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第1章 婚約破棄

 平凡地味顔だと馬鹿にされていたヒロインが、少し磨かれると凄く美人になった…という話は多いと思うのですが、この話のヒロインは心美人ですが、素顔は本当に地味です。

 しかし、ヒーローにとってはとびきりの美人に見えるので何の問題もないはずなのに、周りがそれを許してくれません。そのせいで二人は一度は引き裂かれ辛い思いをするのですが、二人の強い思いが運命を変える! かな?

 

 シリアスな話ですが読んで頂けると嬉しいです。ハッピーエンドです。

 作者は微ざまぁ専門なので、怖いざまぁは無いと思います!

   ↑

(完結したら、予定とは違って、珍しく完全?なザマァになってしまいました!)


「ミモザ=コールドン侯爵令嬢、この場においてそなたと王太子との婚約を破棄する。

 華やかさにかけるそなたでは、将来この誇り高いアースレア王国の顔となる王妃になるには、あまりにも相応しくないからである。

 しかも女だてらに余計なことばかり口を挟み、生意気で思い上がっており、(はなは)だ遺憾だ。

 今後一切王宮への出入りを禁じる」



 低音の重々しい声が夜会のホール内に響き渡った。

 一瞬静まり返ったが、すぐさままた賑やかさが戻った。そしてその場にいた者達は全員、侯爵令嬢を見ながらコソコソと話し始めた。

 

「とうとう破棄されましたね。いつなのだろうと思ってはいましたが。

 今日この夜会に参加して良かったですわ。こんな場面に立ち合えるなんて」

 

「本当ですわね。でも婚約して既に五、六年は経つでしょ。長かったわね。もっと早く破棄されると思っていたけれど」


「ほら、コールドン侯爵ご夫妻もご嫡男のレックス卿もそれはそれはお美しい方々だから、成長すればもしやと期待されたのではないですか?」

 

「なんでも父の話ですと、ミモザ嬢は先代の侯爵様に瓜二つだそうですから、変わるわけがありませんのにね」

 

「けして不細工ではありませんが、薄茶色のストレートヘアーに薄茶色の瞳、華やかさの一切ない凡庸なお顔立ちですわよね。あの方が人混みに紛れたら探し出すのが大変そうですわね」

 

「でも、ミモザ嬢は頭も性格も大変良くて、努力家だと聞いておりますからお気の毒ですわね」

 

「容姿が地味だからこそ勉強を頑張られたのでしょうが、女はいくら頭が良くても、生意気だと男性の方々に嫌われるだけですのに。無駄な努力をなさって本当にお気の毒」

 

 少しも気の毒だとは思っていない嘘っぽい口調で、令嬢達がこう囁き合っていた。

 

 

 

 呆然自失していた私は、少し間を置いてからようやく我に返り、真正面に立っていた金髪碧眼の麗しい尊顔の若い男性に向かってこう尋ねた。

 

「どうしてですか? 一緒に助け合って行こう、この国のために力を合わせようと仰って下さったのは貴方ではないですか? それなのに何故?」

 

 しかしその男性は、美し過ぎる精巧な人形のように無表情な顔のまま、生気の無い瞳で私を見下ろしたまま何も答えない。

 すると彼の腕に絡み付いて傍に立っていた、エメラルドの瞳にプラチナブロンドの巻き毛をした華やかな令嬢がこう言った。

 

「だからぁ~。貴女じゃ殿下の助けにはならないということですよ。何故今までそれに貴女が気付かなかったのか、そっちの方が不思議だわ。

 子供の頃から頭が良いと言われてきたけれど、それはきっとみんなの勘違いよね。自分が王太子妃には相応しくないってことがわからないなんて。

 貴女みたいな地味顔じゃ、他国からの来賓の方々がお見えになっても、恥ずかしくてとても顔なんか出せないでしょう? 

 やはり見目麗しい殿下の隣には私が似合っていると、国王陛下や王妃様にも言われましたのよ」

 

 コールドン子爵令嬢バーバラが勝ち誇ったように胸を張って言った。

 

「バーバラ、貴女が殿下の新しい婚約者なの? でも貴女は……」

 

「子爵令嬢だから釣り合わないとでも言いたいの?」

 

「違う……」

 

 バーバラの身分がどうのこうの言うつもりは無い。ただ王妃の素質があるかどうかが問題なのだ。

 彼女は淑女としての教養やマナーがなっていないのだ。それにお妃教育も受けていないのに、大丈夫なのか? ただでさえ勉強嫌いだというのに。


 ああ、今の王妃殿下でも取り敢えず王妃の地位でいられるのだから、バーバラでも大丈夫だとでも陛下達は考えているのかしら?

 でも今どうにかなっているのは、前国王陛下ご夫妻や優秀な側妃殿下がいらっしゃるからなのだと、何故周りの方々は気付かないのだろうか。


 現在この国の内政を担っているのは、表面上国王夫妻と愚かな貴族達ばかりで、とても危うい状態なのだ。高齢の前国王陛下ご夫妻にもしものことがあったらすぐに崩壊してしまうだろう。

だからこそ早く二人で改革しよう……そう言っていたのは王太子殿下の方だった。それなのに、どうして?

 もう改革を諦めてしまったということ? 

私のことが嫌いになったの? 

それとも本当にバーバラを愛してしまったということなの?

 

 

「私ね、コールドン侯爵家の養女になったのよ。元々伯父様からは実の娘のように可愛がられていたしね。だからもう身分の問題はないのよ。

 ああ、問題があるとしたら、私の妹になる貴女が不細工なことくらいかしら?」

 

 なるほど。養女ね。確かに父は実の娘よりもバーバラをかわいがっていたわね。バーバラの方が私よりずっと父に似て美しいから。

 それに政略のために利用するのなら、確かに私よりバーバラの方が価値はあるわね。

 だって私は実家のための働き掛けなんて、王家にするつもりはないもの。

それにうちの家族にとって、領地経営や屋敷の切り盛りをすることは、何の価値もないことだったみたいだから。


 そうか、両親がバーバラを王太子殿下に近付けたのか。

 でも、それならもっと早くに殿下の婚約者の立場をバーバラと交換して欲しかった。そうすれば皆さんが仰る通り、私は無駄な努力をする必要なんてなかったのに。

 こんなに殿下を愛することもなかったのに。

 尽くした挙句に裏切られ、こんなに悲しく辛い思いをしなくても済んだのに……

 

 涙が溢れて止まらなかった。

 もう目の前の二人の姿は霞んで見えなくなっていて、彼らがどんな顔をしていたのかも私には分からなかった。





 読んで下さってありがとうございました。次章も続けて投稿する予定です!


 誤字脱字報告をして頂けると嬉しいです。目が悪く見直しをしてもなかなか見つけられないことが多いもので。

 いつも報告をして頂き感謝しています。

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