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死んだ英雄  作者:
1章 魔王城脱出
8/62

7.化け物の場所

時は少し遡り---


---アイルと魔王の戦いが繰り広げられる最上階。


「はぁ、はぁ、」


右腕が完全に使い物にならなくなったか...。フェイはルイのとこだし、...クソ、俺治癒魔法使えねぇのに...



ジリリリリリリリ...

突然魔王城全体に謎のアラートが鳴り響く。


「なんだ!?」


「!?」


魔王の顔色が一気に変わる。


「....どうやら、君達の仲間には頭の切れるジョーカーが居るようだ。」


「..ん?」


魔王の発言に首を傾げるアイル。ジョーカーと言われても思い当たる人と言えば...


「...フェイ?」


「...ヒーラーの分際で...厄介な真似を...」


魔王は何かに気づいたのか、階段の方へ向かい足を進めた。


「待てや!行かせるわけ!」


「選手交代だ。」


こちらを振り返ることなく魔王は冷たい声でそう言った。次の瞬間、アイルの目の前に描かれる魔法陣。その中央には1という文字が描かれていて人影が出てくる。

魔力の粒子が徐々に人間に近い生物の姿形を形成していき、



「...っなんで、テメェ...が...」



そこに現れたのは、死んだはずのロイド・ゼファー。


伝説の勇者だった。


-----


アイルの右腕は青紫色に染まっていてとても動かける状態ではなくなっていた。全身に血が付着していて、


「痛々しいな...」


「こんなもん屁でもねぇよ。」


荒れる息を必死に整えルイの前で痩せ我慢をするアイル。だが、身体はズタボロになっていて流石のルイでもアイルが強がっていることぐらい分かる。


「...てか、なんでロイドがここにいるんだよ。死んだはずだろ...」


「趣味の悪い魔法を使える奴がいるんだろ。」


「...死者の身体を弄んでるってか」



「俺は死んでなどいない。」


2人の会話に割って入ってきたのは目の前のロイドだ。彼の容姿は昔のままで、背中に垂れる赤いマントは汚れているものの確かに勇者の名残を感じる存在感がある。服も上質な布地に金の刺繍が施されており勇者の象徴として相応しい色合いをしている。そして何より、彼が左の腰に携えている剣は間違いなく、勇者ロイド・ゼファーが使っていた伝説の剣、カイロスだ。持ち手には金の紋章が刻まれており、異質な空気感を醸し出している。


「ロイド・ゼファーは、死なない。」


そう言い、ロイドはアイルに向かって剣を構えた。


「誰だよテメェ。....テメェがロイドを語るじゃねぇよ!!ロイド・ゼファーという大勇者を!!侮辱するなぁ!!!」


アイルの渾身の拳がロイドの腹目掛けて繰り出される。


「ボルトショック!」


アイルから流れる無数の電流がロイドの動きを麻痺させる。しかし--


「その程度で...俺の意思を継げるか...」


「んなぁ!」


ロイドが振りかざした剣によってアイルは床を貫き落ちていった。床は完璧な大理石で出来ているというのに、それすら貫く彼の攻撃力にルイは恐怖で胸がいっぱいだった。


「あ...あぁ....ああ....」


「.....何故...こんな所に一般人がいる。」


「...いや、俺は....」


アイルから次はルイに目をやり、殺気を隠さず堂々と殺す気で歩いてくるロイド。

ルイは自分の足が言うことを聞かないことに苛立ちを感じることも出来ないくらいパニック状態だった。


「...ま、まって....」


「ここは、魔王城だ。人間の出る幕はない。」


「...あぁ」


「ここは、化け物達の場所だ。」


ロイドが、剣を高く上にあげる。


--あ、やばい...逃げろ。逃げろ。死ぬぞ。助かったと思ったのに、やっぱ死ぬのか....俺みたいな雑魚は生きる価値すらない....


「......ま、待って....俺は!!!違うんだ!!!俺は勇者じゃない!!!!」


「.....なんだと?」


剣を上げたままロイドの動きが停止する。


言ってはいけない気がした。言ったら全てが終わりな気がした。だが、まだ死にたくない。生きたいんだ。


「俺は!ただ果物売りに王都まで来ただけで!そしたら、急にここに飛ばされて!...何が何だか分からねぇんだよ!殺さないでくれよ!俺はただの一般人!ルイ・レルゼンなんだよ!」


「....」


なんて不細工な命乞いなのだろう。自分の置かれた状況に対して同情を求め、あくまで自分は被害者だと訴え続ける。だが、もうどうでもいい。本当のことだから。死にたくない。死にたくなくて何が悪い。不細工でも、意地汚くても俺は生きたい!


「...貴様は、....殺す価値すらないかもな」


ロイドは剣を下げてゴミを見るような目でルイを見下す。その目からは殺気は感じない。それよりも、異常な嫌悪感と気色悪さを感じている。そんな目をしている。


「...だろ!なら、もういいだろ!逃がしてくれ!頼むよ!」


「......本当に....世の勇者は腐ったものだな。」


ロイドが完全に脱力し、呆れを通り越している。


殺す価値すらない?上等だ。ならさっさとどっか行け。そうだ。俺はただの一般人なんだ。勇者なんかと一緒にすんな。


「だが、生かす価値もないな。」


「え?」


急などんでん返しにルイの思考は白紙になった。ケールによる絶体絶命の状況から逃れたと思えば今度は更に強い敵が現れて今度こそ殺される、と思ったらまた生き延びて、とも思った矢先---


「結局かよ...」


「言ったろ。ここは人間の居る場所じゃない。そんな所に踏み入れてしまった時点で、化け物の餌食になる。」


「....あぁ、....しぬ。」


「化け物に生まれ変わってからここに来い。人間が。」



ロイドが剣を振り下ろし---




「人間の戦い方を舐めない方がいいですよ。」


ルイとロイドの間に、いるはずのない第三者からの声が割り込み、次の瞬間--




-----シュババババ!!!!


「...!?」


ロイドの身体に数本の針が突き刺さった。針から紫色の液体が流れている。


「...これは...」


すると、ロイドが床をぬけ、たちまち出てくる黒い影の中へ引きずり込まれていく。


「...貴様....何者だ...」


影に引きりこまれていくロイドを開けた天井の上から白のマントを揺らし見下す男の影。


「フェイ・ハイル。ルイと同じただの人間ですよ。」


そこには、ルイの頼れる仲間。フェイが立っていた。

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