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本当にあったら怖い話

作者: 神村 律子

 そろそろ季節も穏やかになり、そろそろ怖い話も下火になり始めました今日この頃です。


 本当の「通」は今の時期から怖い話です。




 そんな事はないかも知れませんが、怖い話を一つご披露致しましょう。




 ある町に、若い男が住んでいました。


 その男は、自他ともに認める美男子で、同年代はおろか親世代にまでモテモテの存在でした。


 そんな訳で、彼は自分に自信があり、自分の誘いを断わる女性など存在しないと思っていました。


 現実に彼の誘いを断わる女性はいませんでしたし、これからも現れるとは考えられませんでした。


 


 ところがです。


 彼の誘いを断わった女性が現れたのです。


 しかもその女性は、町でも評判の所謂「ブサイク」でした。


 彼女は、


「きっと冗談」


と思い、男の誘いを断わったのです。


 しかも、騙されていると思い込んでいたので、結構酷い断わり方をしました。


「あんたなんか、自分で思っている程いい男じゃないわ。私には、隣の町にもっとカッコいい彼がいるのよ」


と嘘をついたのです。


 町一番と自惚れていた男は酷く傷つき、彼女の前から立ち去りました。


 するとそれを知った町中の女性達が大挙してそのブサイクな女性の家に押し掛けました。


「あんたみたいなブサイクに断わる権利なんかない。死んでしまえ」


 彼女達は辛辣な言葉を浴びせかけました。


 そのブサイクな女性は、集団の恐怖を感じ、自殺してしまいました。


 彼女が本当に死んでしまった事を知った人達は驚愕して、その場から逃げ去りました。



 一方、男の方は、隣町で一番の美男子を探しました。


 彼は探し出した男が、自分より劣ると知り、安心して自分の住む町に戻り、自分を振った女性にその事を告げてやろうと彼女の家に行きました。


 そして彼女が死んでいるのを見つけました。


 彼は腰が抜けそうなくらい驚きました。


 そして彼はどうして彼女が自殺をしたのか遺書で知りました。


 彼女が本当は誘われて嬉しかったのに、自分に自信がないために断わってしまった事。


 そしてその事で彼を傷つけてしまった事。


 更にそのためにたくさんの女性達の怒りを買ってしまった事。


 彼女は彼に詫びていました。


 ごめんなさいと。


 彼は自分が今まで女性達にして来た事の業の深さを思い知りました。


 そして彼は、自殺した女性のために、復讐を始めたのです。


 彼女を死に追いやった全ての人間を殺す事。


 彼がこれから生きて行く理由の全てがそれでした。




 やがて彼は街中の女性を殺しました。


 でも復讐は完成していません。


 何故ならまだ事件の張本人が生きているからです。


 彼はその張本人である自分自身の首をナイフで突き刺し、息絶えました。




 こうして稀に見る連続殺人事件は幕を閉じました。




 それから50年。


 また町には女性を見ると声をかける町一番の美男子が現れました。




 歴史は繰り返す。


 これほど恐ろしい事はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] このお話は怖いというより切ないお話ですね。 昔話形式にしてもよかったような気がします。 村一番のいい男と村娘とのお話みたいな。 教訓めいたことも盛り込めるし。 素敵な時間をありがとうござい…
2011/04/17 18:17 退会済み
管理
[一言] はじめまして。 みずみと申します。 これ、怖かったです。 短いのに、言わんとする事がひしひしと伝わる、不思議な文章でした。 あー、オソロシイ。
[一言] 津山の事件を思い出しました。 このブサイクなヒロインが好きです。
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