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犬の足跡と寿司屋

作者: jiru

 バス停の横に佇む寿司屋。人あしは少ないその寿司屋は、若い男が営んでいる。店の二階にはその男と黒い犬が住んでいる。

 澄んだ朝。がらんとした道路。古びた寿司屋。寿司屋の引き戸には『定休日』がぶら下がっている。何年もそこにいる畳はギシギシと音を立てる。男は洗面で顔を洗い歯を磨く。犬はまだ寝ていたいと丸くなっている。

 男は甚平に下駄という適当なものを着て、ペンキを取りに外へ出る。まだバスも動いていない時間なので、歩いて知り合いのペンキ屋まで行く。ペンキは玄関前にあり、それを手に来た道を戻る。男の朝は早い。昨日男から電話をもらったペンキ屋は、たたき起こされるのを嫌ってペンキを置いておいたのだろう。

男はペンキの蓋を開け、ヤンキー座りをして黒ずんだ店の壁を白く塗りたくる。やっとベッドから出てきた犬は、男がいる外まで出てペンキに興味を示す。男は構わずペンキを塗っている。犬は飛び跳ね、走り回り、最後にはペンキ缶を倒す。犬は主人に怒られることを恐れ、丁度来たバスにペンキ足で乗り込む。男はそれに気がつきバスに乗り込もうとするもバスはバス停を出てしまった。

 犬は何処かもわからないバス停でバスから追い出され、よくわからない道をさまよい歩く。

 運良く犬好きの女子高生が犬に気がつき保護する。女子高生は犬の足跡を遡って例のバス停にたどり着く。そのバス停にくるバスは同じ道を走るバスしかいないものだから、女子高生は向かいのバス停からバスに乗り、窓枠から白い足跡を探す。不自然に白い道路を見つけ、バスを止める。女子高生は寿司屋の引き戸を叩く。

 ドタドタと大きい足音を鳴らしながら男は、引き戸を開ける。そこに立つ女子高生の横にいる黒とも白とも言えない犬を見てほっとする。男は礼にと女子高生を店に入れ寿司を握る。

 女子高生は食べる前に写真を撮る。お腹いっぱいに寿司を食べた女子高生は、バスに乗って帰って行く。

 バス停の横に佇む寿司屋。人足はそこそこで、賑わっている。寿司屋の引き戸に手を掛けるサラリーマン。彼のスマホの画面には「犬の足跡と寿司屋」と書かれた写真が載っている。


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