後始末の顛末について
やっっっっっと投稿できました!!
展開が思いつかなさ過ぎて二か月以上空いてしまいました……!
今後も大学の都合で更新は亀の歩み寄りも遅くなってしまいますが、楽しんで頂ければ幸いです……!
烏梅さんの鋭い眼光をサラッと受け流し、私が食べてる量の四、五倍はありそうな山盛りの朝食(人並外れた立派な体格というのもあってか、烏梅さんはかなりの健啖家だ)をサーブした白夜さんが「そういえば」と徐に口を開いた。
「玄関先に、お前宛の詫びの品が大量に届いてたんだが」
「要らん。送り返せ。もしくは焼き捨てろ」
「即答かよ」
白夜さんが言い終わる前に、額に薄っすら青筋を立てた烏梅さんがバッサリ斬り捨てる。寝惚けてる割には返事早かったな。
そう気楽に構えて朝食を頬張る私の頭上で、二人は静かに舌戦を繰り広げ始めた。
「せめて中身確認してから判断したらどうだ。隠世の八部衆御用達の絹織物とか、対魔組織の財政支援やってる家で作られた霊具とかもあったぞ」
「知るか。澪に手を出そうとした愚物共が寄こした物なぞ信用ならん」
「気持ちは分からんでも無いが、関係者は全員然るべき処罰を受けたんだから良いだろ。パッと見怪しい術や気配は感じなかったし、そもそも詫びの品に呪詛を込めるなんて馬鹿な真似する奴居ねえよ」
「どうだか。彼奴等は私を謀ろうとした挙げ句、何の責も無いこの子を害そうとしたではないか。二度ある事は三度あると言うし、詫びの品に何も仕掛けていないと疑わない方が難しい」
「それも一理あるが、素直に受け取ったって損は無い筈だぞ。伝令の魔笛や破邪の水晶を使った数珠なんかは、澪の護身用にでも……」
「断固として拒否する。あんな愚物共の手垢に塗れた品を近付けでもしたら、澪が穢れる」
相手が相手とはいえ、ヒッデェ言い草である。被害に遭った本人よりもブチ切れてるし。
ザクザクと厚切りのトーストを豪快かつ上品に咀嚼しつつも、据わった目で睨め付け続ける烏梅さんに、白夜さんは片手で目元を覆って大きな溜め息を吐いた。
「……お前……澪が絡むと本当面倒臭くなるっつーか……凄ぇ狭量になるよな……」
「何とでも言え。私は絶対に受け取らない。この子を害する可能性があるモノは、一つたりとて許さん」
「分かった、分かった。品物は俺が全部送り返しとくから、その物騒な気配は仕舞え。澪もまだ飯食ってんだから」
「む……」
トン、と烏梅さんの眉間を長く白い人差し指で軽く小突き、白夜さんが窘める。烏梅さんは不満げに眉根を寄せつつも、大人しく滲ませていた妖気を引っ込め、朝食に意識を戻した。
その様を見届けてやれやれと肩を竦めると、白夜さんは何とも言えない複雑な面持ちで私に話しかけてきた。烏梅さんに気取られないよう、ぽそぽそと小声で。
「……澪……君には苦労を掛けるな……こんな過保護で偏屈で理不尽の権化みたいな男が保護者で……此奴の後見人で、君の子育てを手助けしてきた俺が言う事じゃないだろうが……」
「……まあ、今に始まった事じゃないし……それだけ烏梅さんが私を大切に思ってくれてるって事でもあるから……」
前世の記憶があるとはいえ、今の私は七歳の子供。中身はそれなりに成熟していても、一人で出来る事はまだまだ少ないし、保護者である烏梅さんの存在は必要不可欠。
それに、今世は生後直ぐに捨てられた挙句凍雨に降られて死にかけたのだ。今私がこうして生きていられるのは、拾って愛情深く育ててくれた烏梅さんのお陰と言っても過言じゃない。
愛情の匙加減が両極端過ぎるのが玉に瑕だけど、そこら辺は二千年以上生きてる人外だから仕方ない部分も大いにあると思う。私に害がある訳じゃないしね。
「……君って子は……まだそんな幼いってのに、驚く程寛容と言うか……健気だなぁ……」
「……?」
苦笑めいた声音で呟く白夜さんに思わず小首を傾げる。そんなに変な事言っただろうか。
疑問符を頭上で乱舞させる私に「いや、こっちの話だ。気にするな」と緩く首を振ると、瑠璃と琥珀、左右で色彩の異なる双眸をゆるりと細め、私の頭を労るように撫でてくれた。
「まあ、何だ。烏梅との関係で今後何か困った事があれば、どんなに些細な事柄でも遠慮なく言ってくれよ。出来る限りは、力になるから」
「……うん。ありがとう、白夜さん」
穏やかに念押ししてくる白夜さんを不思議に思うも、純粋な心配と気遣いの言葉は嬉しかったので、素直に頷いておいた。
隣で黙々と朝食を食べ進める烏梅さんは、このやり取りにとっくに気付いていた筈だけど、特に何も言わなかった。




