第13話 チャンさん故郷へ帰る
しろちゃん「えーーー!ここのラーメンもう食べられなくなるの?」
おやっさん「お嬢ちゃん、よく来てくれてたからね〜。ごめんだけど、店閉めるしかないんだよ」
シロウ「世間は色々あったけどここは、お客さんもずっとついてたから大丈夫と思ってたのに」
おやっさん「うん、そこは問題なかったんだけどね(笑)正確にはチャンがね、チャンの親がもういい歳なんでそろそろ国に帰らないといけなくなってさ」
シロウ「そういうことだったんですか。でもそればっかりは残念だけど仕方ないですよね」
しろちゃん「おやっさんより弟子のチャンさんのほうがラーメン作るのうまい店だからね」
シロウ「ってストレートに言うな!(笑)」
おやっさん「いや、常連さんみんなそれ言うんだよね(笑)同じ寸胴からスープそそいでるのになんでって」
しろちゃん「チャーハンはまだわかるんだよ?火の通り方で卵のふんわり感が全然違うから」
シロウ「俺は、おやっさんのチャーハンも好きだよ♪」
おやっさん「ありがとうよ♪でも俺にはチャンの味は出せないしね。俺もいい加減、楽させてもらいたい歳にもなったからこの際このタイミングで閉める気になったのよ」
チャン「はい、シロさんは中華そばネ。シロちゃんのほうはバターコーンワカメラーン、あとチャーハンと取皿ネ」
シロウ「ここのラーメンがもう食べられないのはつらいけど、事情を聞いたら止められないよ」
おやっさん「いつもありがとうよ。それでチャンの両親にも挨拶しに行こうとおもっててね。あいつがあの時ここで働きたいって来てくれてなかったら正直ここまでやってこれなかったろうから」
チャン「おやっさんのおかげダヨ(笑)どこにも行くとこなくて、お金もなくて。でもこの店で食べたラーメン美味しかったから教えてもらおうとおもって。今でもあのとき食べたラーメンが自分は一番美味しかったヨ」
しろちゃん「では最後に葉加瀬○郎さんの音色に合わせて、こだわりのスープに対する熱い思いを一言」
おやっさん「こだわらなかったからだよ(笑)そこまでこだわってたら逆に儲からないからね(笑)」
チャンさんは黙って右腕をポンと叩いて【技術の差】だと笑いながら応えた。
シロウとしろちゃんは「長い間お疲れさまでした♪ごちそうさま♪」と言って店をあとにした。
家に帰ると、あんこさんが勝手に部屋に上がってコタツでミカンを食べていた。
あんこ「あー、あそこの店閉めちゃうんだ?」
シロウ「そーなんだよ、もうあそこのラーメンが食べられなくなるのはいろんな意味で寂しいね」
あんこ「そーいう事情なら仕方ないよねぇ。でも私あそこのラーメンの味出せるよ」
しろちゃん「なしてー?」
あんこさん「そもそもあそこの店主、うちのお母さんの弟子だったから。うちが大昔に食堂やってたときラーメンもたまに出してたでしょ?ラーメン屋やるって言ったときはまさかとは思ったらしいんだけど、あとから聞いたらチャーハンのレシピも教えてあげたんだって。だから私のほうがチャンさんに近いかもよ(笑)」
シロウ「へぇ〜。チャンさんが作ったほうが美味しいのも知ってたか(笑)あーでもそれで、はじめて行ったときに昔どこかで食べたような懐かしい味だとおもったのか、なるほどなぁ」
しろちゃん「じゃあこれからは毎日、あのラーメン食べられるじゃん♪」
あんこ「毎日?(笑)別にいいけど、しろちゃんまたふくよかになってもいいのかな?」
しろちゃん「えと、やっぱりたまにでいいのでお願いしまーす♪」
こうして今日も、しろちゃんたちは人情味豊かな日常を過ごしたのでした。めでたしめでたし♪