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奪うことでしか生きられない世界で、命は形を変える  作者: ちひ王


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10/10

地底の策

水中にじっと潜んでいても、安心はできなかった。

あいつが魚になれば、匂いで簡単に見つけられる。

そう考えた瞬間、体が勝手に動いていた。


――逃げなければ。


意識を切り替え、体を変える。

ぬめる感触が消え、暗闇を感じ取る鋭敏な感覚が戻る。

モグラだ。


湖岸に近い柔らかい土へ潜り込み、夢中で掘り進める。

土の冷たさと湿り気が体を覆う。

背後で湖の水が揺れた気配がしたが、もう聞こえない。


掘った穴の後ろを土で塞ぐ。

土の壁を作ってしまえば、当面は追跡されない。

少なくとも、匂いは断てる。


やっと、少しだけ呼吸が整った。


――あいつは何者だ。


同じ力を持っているのは間違いない。

ただ動物に変わるだけではない。自在に、強い体を選び取ってくる。

完全に、自分よりも格上だ。


普通に考えれば、自分と同じ"転生者"だろう。

人間から別の命に落ち、そして力を得た者。

だが、なぜ襲いかかってくる?


あの金色の目を思い出す。

最初に襲ってきたのも狼だった。

何度も視線が合い、獲物として狙われた。


そして今も、執拗に追ってきた。

まるで――最初から「自分を狩るため」に生まれてきたかのように。


胸の奥で、嫌な感覚が膨らむ。


――もしかして。


自分も、知らず知らずのうちに"あの狼をどう倒すか"ばかり考えていた。

森を出る手段を探すよりも、まず強さを手に入れることを優先していた。

まるで誰かに刷り込まれたように。


だとすれば、これは偶然ではない。

檻に閉じ込められているのも、境界が狭まっていくのも、すべて"戦わせるため"の仕組みだ。

この檻の中で、最後まで生き残ったほうが条件を満たす。

――そういう仕組みなのではないか。


考えれば考えるほど、背筋が冷たくなった。


だが、理由を突き止めるのに意味はあるのか?

自分に残された時間は限られている。

檻は狭まり、いずれ逃げ場はなくなる。


――理由よりも勝ち方を考えるべきだ。


モグラの体を小さく丸めながら、いくつかのプランを頭に描いた。


ひとつ目。

毒を手に入れる。

毒蛇か毒虫、それも大型のものを見つける。

もし相手に一撃を入れられれば、体格差を覆せるかもしれない。

ただし、毒を持つ生物がこの森に必ずいる保証はない。


ふたつ目。

複合で戦う。

蛇で絡みつき、カメで耐え、また蛇で締める。

変身を連続で使えば、少なくとも時間を稼げる。

その間に何か決定打を探せるかもしれない。

ただ、連続使用は集中を乱しやすい。失敗すれば即死に繋がる。


みっつ目。

環境を利用する。

ただ真正面からぶつかるのではなく、地形や罠で削る。

崖へ誘い込む。落石を狙う。あるいは水中に引きずり込み、呼吸を奪う。

動物そのものの力では勝てなくても、環境ごと武器にできれば可能性はある。


よっつ目。

道具を持てる体を探す。

猿のように両手が自由な体を手に入れれば、石を握ることも、枝を振るうこともできる。

人間の真似事かもしれないが、道具を使うという発想は決して弱くない。

ただし、そのためにはまず猿を狩らねばならない。狼や熊より簡単ではないだろう。


......どれも簡単ではない。

だが、選ばなければならない。

立ち止まっていれば、檻が閉じきるだけだ。


暗い土の奥で、鼓動がやけに大きく響いていた。

逃げ切る未来はない。

必ず、あいつと決着をつける時が来る。


――勝てるのか。


自分に問いかけても、答えは返ってこない。

だが一つだけ確かなことがあった。


勝たなければ、この檻からは出られない。

生き残る道は、それしかないのだ。


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