」
「ふむ」
「踏む?」
不思議に思いつつ椅子を見ると、そこには……
「……フィギュア?」
「!!」
自身と同じくらいの大きなライフルを持った、
鶇凪さんにそっくりな
フィギュアだった。
「えーと……
つまり、さっきの座るなってのは、コレが俺に潰されそうだったから?」
「……うん。
さっき。いす。うえ。おとした」
「あぁ、なるほど。
あ、話かわるけど、コレって 〜銃の少女〜 ってゲームの登場人物だよな?」
「!
おまえ。わかる?」
「おう、俺の母さんがやってるからな」
「……」
少し黙り込み、鶇凪さんは俺をジトっと見つめ、
「おまえ。わかるやつ」
「さ、さいですか」