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団欒にて

 御馳走様でした。と二人揃って手を合わせ、白夜さんが用意してくれた茶葉で食後のティータイムと洒落込む。

 淹れ立てはそれなりに熱いので、適度に冷ましてから湯呑に口を付けると、緑茶特有の爽やかな苦みが舌と喉を程良く潤した。口内に優しく染み渡る温もりに、ほっこりと頬が緩む。


「……ああ、そうだ。澪、悼吏との話し合いはどうだった?夢世界で何かしらの進展はあったか?」

「ん゛っ……!?」


 最初の一杯を飲み終えた辺りで、急須に新たな湯を注いでいた白夜さんが唐突に話を振ってきた。

 突拍子無く夢世界での出来事、それも昨夜話したばかりの相手の名前が出てきて、飲んだばかりのお茶を盛大に詰まらせる。辛うじて噴き出すのは堪えたものの、一部が気管に入り込んで堪らずゲホゲホと盛大に咳き込む。


「な、んで、っ、」


 悼吏さんの事知ってるの、と言い切るより先に、烏梅さんの手が静かに背中に添えられた。顔は見えないけど、端整な面差しを呆れたように歪めているのが気配で分かった。


「白夜、澪を怯えさせるような真似をするんじゃない。……澪、大丈夫だ、落ち着いて。そう、楽になるまでしっかり咳をして……」


 烏梅さんの優しい声音と、背中を(さす)り、時折軽く叩く大きい掌から伝わってくる体温のお陰で、徐々に落ち着きを取り戻した。まだ少し息苦しいけど、もう噎せ込んだりはしないだろう。

 申し訳なさそうに手拭いを差し出す白夜さんに礼を述べつつ、改めて白夜さんに問い質した。


「白夜さん、どうして悼吏さんの事知ってるの?それに、夢世界での話も……」

「今朝方その悼吏に報告を受けたんだよ。捜索を依頼した時からやけに君の事を気に掛けてたもんだから、何かしら俺らに言えない事情があるんじゃないかと思ってな。昨晩烏梅と話し合って、悼吏に夢渡りの使用と、君への面会許可を出したんだ。悼吏とは数年前からの付き合いだし、信用出来る男だってのは解ってたが……それでも、当事者たる君に断りなく進めたのはすまないと思ってる。悪かった」

「いや、それは全然良いんだけど……」

「……私は最後まで反対していたがな」

 

 真摯な様子で頭を下げる白夜さんに納得する私とは裏腹に、烏梅さんは若干……いや、大分不満そうに溜め息を吐いている。どうも私が眠っていた間に色々とやり取りがあったらしい。


 夢渡りは、術者の力量や使い方次第によっては相手側の精神に悪影響を及ぼす可能性もある危険な代物らしいから、烏梅さんが許可を渋ったのも無理は無い。でも、結果として夢渡りの許可を出したという事は、悼吏さんが私に危害を加えるような真似をしないと信じたって事だ。

 随分前から付き合いのあったらしい白夜さんはともかく、厭世というか、人嫌いのきらいがある烏梅さんにしては相当珍しい。


「で?どうだったんだ?君の今後の生活について話したってのは聞いたんだが」


 白夜さんは興味津々といった様子で身を乗り出してくる。烏梅さんも無言で私の言葉を待っていた。


「えっと……」


 私と悼吏さんがかつてこの世界とは別の次元で生きていた転生者というもので、この世界が乙女ゲームという創作物に酷似している、なんて事実を正直に話すのは流石に無理だ。この二人が私の話を頭ごなしに否定するとは思わないけど、だからといって直ぐに受け入れられる可能性は低い。


 第一根拠も証拠も何一つ無いのだ。下手すれば私の壮大な妄想とも受け取られ兼ねないし、この秘密を現時点で打ち明けるのは結構な抵抗がある。

 でも、比良坂家への養子縁組の件と、招雨ノ禊の事はきちんと伝えておくべきだろう。これがきっかけで保護者に黙って独断で養子に行くって決めちゃった訳だし。


 そうして考える事数秒。夢世界であった事を掻い摘んで二人に話した。


=====


「……そうか……やはり、招雨ノ禊を……」

「うん……イマイチ実感は湧いてないんだけど……」

「だが、悼吏の言う通り、招雨ノ禊を発現させたって事は、この国の皇族・貴族連中にとっては喉から手が出るほど欲する存在になっちまったって事だ。いくら君が烏梅の庇護下にあるといっても、現世に戸籍が無い現状のままでは、人間である君の将来に不都合が出てくるし、安全が保障され続けるとは言い切れない。……その点、悼吏の提案は実に渡りに船だったな。比良坂の人間が後見につくなら、大抵の厄介事からは護って貰える筈」


 「独断で養子縁組の誓約書にサインしたのは褒められた事じゃないがな」と神妙に耳を傾けていた白夜さんが小声で付け加える。咎める眼差しの中にも隠し切れない安堵が滲んでいる辺り、本当に私の事を心配してくれていたんだろう。

 普段から烏梅さんに「(わたし)を甘やかし過ぎだ」って度々注意してるけど、この人も大概私に甘いよね。

最終更新から半年近く経って申し訳ございません……今後も亀更新が続きそうなので、気長に待っていてくださると有難いです……

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