13 明かされる謎
サブタイトルがめっちゃ今更や・・・(汗)いや、ほんとに考えるの苦手です。
「……そう。それが、あの事件の真相か……」
まったく外見年齢の違うふたりの少女が、真剣な顔で向かい合っていた。先に目を逸らし、口を開いたのはシルスだった。
「予想はついていた。母様が未婚だったことと、父様についての記述がどこにもなかったから。あの元老たちが、「女王が父親もわからない子供を産んだ」なんて、公表するわけがない。……フレアは、本当に母様を大事に思ってくれていたのね」
「母様も頼ってたと思うよ。だから、シティに気配を消す能力まで与えてお母さんが城内に入りやすいようにしたり」
沈黙がおりたところで、ティアスが再度、姉を見据えた。
「今度はこっちが聞く番だよ。どうして、あの事件前と同じ姿なの?どんな術がかかって……」
生を受けてから、ティアスとシルスは城門に近づくことさえ許されず、王宮の奥で軟禁状態で育てられた。理由はわからなかったが、ふたりは幸せだった。小さな少女にとっては十分な行動範囲もあり、勉強も、草花を愛でることも、小鳥と戯れることもできた。忙しかった母は、それでも双子の娘たちを本当に可愛がった。何も望むもののない、幸せな生活。
──それは、唐突に崩れ去った。
10年前のあの日。ふたりは一生懸命つくった首飾りをプレゼントしようと、母の部屋のドアを開き、見てしまった。身体の至る所から血を流し、倒れている母の姿を。そして、それを看取ったという母の親友の姿を。
フレアは母の死と、彼女にふたりを連れ出すよう頼まれたことだけを手短に告げ、何がなんだかわからなくなっているふたりを連れて城門まで急いだ。──このままここにいては、どうなるかわからない。
王の死に混乱した王宮から抜け出すことは、フレアの魔力やシティの能力を駆使すれば容易だった。しかし、フレアもよほど動揺していたのだろう、──シルスと途中ではぐれたことに気付くのが遅れた。
そして、最終的に元老たちに捕まったことが、シルスの決定的な不運だった。
城から逃れたフレアは、すでに心を決めていた。家に帰りついた彼女は、泣きじゃくるティアスを寝かしつけ、夫の協力を得て術をかけた。記憶をあやつり、過去を封印し、『自分の娘』としての生を埋め込んだ。
ティアスが聞きたいのは、その後の話だった。王宮で、いったい何があったのか。
「呪い、よ」
無感動なシルスの答えに、ティアスは顔をしかめた。
「それは想像つくけど……身体の成長を止める呪いなんて、あったかな?」
治癒系統も攻撃系統も、主だった術や呪いはおおかた学校で習う。が、ティアスには覚えがなかった。
「学校で習っていらっしゃるかどうかは、わかりません。学生にはまず使えないほど、魔力を要する呪いです。元々、別の目的で使われるものですが」
ウィルトンの説明に続き、シルスがつぶやくように答えを明かした。
「……『死の呪い』」
「『死の呪い』を受けて、助かったのですか?」
ゼイルが、思わずといった風に割ってはいる。答えたのはウィルトンだった。
「『死の呪い』は、その魔力の強さによって可否が決まります。姫様の内なる魔力は、現在の王族では最高ともいえるほどです。術者の力不足だったのか、姫様を侮っていたのか……術は失敗しました。しかし、失敗してなお、影響のある術でした」
「『死の呪い』が失敗した場合……」
ゼイルのつぶやきに、シルスが答える。
「その余波は、かけられた者の『何か』を壊す。それは身体の一部だったり、感覚だったり。私の場合、それは『身体の成長機能』だった」
沈黙がおりた。やがて、ゼイルが声を搾り出す。
「……では、シルス様のお体は、一生そのままなのですか?」
「それだけではありません」
答えておいて、ウィルトンがティアスに向き直った。
「以前、姫様は発作を起こされました。覚えておいでですか?」
「ああ、眠ってたのに突然……」
「──呪いが、身体を蝕んでいる、という事ですか」
眼光を強めたゼイルに、シルスが一息ついて応じた。
「ゼイルは、変わらず鋭いな。そう。私の命は、もう長くない。呪いを受けて、もう10年。だから、私は死ぬ前に犯人を突き止め、魔力をすべて使っても殺す」
「駄目」
瞬間的にティアスは口を挟んだ。禁止というより、拒絶の響きで。幼い姉の肩をつかむ。
「命は大事にしなきゃ。姉様」
「どうせ、私はもうすぐ死ぬ。だったら──」
「それでも」
一息ついて、ティアスは続けた。
「死んじゃだめなんだよ。母様のために。──そして、母様を命がけで守った人たちのために」
それは、シルスの知らない、ティアスの親友の話。
「私の親友は、昔、母様に仕えてた人たちの子供なの」
彼らは、ティアスたちの母を守るために死んだ。そして彼女は、ティアスたちのことを親友に託して亡くなった。だから。
「自分から、死ぬようなことなんて、駄目」
「………」
その時───別の声が響いた。
「やはり、お戻りでしたか」
はい、やっと過去編終了です。あー長かった。とりあえず1話2000字を越えないように書いてるんですが、元の文章より伸びる伸びる。これでもあちこち削ってるのになぁ(汗)