番外編短編・ハイスペ男子と解毒ジュース
細川はイライラしながら、キッチンで小松菜を切り刻んでいた。
今日はクリスマスイブだが、全く楽しくない。面白くない。茜と品川がくっつき、家族でクリスマスパーティーをしているらしい。細川も誘われたが、勘弁して欲しい。一瞬でも婚約のような話がでた女が、別の男と一緒にいるところを想像すると、イライラする。細川はさらにザクザクと小松菜を刻んでいった。
そんな細川は、ハイスペイケメンだ。別にこんな婚約話、消えたって構わない。それでも田舎で彼女と自給自足生活を夢想していた細川は、ダメージがあった。しかも最後に発達障害の良い医者も教えて欲しいときた。砂かけられた気分だが、相手はまだ高校生だったと思い出す。細川も大学生だが、あのぐらいの年齢はまだまだ子供だ。そう思えば、少しは気が紛れてくる。きっと、婚約とか許嫁という言葉に乗り気になっていただけなのだろう。そう無理矢理自分を納得させた。
小松菜を切り終えると、同じく切った林檎や蜜柑、ハチミツなどと一緒のミキサーにかける。こうして一杯のジュースは完成した。これはあの予防注射の解毒にもなるという噂だ。細川も過去はあの注射に信頼を置いていたが、副反応で死にかけ、反転するようにアンチになってしまった。
このジュースはたいして美味しくはないが、たぶん解毒には悪くないはずだ。あとは松葉茶、重曹、クエン酸、天然塩なども活用している。細川のキッチンは一人暮らしの大学生のものとは思えないほど、意識が高いもので溢れていた。
最近はあの注射で障害が残ってしまった人達の支援や介護の手伝いもしていた。今日もとある女性の家に手伝いに行く予定だ。片足が動かなくなり、不便しているという。細川は介護のプロでもないので、今日は玄関先で食べ物を届けるだけだが。今日はこのジュースもボトルにつめて持っていこう。
「麻子さん、体調いかがですか?」
喧嘩先でその彼女に会う。まだ二十歳そこそこで細川と同じ歳ぐらいなのに、杖をつき痛々しい姿だ。改めてあの注射をごり押し、反対する意見を一纏めに「陰謀論者」にカテゴライズしたメディアに腹がたってくる。見た目はハイスペでイケメン。クールそうに見える細川だったが、内面には熱い思いがあった。
「これ、ごはんやお惣菜です。あと松葉茶も。小松菜のジュースも作ったので。解毒できるかもしれない」
細川は紙袋に入ったそれを麻子に手渡した。
「細川さん、本当にいいの?」
「ええ。何か困ったことがあったらすぐ連絡してくださいね!」
彼女はボトルに入ったジュースを見つめていた。緑色で味もたいして美味しくは無いが。
「ありがとう。ありがとう細川さん。このジュースも」
笑顔でお礼を言う彼女を見ていたら、心臓がキュンと音がなった。あの茜にはこんな感じはならなかったが。
「いや。お礼なんていいんだよ」
細川は恥ずかしそうに、頭をかいていた。




