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【電子書籍化】婚約破棄された地味顔令嬢は初恋の病弱子息と幸せになる~実は王太子だったなんて聞いてません~  作者: 悠木 源基


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第26章 逮捕劇〜エドモンド王子視点(5)〜


 一年前、僕の十二歳の誕生日を祝うガーデンパーティーが王宮で開かれた。

 そこには僕と割と年の近い伯爵家以上のご令息とご令嬢が招待されていた。つまり彼らは将来の王太子妃候補と王太子の側近候補であった。

 

 下馬評では側近はカーネリアン公爵令息ルイードとコールドン侯爵令息レックス。王太子妃候補の筆頭はコールドン侯爵令嬢のミモザの名が挙げられていた。

 公爵家の中で年頃の合う令嬢はカーネリアン公爵家のエメランタ嬢しかおらず、しかもその公女様は病弱で屋敷から出られないために対象外と見なされていた。

 そのために国王派の旗頭でもある、コールドン侯爵のご令嬢であるミモザの名が浮上したのである。しかも彼女は、賢人と名高かった前侯爵が育てた優秀なご令嬢と評判が高かったのだ。

 もちろんその噂は前回と同様に、僕が祖父である前国王にお願いして流してもらったものだった。実際それは嘘ではなく本当のことだったし。

 

 僕は巻き戻ってからずっと、彼女を死なせてしまった罪悪感に苦しんでいた。それでも僕はミモザに再び逢える日を心待ちにしていた。

 同じ(てつ)は決して踏まないと固く決心して、色々と準備をしつつ。


 ところが・・・・・

 

 なんと誕生日パーティーに現れたミモザはかつて僕が愛した婚約者ではなく、憎んでも憎み足りない相手である、彼女の従姉のバーバラだった。

 

 あまりの衝撃に僕は気を失った。

 そしてその後僕が目を醒ましたのは、なんと王宮の喧騒の中だった。

 どうやら僕が突然倒れたので、僕がまた何者かに毒を盛られたのではないかと大騒ぎになっていたらしい。

 その時僕は眠った振りをしながらも、やがて冷静さを取り戻した頭でこう考えていた。この事態を上手く利用しようと。

 

 僕はまず影に人払いを命じると、手紙を(したた)めてそれを祖父である、前国王陛下に秘密裏に届けるようにと指示をした。

 するとそれを受け取った前国王が電光石火の早業で行動を起こした。そして前々から僕を廃して弟を擁しようとしていた多くの貴族達を、一斉に捕らえて投獄したのだ。

 

 何故そんなことが可能だったのかというと、第一王子である僕の暗殺計画書やら、それに使用しようと準備していた毒という明確な証拠品が次々と出てきたからである。

 そう。巻き戻る前の人生において僕は、幼少期から何度となく毒を飲まされていた。

 その時点では犯人を捕まえられなかったのだが、ミモザの死後に国王派を一掃した時、そいつらの様々な悪行を全て明らかにしたのだ。

 だからあいつらの証拠品となる物の保管場所を、当然僕は把握していたのだ。

 

 今回僕が倒れたのは毒のせいではなかったが、これまで僕を毒殺しようと企んでいた奴らはたくさんいたのだ。そしてそんな奴らを放っておけば、懲りずにまたそれを繰り返すことだろう。だから今度こそそれを未然に防ぐことにしたのだ。

 このことにより、僕は国王派の貴族の半数以上を断罪し、消滅させたのだった。

 

国王派を一網打尽にした情報の出処は、僕の過去の経験だったわけだが、当然ながら祖父に本当のことは言えなかった。

 だから、何度も毒を飲まされていたので、影に命じてずっと調査をしてきたその結果なのだと話した。

 この僕の説明に対して祖父は、何か思うところはあったようだが、それでもそれを追求してくることはなかった。


 国王派の貴族の断罪が進められていた中、僕はミモザのことばかり考えていた。

 コールドン子爵令嬢であるバーバラが、あの場に侯爵家のミモザとして現れたということは、本当のミモザは子爵家にいるのだろうかと。

 彼女達は入れ替わっているのか?

