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ヤンキーくんと背徳グルメ〜ヤンキーくんと自然派二世の美味しい初恋〜  作者: 地野千塩


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第41話 甘いクリスマスケーキ

 藁人形動画を作っていた占い師が逮捕された。母への誹謗中傷だけでなく、顧客への詐欺が主な罪状だったが。他にも部下へのパワハラ、顧客へのマインドコントロール疑惑もあり、警察も調査を進めているという。人を呪えば穴二つ。この言葉は本当なのかもしれない。何よりそんな事をしたら、品川の隣を歩けなくなるかもしれない。茜はこんな人を憎んだり、呪ったりする事はしたくないと思う。まだまだ愛は、何なのかよくわからないが。


 あっという間に終業式も終え、冬休みに入りクリスマスイブになった。街はクリスマスムードに浮かれていたが、母はまだ体調は万全ではなかった。品川や亜子が料理を作り、食べさせている状況だった。ちなみに品川はギリギリ赤点を逃れ、補習も回避できていた。


 意外な事に、あの一件から母は品川のことの見直していた。父も品川は包丁捌きが上手いと料理を教え込んでいた。また今はワクチン後遺症の人が増えて、その介護もしたいらしく、自給自足計画も綺麗に頓挫していた。そもそもカフェもあるし、家のローンもあるので、自給自足生活はどっちにしても実現しなかっただろう。細川も介護に忙しいようで、全く姿を見せない。


 ただ、茜としては品川の発達障害疑惑も気になり、一度だけ連絡をとり、信頼できる医者を聞いておいた。細川によると医者ガチャはかなりあるらしい。品川の意思を優先するが、もし本当に困った時は、信頼できる医者のところにで出向くの必要もあるだろう。こうして一応の保険は作ったので気分良く冬休みを迎えられそうだ。期末テストの成績もよく、諦めていた難関大学への受験も希望が出てきた。


 そしてクリスマスイブ。家ではパーティーを開く事になった。例年は両親は仕事だったが、母の快気祝いも兼ねている。母の体調は一時期は大変な状況だったが、今は品川や亜子の看病のおかげで、年明けにはカフェへに復帰もできそうだった。このパーティーは品川や亜子も誘い、みんなで過ごす事にもなった。茜は品川と待ち合わせし、一緒に家に向かう事になった。


「品川くん!」


 茜は、品川との待ち合わせしている学校の校門の前に向かった。クリスマスイブだが、学校は休みでいつも以上に静かで地味だった。今日の夜からは雪が降るという予報が出ていたので、昼間の今も寒いが、空はまだ晴れていた。雲の隙間から水色の空が見える。


「黒澤!」


 待ち合わせしている校門には、品川の方が先に来ていた。


 もうルックスもだいぶ落ち着いていた。髪の毛もほとんど黒で、短めに切っていた。料理人を目指すなら清潔感の大切さを父に教え込まれたようで、今はファッションヤンキーも辞めている。もうヤンキーとも言えない外見になってしまったが、これはこれで悪くないだろう。黒髪短髪の品川もイケメンに見えてしまう。恋は盲目というものかもしれない。


 こうして待ち合わせをした二人は、学校から住宅街に入り、家に向かう事になった。


「品川くん、その大きな紙袋何?」

「ケーキ焼いたんだ。バターケーキ。実は叔母がもっている古いレシピ借りて。絶対美味しいはず!」


 品川は胸を張っていた。


「すごい自信」

「自信は必要だろ。黒澤の父ちゃんからも自信いっぱいの料理人の方がいいって言われた」


 確かに今の品川は、もう拗ねた感じはどこにもない。目もまっすぐだった。


 茜はそんな品川の隣を歩ける事は、とても嬉しい。今は少し歩幅を合わせるために早歩きをしているけれど、それはそれで楽しい。


 気づくとクリスマスの住宅街は、周りの誰もいなかった。老人も多い住宅街なので、クリスマスも無縁なのかもしれないが。冷たい風が吹き、震えてきそうだが、あと数分歩けば家につくだろう。


「品川くんのケーキ食べるのがとっても楽しみ」

「黒澤は食べる事しか頭にないな……」


 隣にいる品川が、呆れたように苦笑している瞬間だった。


 一瞬唇に何か触れたような?


 ほんの一瞬の事で、一体何が起こったのかはわからないが、目の前に満足そうな品川の顔があった。まるで甘くて美味しいケーキを食べた後みたいな顔。その顔を見ていたら、茜は何をされたのかを悟ってしまった。


「え、今のな、何?」

「いや、美味しかったよ」


 品川は悪戯好きの子供のように無邪気に笑っていた。


 彼は滅多に「美味しい」とは言わない。だんだんとその意味を頭で理解しはじめ、顔が爆発しそうだ。辺りは冬の風が吹いているはずなのに、二人の空気は妙に甘ったるくなってきた。


 ヤンキーをやめた品川だったが、これからも甘くて美味しい背徳料理を一緒に食べる日常が、簡単に想像がついてしまい、茜の頬は今まで一番爆発しそうだった。


 家でみんなと一緒にクリスマスケーキを食べた。バタークリームたっぷりで、デコレーションは地味なケーキだったが、口の中にいつまでも甘さが残ってしまう。


 甘いクリスマスケーキ。まるこでれから日々を予言しているようなケーキだ。茜は恥ずかしさで俯いてしまう。付き合う事について小学生レベルの知識しかない茜だが、このケーキを食べていたら、品川の気持ちが伝わってきてしまう。このケーキは言葉以上に饒舌に品川の気持ちを語っていて、居た堪れない。家族と一緒に食べているので、余計に居た堪れない。


 どうやら本当に悪い虫をつけられてしまったみたい。品川と甘い日々が始まりそうな予感しかしなかった。

ご覧いただきありがとうございます。本編完結です。今回はグルメラブコメディでした。


次は元になったオリジナル短編と番外編です。本作は元々は短編から長編にした話です。その短編も次話に再収録します。元になったオリジナル短編は茜が一人称で細かい所は違ってます。内容はだいたい同じかと思います。番外編はその後の二人の話など書きました。


長い話でしたが、ご覧いただきありがとうございました。今作は女子高生が主人公でしたが、次は老夫婦のライトミステリの予定です。



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