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第32章 正体発覚  

 31章の後、作者の違う小説を間違えて、こちらに投稿してしまいました。驚かれた方もいらっしゃると思います。申し訳ありませんでした。

 

 しかしながら、できればその別の方の小説「花男爵と枯れ木令嬢の婚約」も読んで頂けると嬉しいです」

 よろしくお願いします!




 前国王陛下はなんと、私がコールドン侯爵家のミモザで、従姉のバーバラと入れ替わったことをご存知だった。

 お父様かエドモンド様が話したのかと一瞬思ったのだが、二人とも驚愕の表情をしていたので違うのだろう。一体誰が? 影の皆さん?

 しかも侍女姿の私の正体までもばれていた。

 

 

「そんなに驚くことはない。私と前コールドン侯爵のハリスツイードは親友だったんだ。

 会えばいつも家族の話をしてたんだよ」

 

 最初に対面した際、お母様に続いてカーテシーをしようとした私は、自分が侍女の振りをしていることを思い出して慌てて頭だけを下げたのだ。

 

 しかし正体がバレていると知り、私は改めてカーテシーをした。

 

「さすがローズリィーが躾けただけあるわね、見事なカーテシーですこと。

 ミモザ嬢、セーラ嬢、どちらでお呼びすればいいのかしら?」

 

 ローズリィーとは亡くなった育ての親でもある祖母の名前である。

 

 私は冷や汗をかきながら小さな声で

 

「セーラでお願い致します」


 と王太后陛下に答えた。私はミモザという祖母の付けてくれた名前が大好きだ。しかし、あの人達との縁を切る時、自ら捨てたのだ。

 だからそれを未練がましく使ってはいけないと思った。私はセーラとして生きることを決めたのだから。

 

「そう……それは残念だわ。ローズリィーはミモザの花が大好きだったから、貴女に会った時は是非私もその名を呼びたいと思っていたのだけれど。

 でも、セーラというセカンドネームもローズリィーが考えたのだから、どちらでもいいのかもね。

 あの人達に邪魔をされて今まで会わせてもらえなかったけれど、こうしてお会いできて嬉しいわ」

 

 王太后陛下は亡き祖母によく似た慈愛の籠もった瞳をしてそう言って下さったのだった。そしてこう続けられた。

 

「去年のエドの誕生日パーティーの時はようやく会えるとそれはそれは楽しみにしていたのに、会ったのは別人で酷くがっかりしたものだから」

 

「その節は誠に申し訳ありませんでした」

 

 従姉のバーバラと入れ替わり、高位貴族の令嬢としての義務を放棄した罪の重さを、今更ながら思い知り、その不敬過ぎる行為に震えが来た。

 

 しかし王太后陛下はその事を叱るでも不機嫌になることもなく、楽しげにこう仰ったのだった。

 

「でもできるなら、次に会う時は素顔を見せて頂戴ね」

 

 と。

 

 

 前国王陛下と王太后陛下は、亡くなった祖父母から私の話をよく聞いていたのだそうだ。

 だからエドモンド様の十二歳の誕生日パーティーの時に、コールドン侯爵夫人である実の母から、娘だと偽ミモザを紹介された時、すぐにお二人はおかしいと勘付いたそうだ。

 そして何故姪である子爵家の娘を実の娘として紹介しているのだろうと疑問に思ったという。

 

 陛下の説明にエドモンド殿下の目が点になった。

 

「お祖父様もあのパーティーにいらっしゃったのですか? 全然気付きませんでした」


「ああ。私は給仕に変装していたからな」

 

「「「給仕……」」」

 

 殿下と私達家族は絶句した。

 

「あの令嬢を見てすぐにハリスツイードが愚痴っていた方の孫娘だとわかったよ。なにせ不出来な長男に見た目も態度もそっくりだったからな。

 次男の娘は実の親より伯父に似ていて、長男の娘の方は父よりも祖父である自分に似ている、とハリスツイードが言っていたんだよ。

 

