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奇跡のマシュマロとの出会い

それは、イオが七歳の時のことだった。


王宮の薔薇園。

不自然に細いウエストを競い合い、頬をこけさせた貴婦人たちが、不健康な白さを誇示するように日傘を回している。


この国の「美」は、どこか病的なまでに痩身に偏っていた。


(……前世の記憶がある俺からすりゃ、どいつもこいつも栄養失調の行き倒れにしか見えんのだが)

(…どいつもこいつも出汁をとるくらいしか価値のなさそうな煮干しの集まりだ……)


大人びた冷ややかな視線で、イオは茶会の喧騒を眺めていた。


前世の彼は、あまりに真面目すぎて、女性の肌に触れることもなく生涯を閉じた。

そんな彼が今世の「骨至上主義」の美意識に馴染めるはずもなかった。


そこへ、公爵夫妻に連れられて「彼女」が現れた。


「イオ殿下、お初にお目にかかります……。娘の、ブランネージュでございます」


イオの視界に、小さな影が飛び込んできた。


その瞬間、イオの心臓は、前世・今世合わせて最大の鼓動を刻んだ。


(……っ!?!?)


そこにいたのは、柳のようなスレンダー令嬢……ではなく。


五歳にして、すでに「もちもち」とした質感を隠しきれない、桃のような少女だった。


陽光を吸い込んで艶めく黒髪。

琥珀色の、どこかトロンとした眠たげな瞳。

そして、何よりイオの目を釘付けにしたのは、その「丸み」だった。


短い手足は白く、ふっくらとしていて、頬は今にもこぼれ落ちそうなほどに柔らかそうだ。

流行の「細身用ドレス」が、彼女の豊かな肉付きのせいでパツパツに張り詰め、今にもはち切れそうになっている。


「お……王太子殿下に、ごあいさつ、申し上げます………」


ブランネージュが一生懸命に頭を下げた。その拍子に、彼女のふくふくとした頬がぷるんと揺れる。

まだ幼いというのに、その身に宿る「肉」は驚くほど瑞々しく、完成された調和を保っていた。

半開きの唇から、甘い吐息が漏れた。


(……天使だ)

(いや、女神か)

(なんだあの、マシュマロを煮詰めて命を吹き込んだような生き物は。

……最高じゃないか!!)


周囲の大人たちは、ヒソヒソと眉をひそめていた。


「……公爵家の令嬢なのに、あんなに丸っこくて」

「不摂生なのかしら。将来、もっと見苦しくなりそうね」


(……は? どこがだよ。お前らの眼球は節穴か? 節穴どころか埋まってんのか? 磨けば光るどころか、今この瞬間ですでに完成された美だろうが)


イオは無表情のまま、一歩、彼女に歩み寄った。


ブランネージュは、自分の「醜い体型」を蔑まれるのだと思い、キュッと身を縮めて琥珀色の瞳を潤ませる。


「……殿下、私……醜くて、ごめんなさい……」


その消え入りそうな声を聞いた瞬間。


イオの中で、「この宝を一生守り抜く」という鉄の決意が固まった。


彼は無言のまま、ブランネージュの小さくて、驚くほど柔らかい手を取った。

指先から伝わる、もちりとした確かな弾力。

その吸い付くような肌の感触は、骨ばかりの令嬢たちとは比較にならないほど「生」の熱に満ちていた。


(……柔らかい。なんだこれ。最高だ。一生離したくない。この子が大人になったら、一体どれほどの『暴力的な曲線(至宝)』に育ってしまうんだ。……想像しただけで、未来の俺の理性が死ぬぞ)


イオは冷徹な王太子の仮面を被り、声の震えを必死に押し殺して言った。


「案ずるな。……お前は、そのままでいい」


(……いや、むしろそのまま育て。余計なダイエットなんて万死に値する。食え、もっと食え。俺がお前の肉の一片一分まで、すべて愛でてやるからな)


幼きイオは、自分より小さなブランネージュを見つめながら、内心で熱狂的な誓いを立てていた。


この日から、彼の「ムッツリ溺愛ロード」は始まったのである。


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