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なつのかけら  作者: kagari
15/27

小さな嫉妬心

 源さんが運転する軽ワゴン に、私と夏は乗り込んだ。

 私の家に向かって走っている間、 私は省吾と向と前田の携帯に電話をかけた。

 車は私の家の前で止まり、そこで夏を降ろした。

 向が歩いて 私の家に来るので、夏に留守番を 頼んだのだった。


 私と源さんは、前田が指定したコンビニに向かった。

 コンビニの駐車場に着き、私は車から降りた。

 車から降りると、コンビニの袋を手にした前田が店から出てきた。

 私は、足早に前田の方に行った。

「こんばんは。 突然 呼び出してすみません」

「とんでもない!本当に、僕が行ってもいいんですか?」

「皆省吾の担任の先生を、見たがっているんですよ」

 私は助手席の後ろのスライド式のドアを開けて、前田と一緒に車に乗った。

 車に乗った私は、隣に座っている前田に 源さんを紹介しながら、夏のことも話をした。

「私の従姉妹の夏の豆腐屋に、大豆を仕入れている 源さん。 源さんの家は 醤油屋で、源さんは夏が小さい頃から 夏の家に出入りをしていたんだ 」

「初めまして、前田です」

 源さんは少し照れながら頭を下げ、前田に聞いた。

「あの〜省吾君の家は何処ですか?」

 前田は慌てて、 省吾の家の道順を説明した。

 源さんは仕事上車を運転するので、省吾の家の道をすぐ理解できた。

 省吾の家は、マンションだった。

 車はゆっくり 動き出した。

 源さんの車で省吾を迎えに行き、省吾が助手席に乗ると、車は私の家に向かった。                 家に向かう道中、省吾と前田に夏と源さんがつきあうことになり、今夜はそのお祝いをする為に集まることを話した。


 家の中に入ると、夏と向が出迎えてくれた。 

「先生、 車の中で話した従姉妹の夏」

「初めまして」

 夏は、ペコリと頭を下げた。

「それから……」私が言いかけた時だった。

「初めまして 向と申します !先生と 省吾君が、いつもお世話になっております」

 床に正座をしていた 向は、手をついて深く頭を下げた。

「……初めまして、前田です」

 前田は、慌てて頭を下げた。

「さあ 、お上がりください。 私は準備がありますので 、失礼します」

 向は、台所に行ってしまった。

 向がいなくなると 、前田 は戸惑った顔を私に向けた。

「向はいつも ああだから、気にしないで。 何かあったら 向に言えば、喜んで飛んでくるよ。 さぁ、上がって」

 前田は 少々不安げに靴を脱いで上がった。前田の側で、 省吾が笑いをこらえていた。


 テーブルに、飲み物とたくさんの餃子が並んだ。

「急だったから、できあいの餃子ですみません」

 悔しそうに、向が言った。

「あの……フライドチキンを買ってきました。コンビニので、すみません」

 慌てて前田が言うと、笑いながら省吾が言った。

「僕なんか、ポテチとポッキーです。家にあったのですみません」

 省吾と前田から受け取った向は、嬉しそうに言った。

「わざわざ、気をつかわせて!ありがとうございます。用意をするので、皆さんはテーブルの方に」

 向は、再び台所に向かった。

 前田が持ってきたフライドチキンと、省吾が持ってきたポテチとポッキーがテーブルに乗った。

 省吾、私、前田が横一列に並んで座り。テーブルを挟んだ向かいに向、夏、源さんが座った。

 向の音頭で「夏さん源さん、おめでとう!乾杯!」とグラスを合わせた。

「なんだか、結婚披露パーティーをしているみたいですね!」

 源さんが、ご機嫌に言った。そんな源さんに、私は言った。

「夏に、ちゃんと気持ちを伝えることが出来て良かったね」

「はい!お姉さんのおかげです」

「おかげとは?」

 前田が、私に聞いてきた。

「突然源さんが家に来て、夏に気持ちを伝えたいって」

「告白に、立ちあったんですか?」

「そう!私立会人。もう、見ていられなかったよ」

 笑いが上がり、省吾が声を上げた。

「見たかったなぁ」

「つまんないよ。全然、ロマンティックじゃないし!」

「あら、月夜の下で告白されて。私は、素敵な思い出になったわ」

「なっちゃん、これからも思い出をたくさん作ろうね!」

「源さん!」

 麦茶を飲み干した向は、大きく一息ついてから言った。

「僕は、前からこうなるんじゃないかと思ってました。いやぁ〜お似合いです!」

「向さん、もう酔ったの?」

 省吾の言葉に、みんな大笑いした。


 宴会は和やかに進み、私の隣に座っていた前田がそっと言った。

「省吾は、こんな素敵な方達に囲まれていたんですね」

「省吾は、明るくなりました。今は、高木の方が気になります」

 そう言った私は、思わず吹きだしてしまった。

 前田が、怪訝な声を出した。

「どうかしましたか?」

「いえ……高木の母親を思い出しました。初めて高木の母親に会った時、息子と何か関係があるの?なんて言われたから」

「初対面のあなたにそんなことを?本当に、失礼な方ですね」

 私と前田は、顔を見合わせて笑った。


 その頃省吾は、縁側に座っていた。

 私は立ち上がり省吾の側に行き、省吾の隣りに座りタバコに火を点けた。

「食べすぎて、お腹が苦しい」

 省吾の言葉に、私は笑った。

「夏さんと源さん、良かったね。向さんじゃないけど、お似合いだよ」

「うん。そうだね」

「あのさぁ……今夜此処に、健一さんにも来てほしかった?」

 ……今夜、此処に健一が?

 省吾の問いに私は何も答えず、皆がいる部屋を振り返った。

 夏と源さんは、話しをしながら食事をしていた。

 向は、前田のグラスにビールを注いでいた。

 皆笑顔で、楽しそうだ。

「今夜健を誘えば、健は必ず来る。たとえ会話ができなくても、嫌な顔は絶対見せない。健は、そう言う人なんだ。健に気を使わせるのは、嫌なんだ」

「だから、健一さんを呼ばなかったんだ」

「でもね、本音は健一を呼びたかった」

 目の前で、楽しそうに会話をしている夏と源さんが羨ましかった。

 今まで感じたことをなかった嫉妬心が、小さく芽生えていた。



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