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8 昔話

ほかの話に比べるとちょっと長いかも。

「どうだった?今日の生態学」

「んー、まあボチボチってとこ」

「……嫌味?」

「なんで。聞いてきたのティーじゃねーか」

 おどけて返すロイリーに、ティアスはサンドイッチを一口かじった。

 学年でトップともいえる記憶力をもつロイリーは、覚えればいいテストの出来はだいたい「ボチボチ」と言っておいて、とる点数はほぼ学年最高点だ。今日はずっと座学のテストが続いたが、歴史がようやく終わったのでティアスとしては一息つける。そして、例のごとく2人は裏庭で談笑中なのであった。


「じゃ、今度はこっちから質問な」

「何?」

「最近、なんか悩み事があんだろ」

 ティアスは、思わず口を止めた。一応普段どおりにしているつもりだったが、さすがに親友にはかなわないらしい。

「……なんかね、お母さんに隠し事されてるみたいでさ」

「おばさんが?ティーに?」

「確証とかはないよ。ただ……なんか、そういう感じがして」

「ふーん…ティーに気付かれるなんて、ユルイ隠し方だな」

「変なとこでからかわないでよ!こっちは本気なんだから!」

 言ってしまってから気付いた。ロイリーは今、わざとふざけて答えたのだ。多分、あまり落ち込ませないために。

「──まあ、何か隠してるにしても、ティーのためを思ってのことだとは思うよ。おじさんもおばさんも、ほんとにティーを思ってくれてると思うし。あんな人たちが親だったらいいなって、いつも思うしな」

「……そういえば、ロイのお父さんとお母さんって……」

「ああ、そーいや言ってなかったか」

 ロイリーは食べ終えたランチボックスをしまうと、一息ついて口を開いた。

「王宮で働いてた。ってのは話したっけ?」

 ティアスがうなずくと、ロイリーは微笑して続けた。

「まあ、オレは両親どっちも顔も何も覚えてねぇから、これは聞いた話なんだけどな」

 一息おいて、ロイリーの表情が心なしか締まった。


「オレの父さんと母さんは、当時の王様の召使だったそうだ。オレが産まれる少し前──多分、まだ仕事に支障をきたすほどじゃない時期だったんだろうな。その王様は……いや、確か女王様だったな。その人は、国の外れまで休養に出かけたそうだ。そして、運悪く盗賊に襲われたんだと。その女王様をかばって父さんは死んで、母さんも…オレを産むとほぼ同時に死んじまったらしいよ。

 運がなかったんだな、父さん。その事件、死者自体は少なくて、もう一人青年が犠牲になったぐらいらしいし」

 語る彼女の顔はなにか世間話でも語るようで、しばしティアスは、言葉を返すことができなかった。

 しばらくして思考が追いつくと、だいたいの事情がわかってきた。

「……それで、親戚の人に引き取られたってわけか」

「正確に、親戚ってわけじゃねーけどな」

「え?」

 ロイリーは頭の後ろで手を組み、草原に寝そべった。

「ティー、その事件のこと知らなかったろ?教科書にも載ってねーし、授業でも教えねぇ。なぜかその騒動は、事件のわりにはこぢんまりと終結させられてんだ。……ま、王家の誰かが死んだってわけでもねぇから、そう不自然でもないけど。親に親戚がいたかどうかもオレは知らねーんだけど、今一緒に住んでる親代わりは、その友人なんだってさ」

「ふーん…。ロイも、なかなか物語的な人生送ってるんだね」

 相槌をうったあとで、ふとした疑問が浮かんできた。

「……あれ?前の王様って女王様なんだっけ?」

 ロイリーは、少し呆れたようにティアスを見やった。それくらい覚えておけ、と言いたげだ。

「まあ、教科書にはろくに載ってねぇから、ティーが覚えてなくても無理ねーか。今の王様の姉で、血筋としては違和感はないな。因習にのっとった妥当な即位だ。在位は10年足らずで、一時期なんか体調を崩したとかで引っ込んでたようだけど、最後は病気で急死。確かに、歴史として覚えるようなことは大してやってねぇな」

 さすがに亡き両親が仕えていたらしい人のことで、結構調べているようだ。


「──この事は、あんま口外しないでくれよ。オレ、こんなことで注目集めたくねーしさ」

 ちらりとティアスに目をやったロイリーはどこか寂しそうで、ティアスはほんの一瞬、言葉に詰まった。しかし、すぐにいつもの「親友」の顔に戻った。

「決まってるじゃん。ロイは私の親友なんだから。……ありがとう、話してくれて」

 その言葉に微笑んだロイリーに、話題をいつもの雑談に戻しながらティアスもランチボックスをしまった。

ようやっと本題出ました。わかりやすい伏線で読みやすいといいけど。

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