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「似合うコンドームだと?」
動揺を悟られない様に、デニー遅志は冷静を装って訊いた。
今回の質問は本当の問いである。
自分の辞書に無い「避妊」と言う概念を撥ね付けるものでは無い。
「金色のコンドーム。可愛いでしょ」
女は悪戯っぽく笑って、似合うと思うよと続けた。
コンドームが似合うと言うのはどう言う事だろう。デニー遅志は逡巡した。
俺がコンドームをつけて避妊セックスしなきゃならない負け犬と言うことか?
そう考えると今までのセックスも否定された気になる。イニシエーションが取り消された気すらする。
デニー遅志は怒りで体が膨張し始めている気がした。
馬鹿にしやがって。
──しかし、金色のコンドームは初めて見た。
そんなものがあるのか?
イメージでは薄いピンク色のラテックス素材だ。それがゼリーでヌルヌルとしているはずだ。
だが目の前にあるのは金色だ。
それに……
「模様があるのか、それ」
デニー遅志が訊くと女は嬉しそうに笑って、そうだよと答えた。
何が嬉しい?
俺がその模様に気づいたのが嬉しいのか?それとも。
「コンドーム付けるのがそんなに嬉しいか?」
デニー遅志は足を伸ばして女に軽く蹴りを入れてから金色のコンドームをひったくると、怒張した自分の陰茎に被せてみた。
確か先端を摘んで、空気が入らないように……つけた事の無いコンドームだったが、今さら保健体育の授業が役に立つとは思わなかった。
コンドームを付け終わり、ふんと鼻を鳴らした時に、デニー遅志はコンドームの模様が鱗であることに気づいた。
見れば、自分の陰茎が光り輝く金色の昇り龍になっている。
気づくとその金輝昇龍が持ち上がった。
「似合ってるよ」
女が蹴られた頬を摩りがなら笑った。
「似合ってる、凄く格好いい」
再び金輝昇龍が大きく持ち上がった。
デニー遅志は何匹目かの金輝昇龍をゴミ箱に放り投げた時、この女には金色の着物を買ってやろうと思った。
金糸銀糸の絢爛なやつだ。
いくらかかっても構わない。金色の龍……いや、俺が龍なら虎か?
しかしこの時デニー遅志は、女の腹には既に小さな金輝昇龍が宿っているのをまだ知らなかったのだ。
でもそれはデニー遅志の幸福な家族計画の話なので、今日はここでおしまい。
なかだし、なかだし。




