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ちっぽけなアリんこ

作者: お梨

がむしゃらに自転車こいでた。こいでこいでこぎまくった。

あやうくおばぁさんをひきそうになった。

走った。嫌になって走った。

風が自分に向ってきた。いつもなら風に負けてやるんだけど、

今日はなんかむかついたから闘いに挑んでやった。

自転車もやればできるんだなと思うほどに

ものすっごいスピードが出た。

息苦しい。空気が自ら自分の中に入ってくる。

逃げろ。逃げるしかない。

でも、どこに?


黙って出てきてしまった。

自転車こぎながらそれだけはひどく後悔した。

せめてお疲れとか、帰るとか言えばよかった。さすがに。

あまり出てきた時のことは覚えていない。

ただ演出にイラっときて、言いたいこと言ったら向こうも言いたいだけ言ってきて、

キャストなんかやめてやるって気持ちで

荷物持って

ジャージのまま

自転車乗って

今にいたるわけだ。


あーあぁ なんで俺、演劇部入ったんだろう


信号が青になったので進んだ。赤信号で自分が止まっていたことに気がつかなかった。

どこにいこう、どこに。

原っぱで寝転がりたいな、なんて思った。

カラスが鳴いた。もう夕方だった。


俺だって必死にやってるんだぜ?

あいつは人の気持ちを分ってくれない。

演劇好きだった、はずなんだけどなー・・・・

今は自信持って好きだと言えない。

上手くいかないんだよ、分んないんだよ、

どうすればいいんだよ。

腹減ったよ、全く・・・。


明日9時から部活だなーどうしようかなー

川眺めながら思った。川は夕日に照らされてひらひら光ってる。

もう夜が潜んでた。暗闇が向かってくる。

あれだけ言って、あっさり部活に行けない。

めんどくさいなー

さぼろっかなー・・・・


とか言いつつ、行くんだろうな。俺、真面目だから。


あぁあ

目的地の原っぱに着いた時には夜だった。そりゃそうだな。

自転車止めて、仕方がないから寝そべった。

暗いなー怖えなー

どこからともなくピアノの音がする。なんか懐かしい。


ちっぽけなことなんだろうな。目をつぶって思う。

あぁやっぱりちっぽけだ。目を開けて思う。

俺の全力の悩み事なんて、そんなものなんだろうな。


手首に違和感があったので見てみると、アリが上ってきてた。


頑張れってか?

言われなくても、頑張ってるんだってば。

もっと頑張れってか?

頑張れるかよ。


よく知ってるはずのこの夜空は

いつもの夜空となんか、違った。





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