 エドがあの令嬢に言い寄られて血の気が引いていたので、助けに入ろうとしていたら突然失神したので、さすがの私も驚いたぞ。また毒でも飲まされたのかと。

 しかも若作りをしていたので、私が君を背負う羽目になって、そりゃもう大変だった。

 まさかあの年で孫をおんぶするとは思ってもみなかったわ」

 

 前国王陛下は愉快そうに笑ったが、エドモンド様は真っ青になっていた。そりゃあそうだろう。十二にもなって祖父に背負われたなんて。

 ただし陛下は五十代半ばでまだまだお若いので、孫をおんぶするなんて大した事はなさそうだが。毎日鍛えていらっしゃるようだし。

 

「全くもって呆れましたよ。給仕に変装するにしたって、あんなにも若作りするなんて、恥ずかしいったらありゃしなかったわ」

 

 王太后陛下がジト目で自分の夫を見ながら、扇子の下からそう呟いていた。孫の婚約者候補を探す為のパーティーなのだから、当然王太后陛下もその席にいらしたのだろう。

 それは確かに驚かれたに違いない。

 

 それにしてもお二人は私達の入れ替わりを知っていながら、何故それをお咎めにならなかったのだろうか。

 私はまだ動悸が治まらない中でそう思った時、陛下が再び口を開かれた。

 

「私とハリスツイードは奴が王都にいる時はよく会って話をしていたんだ。その話の内容の半分は国政についてだったが、残りは家族の自慢と愚痴だった。

 何せ悩みが似ていたからな」

 

「陛下と祖父の悩みが似ていたのですか?」

 

「そうだよ、フランシス君。

 お互いの長男の出来が悪いこと、もし可能ならば優秀で人格が良い次男に後を継がせたいのに、そう簡単ではないということも。

 それと、孫の出来不出来が大きいことだな」


「「「・・・・・」」」

 

 確かに似ているところが多い気がすると私も思ったが、内心複雑だった。父と叔父(現在の父)、現国王陛下と王弟殿下はその通りなのだが、孫のこととなると似ているかというと微妙だ。

 コールドン家の方は優秀なフランお兄様以外の三人は、私を含めかなり問題有り人間だ。

 

 しかし、王家の方は別段問題があるとは思えなかった。現国王陛下の二人のご子息であるエドモンド様とチャーリー殿下は、どちらももちろん優秀で人格的にも素晴らしい。

 

 そして王弟殿下の三人のお子様の方はどうかというと、これまた皆様大変美しく人柄も良い。

 巻き戻る前は特に親しくしてもらったわけではないが、普通に接してもらっていた。王弟殿下も妃殿下も良識のある立派な方々だったから、教育もきちんとされていたし。

 

 あえて言うなら、お二人の王女様はともかく、唯一の王子様は平々凡々というか、頼りなさげで気弱な性格だと思っていたくらいだ。

 

「ハリスツイードは、次男であるアンドリュー君と孫のフランシス君を信頼していた。

 だから私も正直な気持ちを吐露していた。本当は長男を王太子にはしたくなかったと。

 以前私は何かしら粗を見付けて、長男を廃して次男を王太子にしようと考えたことさえあったのだ。

 しかし、ハリスツイードから忠告を受けたのだよ。最終的に後継者を決めるのは孫の成長をある程度見極めてからの方が良いと。

 どんなに精魂込めて教育を施しても、持って生まれた素質は変えられない。それが目を瞑れる程度の問題ならばよいが、そうでなかった場合、国家存亡の危機に陥らせる恐れがある。

 だから後継者の決定は慎重にしなければならないとね」

 

 なるほど。国王とは目先のことだけでなく、長い目で国の先行きを俯瞰視点で見定めないといけないのね。

 そんな孤独で厳しいお役目をこなしていた前国王陛下にとって、忌憚のない意見を言ってくれるお祖父様の存在は、心の拠り所だったのだろう。

 しかも悩みが似ていて愚痴を言い合えたのなら尚更だ。愚痴の種だったろう私としては胸中複雑だったけれど。

 

 読んで下さってありかとうございました!

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