うまれたこども
※虐待・暴言
母は、私を要らない存在だと言った。
生まれてはいけなかった子。
誰にも必要とされない子。
言われる度に、ふうん、そうなのかと思っていた。母が言うからにはそうなのだろう。私は何を言われても黙っていた。反論は受け入れられないし、私が何を思おうと、母の言うことが正しいのだから。
必要とされないからこんなことをされるのだ、こんな扱いを受けるのだと、事実として受け止めていた。
異常だとは思わなかった。普通の家庭というものを知る機会もなかったし、生まれた時からそうだったのだから、私にとってはそれが普通であり、異常であるかもしれないなどとは考えなかった。
父は、いつも私に謝った。
産んでごめんなと。
お前には迷惑をかけるな、と。
父は、何故か母に、“私を産んだこと”を責められているようだった。
前に、父が母に、「なんでこんな奴を!お前の分際で何の真似だっ」と叫ばれているのを聞いたことがある。酷く激怒していて、そのくせなぜか悔しそうな響きもあり、事情の分からない私などは訳も分からず不思議な気分になったものだ。
産んだのは母のはずなのに、どうして生んでいない父が、いったい何を謝るのかと、以前私は聞いた。だが、父の答えは、いつも決まってこうだった。
──────ごめんな。
大人にしかわからない事情があるのだろうが、幼い私にはさっぱりよくわからなかった。
またある時、母が私に、花瓶を投げつけたことがあった。それは鉄でできた割と高価な代物で、私の肩にあたり、すさまじい音を立てて床に転がった。
──────お前さえいなければよかったんだ、そうしたら私はこんな目に遭わなかった、お前が私の人生をめちゃくちゃにしたんだ。
母の怒号が飛ぶと、リビングで新聞を読んでいた父が、ちらりとこちらを見た。しかし、そのまま黙っていた。私が暴力を振るわれていても、父はいつも一言も喋らなかった。
私には、二人にはわかっているであろう状況がさっぱりだったが、その後、更に訳の分からないものを目にしてしまうことになる。
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