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死んだ英雄  作者:
1章 魔王城脱出
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6.自称"宿敵"

心臓の音は徐々に速度を上げルイの身体中を響かせた。目の前にいる圧倒的恐怖。ルイを殺そうとしてきたのは魔王、魔獣、女の勇者。そしてそこにこの人間を追加することになる。毎度の事ながら身体震えが止まらない。何度も言うが、今までマトモな戦闘経験の無いルイにとって魔王城など命が何個あっても足りない地獄。戦うことも出来ない彼にここにいる権利なんてない。


ルイの頭は徐々に治っていった。能力が無意識に身体を治してくれるので簡単には死なない。だが、痛みは決して和らがない。毎度毎度激痛をルイが襲うため攻撃を喰らわないことに越したことはない。


煙を出しながら再生していくルイの後頭部を見て、


「久しぶりじゃない?ルイ。」


と、目の前の男が呟く。


「お前、魔王軍か...?人間なのに...」


「........は?何言って.....あ!あぁ!!!!そっか!」


ルイの質問に不思議そうな顔を浮かべと思ったら突然笑顔で叫ぶ男


「はははは!記憶取られちゃったんだ!アルドに!あ〜!!...くくく...腹痛てぇ...!!!」


「.....てめぇ....何がそんなに面白い」


「おもしれぇだろ!あのルイ・レルゼンが何もか忘れたんだろ!俺への憎しみも!あの出来事も!」


ハイになったかのように叫ぶ目の前の男に若干恐怖すら感じる。


「くふふふ.....なぁ...ルイ....俺はお前をずぅ〜っと探してたんだぜ?なのに、お前は俺を忘れてしまったと...」


「っっ!」


「それってさぁ!!!俺だけずっと意識してたみたいな!?片思いの乙女みたいな!?...俺の一方的な愛をお前は受け取ってくれるか?」


いきなりルイの頭を壁に押し当て意味不明なことをつらつらと喋る狂人。


「...てめぇ....なんなんだよ..」


「あぁ....儚いねえ....俺の知っているお前は俺を見た途端血相変えて襲いかかってくる熱のある男だったのに....」


そう言いながらルイの耳元まで近づいてきて、


「あぁ〜ゾクゾクするよ。お前への想いが消えちまってすぐにでも殺してしまいそうだ。」


ルイの耳元で男は吐息をかけながら喋る。頭を壁にぶつけられた痛みすら忘れてしまうほどの恐怖をルイに植え付けて。


ルイの動きは壁に押し当てられ完全に封じられた。セレナに動きを封じられた時と同じように。今回違うのは、相手がルイを本気で殺す気がある。ということだろう。つまり、


「...詰み...か。」


「あ、ようやく分かった?そ。お前もう詰んでるよ。」


重い言葉に対する軽々しい男の口調に虫唾が走るが、今のルイにこの状況を打開する策は何一つ無い。男に対する怒りがあったとしてもそれを彼にぶつけることすら出来ず、ルイは運命を受け入れるしかない。


「ようやく、お前を殺せるよ。ルイ。」


男は手を伸ばし、何をするのかと思えば男の手から冷気が発生しだし、段々空気が冷たくなっていく。そして、手から氷の結晶が出てきて、それは剣と呼べる代物に変化していった。

男は氷の剣をルイに向けた。


「...最期に俺の名前を教えてやるよ。俺は、お前の宿敵。ケール・カリルだ。」


そう言い、彼は剣をルイに突き刺し-----






ズドドドドダドトドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!








天井から何かが落ちてくる。天井をぶち破り、瓦礫が目の前の男を下敷きにした。ケールは床にたたきつけられ、床が抜けた。


「...?」


天井を見上げると、紅に光る月がルイと、


天井から落ちてきたアイルを照らす。



「....!アイル!?」


「..ルイ....なんで...ここに...」


「いい夜だな。」


そこに居たのは、魔王.....


ではなく、




「......ロイド。」






伝説の勇者、ロイド・ゼファーが居た。

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