中3でっせ!!
ひらり
ひらり。
季節は春。
ここ、鳥が丘学園では今日が新年度の始業式だ。
「……俺らも中3か〜」
「なにひたってんだよクロ。まだ中3だぜ?」
桜の木がセンスよく植えられた中学第二校舎の前で、俺こと燕 黒夜は友人の鴉里 桃士と並んで立っていた。
こう、何て言うか……校舎が変わった所為か、何となく成長した気分になるのは気せいだろうか……
……………………というか。
「多いな」
「? 何がだ?」
「いや、あの………………死者が」
「あぁ! ユーレイか!!」
「ちょ、桃士こえでけぇよ」
「あはは! わりぃわりぃ」
小学4年からのまさに腐れ縁の桃士は俺のこの体質を知っている。
………………つかバレた。
「俺の予想!
クロのクラスはD!!」
「……根拠は?」
「俺がDだから」
まったく、毎年思うがこれ狙ってんじゃね?
*
「おっはよー!!」
「ちょ、桃士声! 声でけえから!!」
勢い良くDクラスに入ると、ほとんどの生徒が席についていた。
まぁ、俺らギリギリだしな、と納得しつつ自分の席を探す。
「俺の席ここー!
って、クロが隣か〜」
「つばくらとからすざとだからなぁ」
つ と か は出席番号順で席に着くと丁度隣くらいになる。これも毎年恒例。
「……で」
前の奴はどんな奴かな〜…………
・ ・ ・ ・ ・ 。
「よーし。俺はなんにも見なかった!」
「は? いきなりどうしたんだよクロ」
HAHAHAHAHA!!
見えてない。見えてないさ! 俺には前の席の奴のピアスじゃらっじゃらの耳した女生徒なんて見えてないさ!! 耳からのびるイヤホンの線も見えてないさ!!! 一昔前っぽい木刀なんか、見えないね!!!!
さ〜て。もう片方のお隣さんはぁ
「…………。」
「? おい、さっきから挙動不審だぞ。まじめにどーしたクロ」
「見えてない見えてない見えてない見えてない見えてない見えてない…………!」
「ちょ、クロ……そうか、ついに狂ったか……。あぁ、哀れなクロ!」
「おい、俺は狂っちゃいねーからそのどっから出したかわかんねーロザリオしまえ」
「酷いな。俺ゃ立派なクリスチャンだぞ」
「知ってるわンな事」
あぁあぁ、いいのかねこんな髪の毛オレンジに染めてる信者なんて。……まぁ、こいつん家教会だかんなぁ。
って。ンな事よりどーなってんだとなりの奴!?
なんでうさ耳カチューシャ着用したナイスバディの外人さんが俺の隣座ってんの!?
「っ! そうだ後ろ! 後ろは!?」
「は?」
桃士がまじめな顔で「大丈夫か?」なんて言って来るけど無視! 後ろの席の奴が最後の頼みのつ…………な…………。
「……………」
神様ああああああぁぁぁぁぁぁあああっ!!!
何でッ!? なっ……そんなに俺の事嫌いっすかああ!?
つかなに!? なんで後ろの奴無言でライフルっぽいもの磨いてんの!? それもメガネスー●ーの眼鏡拭きでッ!! しかも頭にごっついゴーグルっぽいもんあるし! さらに鞄からは銃っぽい何かが出てるし!!
「……もうやだ………………」
「んぁあ?」
し ま っ た。
「なんか言ったか?」
前の奴に俺のツイートが聞こえたらしい。
切れ目な黒い瞳でがっちり睨まれている。
「いや……その……お、おはよう」
俺えええええぇぇ! なに和やかに挨拶してんの!?
俺がビビりながら挨拶すると、前の奴は虚をつかれた様な顔になり、
「おっ、おはよう……」
「?」
「いや、なんでもねぇ」
「いやいや、俺何も言ってねーけどな」
フイッ、と俺に再び背を向けた彼女に疑問符を浮かべつつ、俺はこの最悪な新年度スタートに気を滅入らせた。
ちょっと書いてみたかった。
(赤)読んだ人なら前の人が誰なのか分かる……かなぁ?