番外編短編・自然派二世と背徳ラーメン
品川達も高校三年になった。茜と品川は同じクラスではなくなってしまった。茜は文系進学クラスに入り、品川は就職や専門学校コースになったからだ。もっとも品川は進路は決まっている。卒業後は調理師になるための専門学校に行く予定だ。今も茜の両親のカフェで手伝いながら、色々と調理技術を教えてもらったりもしていた。
そうこうしているうちにあっという間ゴールデンウイークに入った。茜はゴールデンウイークにラーメンが食べたいとリクエストしてきた。駅近くの汚い路地裏にあるラーメン屋だったが、品川もよくいく所で興味を持ったらしい。
「え、ここがラーメン屋?」
茜のリクエスト通りにラーメン屋に連れていったが、その店構えにかなり驚いていた。ぼろぼろで、小さな小屋のような汚いラーメン屋。客層はほぼ男。店員もおじさんしかいない。ここに茜が入ったら、明らかに紅一点になるだろう。
「やめとくか?」
そう品川は言うが、この店にいる茜を想像すると楽しみだ。初めて入るこのラーメン屋にどんな反応を見せるのか。ずっと自然派二世として食べ物に我慢してきた紅音は、普通の食べ物にも新鮮な反応を見せてくる。隣で見ていると飽きないし、面白い。
「いえ、入る!」
「そうか、じゃあ、行こう!」
品川は先にラーメン屋に入り、エスコートする。少し前まではヤンキーとして派手な格好をしてきた品川だったが、今はだいぶ落ち着いてしまった。
こうして茜をカウンター席に連れていき、ラーメンも注文してあげた。店内も綺麗ではないが、茜はあぶらっぽい壁や赤いテーブル、メニューにも好奇心いっぱいな目を向けていた。まるで巣立ちしたばかりの鳥のようで、可愛い。可愛いとしか言いようが無いのだが。
ラーメンは二人とも醤油ラーメンを頼だ。本当は豚骨ラーメンがおすすめだが、初心者には醤油の方がいいだろう。品川は通ぶってラーメンの蘊蓄などを語るが茜はさらに興味津々に耳を傾けていた。
それにしてもラーメンのスープは熱い。もうゴールデンウイークにも入り、初夏だ。季節的にもつけ麺にした方が良かったか。それに隣で汗をかき、頬を赤くしながら食べている茜の姿は、目の毒過ぎる。近くで見ると、まつ毛もかなり長い事にも気づき、心臓が変な音をたてる。他の客ににこんな茜は見せたくないが、ありがたい事に皆ラーメンに夢中だった。
それだけラーメンは美味しいという事だろうが、隣のいる茜を見ながら、これは背徳なラーメンだったような気がしてならない。今も清い男女交際を続けていたが、いつまでもつか。もう早目に結婚するしか道は無さそうだ。
「品川くん、このラーメン美味しいねぇ」
茜は彼氏がこんな事を考えているのか、全く知らない。無邪気な笑顔しか見せてこない。それもまた目の毒だ。断食中に目の前に美味しい料理を見せつけられているような。
「美味しいだろ? また行こう」
「うん!」
次の約束もすると、品川も笑顔でラーメンのスープを啜っていた。本心は上手く隠しながら。
ご覧いただきありがとうございました。これで全編完結です。
次は老夫婦のライトミステリです。今作はコッテリ豚骨風味でしたので、次はあっさりサラダ味の予定です。他にも短めのライト文芸を書く予定です。




