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ヤンキーくんと背徳グルメ〜ヤンキーくんと自然派二世の美味しい初恋〜  作者: 地野千塩


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第34話 再戦とポテトフライ

「真希ちゃん。もう私は親とは縁切りしようと思うの!」


 茜は子供のように頬を膨らませていた。


 今は放課後。場所は学校の近くのコンビニのイートインスペース。今日は真希と一緒に帰る事になり、コンビニに寄り道していた。真希はアメリカンドック、茜はポテトフライを買い、ジャンキーな味を楽しんでいたが、話題はどうしても親の事になってしまう。


 突然の自給自足暮らし宣言と許嫁の強制。どちらかといえば大人しく従順な茜だったが、今回ばかりは怒った。反抗期も再開だ。今は亜子の住むアパートへ家出し、母や父との連絡も無視しているところだった。


 そんな茜に真希は目を丸くして驚く。


「茜の両親、そんな事になってたわけ?」


 幸いな事のイートインスペースは他に客もいない。店内放送が余計に目立って聞こえる。今はアニメとコラボ企画をやっているようで声優の声が流れる。サエの好きな声優だった。確かポテトフライやアメリカンドックを買うとキャンペーンに応募できるので、あとでサエにレシートを渡すか。


「そうだよ。もう信じられない。自給自足とか冗談じゃないから。許嫁ってなによ。今は令和だし、明治時代じゃないから!」


 茜は頬を膨らめつつも、ポテトフライを食べる。しっとりと油をふくみ、厚切りカットのポテトフライだった。今は怒っていたが、このポテトフライに少しは慰められそうだ。真希が食べているアメリカンドックも美味しそうだが。


「まあ、それは茜も怒るわな。で、その親戚の亜子さんはいつまで家にいていいっていってるの?」

「それが一週間後には彼氏が海外から帰ってくるからさっさと出て行ってと言われてる」

「ダメじゃん。腹立つけどやっぱり家に帰ったら方がいいよ」

「う、そうだけど……」

「ウチら子供だよ。反抗期やっても金は増えるわけでもないし。期末テストも近いよ?」


 いつになく真希は現実的な事も言う。耳が痛い。こうして家出までして反抗しているわけだが、いつまでもこんな生活はできない事はわかっていた。所詮、今は子供だ。親の下にいる。


「でもだからって、自給自足暮らししろとか高校やめろとか酷いよ……。しかも許嫁なんて……」


 自分の情けなさを実感して涙が出そうだ。


「仕方ないよ。ウチらは子供なんだから。家に帰って話し合うしかない」

「う、うん……」


 気づくとポテトフライは空になっていた。やはりいつまでも反抗期をしているのも違うだろう。こんな風に子供っぽく怒っている自分は、品川に釣り合うのか。そんな気は全くしなかった。その品川とも今は全く会えず、連絡も途絶えている事も情けなさい。サエによると、品川は発達障害の疑惑もあるが、それもよく分からない。


「それにしても茜の許嫁ってどんな男なの?


 なぜか真希はそこに興味があるらしい。身を乗り出して聞いてきた。


「こんな人だよ」


 茜は細川が活動している反ワクチンの活動のチラシをカバンから取り出す。そこにも細川の顔写真が載っていたはずだった。


「わお、イケメンじゃん。正直、品川くんよりイケメンじゃない?」

「そう見える?」


 茜の目には、どう見ても品川の方がイケメンなのだが。確かに黒髪で清潔感がある細川は一般的にはイケメンかもしれないが、あの鳥のような派手な頭の品川の方がカッコよく見える。


「しかも細川さん、東北の田舎に土地も持っていて、そこで自給自足するとか言ってた」

「土地持ち? ハイスペじゃん?」

「そうみたい。株でも儲けたみたいで資産も三億円あるとか」

「何それ! 素直に許嫁になった方がいいよ!」


 真希は他人事だと思い、やたらと細川との仲をプッシュしてきた。


「やだよー。東北はいいところだと思うけど、自給自足は勘弁して欲しい。向こう行ったら鶏や豚も自分で育てるらしい」

「別に良くない?」

「家畜は自分の手で殺すんだよ。良くないよ。そこまで自然派に染まりたくない。勘弁してって感じ」


 もはや茜は涙目だった。これ以上母の過激な自然派思想に巻き込まれたら、人生も滅茶滅茶になりそうで恐ろしい。


「そうだ。だったら、品川くんに会いに行かない? 私、品川くんの住んでるマンション調べたし」

「え、本当なの?」

「これでも顔が広いからね」


 真希はスマートフォンをいじりながら、子供のような目を見せていた。


「品川くんに会えったらいいんじゃない? 会えば何か解決するんじゃ?」

「する?」


 その理屈はよくわからないが、会えるのなら品川の顔を少しでみたい。


「でも菅谷先生によると、今は品川くんも体調崩してるらしい。最近寒いし」

「そっか。だったら、お見舞いって事で行こうじゃん。ここでスイーツや冷凍食品でも買って行こうよ」


 真希の提案のノーという理由も思い浮かばなかった。さっそくイートインスペースを出て、コンビニのチルドコーナーへ行こうとすたところ、偶然タケルにも会う。


「前ら、何やってるんだ?」


 タケルは嫌がらせの手紙を送っていた頃と違い、前髪も短く切り、肌も綺麗になっていた。清潔感が上がっていた。今はさほど陰キャにも見えない。カフェでバイトするようになり、少し大人になったようだ。


「これから品川くんの家へお見舞い行くつもり」


 茜はタケルに事情を説明した。


「うん、品川くん風邪ひいてるってさ」


 真希もコンビニの籠を持ちながら言う。


「だったら俺も行こうかね。どうせバイト休みで暇だし」


 嫌がらせをしたかと思えば、反ワクチン思想にあっけなく取り込まれたタケルは苦手だ。それでも大勢で行った方が良いかもしれない。一人だったら緊張して絶対無理だろう。やはり大勢で行ったほうが良いだろう。


 こうしてタケルも含めて三人で品川の家にお見舞いに行くことになった。手土産にコンビニのプリンやパフェ、冷凍食品の鍋焼きうどんを買った。これはアルミの鍋に入っており、火にかけるだけで簡単にできるという。何分か煮込む必要があるので、レンジよりは手間がかかるが、具がたくさん入っていて美味しそうだ。


「じゃあ、みんなで品川くんちへGO!」


 天真爛漫な真希が宣言し、三人へ品川の家に向かった。


 みんなで行くから緊張はしないだろう。それでも久々に見る品川の顔を想像していたら、親や細川の事などどうでも良くなってきた。


 早く品川に会いたい。今の茜の願いは、これだけだった。


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