 もしかしたらバーバラ達が本物のミモザを殺して、なりすましたとも考えられなくもないが、いくら非道な侯爵だって、自分の実の娘に対してそこまで無慈悲な真似はしないだろう……

 それにもしそんなことをしていたら、あの勇猛果敢で情の深いコールドン子爵が黙っているはずはないだろうし。

 

 僕はそれを信じたかった。

 

 不安を払拭したくて影を使って調べてみると、確かに子爵家にもご令嬢がちゃんと存在していることが確認できた。

 僕は少しだけホッとした。そしてそれとともに確信したのだ。

 ミモザも人生を巻き戻っているに違いないと。だからこそバーバラと入れ替わって自分の運命を変えようとしているのだと。

 

 僕は無性にミモザに会いたくなった。そして今度こそ彼女に寄り添い、共に人生を歩んで行きたいと願った。

 そしてそのために僕は動いた。

 この断罪劇が繰り広げられている間も、僕は眠らずにせっせと今後の計画を練っていた。

 そのせいで食事もあまり取れず、寝不足になって体重が落ち、顔色が悪くなった。

 それ故に態々(わざわざ)毒を盛られたように振る舞わずとも、まるで僕は病人のようになっていった。

 

 もっとも途中で影達に酷く心配をされたので、僕は健康的な生活に戻し、メイキャップで病人の振りをし続けたのだが。

 何故そんな真似をしたのかというと、僕がすぐに元気になったら再びパーティーを催されて、あのミモザの振りをしているバーバラと婚約させられてしまう恐れがあったからだ。

 

 この最初の逮捕劇ではコールドン侯爵は逮捕されなかった。それは(あらかじ)めわかっていたことだ。

 この頃、コールドン侯爵はまだ目立つような犯罪には手を染めてはいなかったのだ。

 そもそも最初の人生では僕の立太子がほぼ決定されたことで国王派の気勢がそがれ、彼はその巻き返しのために取締りが厳しくなった毒ではなくて、隣国の麻薬に目を付けたのだから。

 

 国王夫妻は、多くの国王派が失脚したことで、今後より一層コールドン侯爵を頼ろうとすることは明白だ。

 そして彼と絆を深めるためにも、僕と偽ミモザを婚約させようとするだろうが、冗談ではない。絶対に嫌だ。もちろん、それは祖父である前国王も同意見だった。

 

 だから僕は名誉の撤退をすることにした。つまり先を見据えて、戦わずに逃げる作戦に出たのだ。この現状では逃げるが勝ちだと。

 

 第一王子である僕は毒による後遺症で体調を崩し、王宮の奥深くで療養生活に入ると発表された。しかも回復の見通しは当分立たないだろうと。

 すると間もなくして、第二王子の後継者教育が開始されたという噂が流れ始めた。

 このことで貴族社会の中では、いずれ第二王子が王太子になるのではないかとの憶測が囁かれるようになった。

 

 すると、自分の娘を第一王子の婚約者にしたいと希望していた高位貴族が激減した。

 いくら第一王子だろうと弟が国王になれば、その立場が微妙になることは想像に難くないからだ。そんな僕より、よっぽど力のある高位貴族の嫡男と縁を結んだ方が得策だと皆

考え始めたのだろう。

 

 当然その中にはコールドン侯爵家も含まれていた。

 そしてバーバラはまだ十三歳だというのに、あちらこちらの高位貴族のご令息に、愛想を振りまくようになったのだった。

 

 

 ✽

 

 

 僕が王宮の奥深い所でずっと寝ている振りをしていると、僕の体を気遣って、前国王である祖父と王太后である祖母がしばしば見舞いに来てくれた。

 祖父の方は僕が本当は毒を飲まされていなかったことを知ってはいた。それでも体調を崩しているのがまさか嘘だとは思ってはいなかったので、僕のことをとても心配してくれていたのだ。

 僕は心が読まれないように、伏し目がちにして、なるべく視線を合わせないようにしていた。自ら体調を悪くしていた僕は、祖父母に嘘をつき、心配をかけていることが本当に申し訳なくて心苦しかった。

 

 それでも、僕が巻き戻って二度目の人生を生きているということは、彼らには教えることができなかった。

 多くの人にこの事実を知られてしまったら、世界がどう改編されてしまうのか全く想像がつかないからだ。

 事態がどう展開していくのか全く予想がつかないこの現状で、迂闊に人に話すことは良くないのではないか、そう考えたのだ。

 それにミモザが実際に自分同様に巻き戻っているのかどうか、まだわからない状態だったので、慎重に行動をしなければならないと僕は思ったのだった。

 

 読んで下さってありがとうございました!

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