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第114話 John Doe


 午後のとあるカフェにて。しろちゃんと会長の奥様の二人だけという珍しい光景。


しろちゃん「アッハッハッハ!(笑)」


奥様「ゴホン、そんなに面白いことかしら?」


しろちゃん「あのチョビハゲ、いや会長が浮気って(笑)ないないない。そもそも浮気って相手がいないと出来ないもんだよ?どこのモノ好きが、、、」


奥様「それは案外わからないわよ?優しそうとか、お金を持っていそうとか」


しろちゃん「んー、でも奥様にガッチリ握られてるんでしょ?」


奥様「ん、まぁね(笑)」


しろちゃん「てかごめんなさい、会長は確かに良い人だよ♪器がデカいというか、一緒に働いてて怒られたことなんて一度もないし」


奥様「なら、そういう所に好意を持たれることもあるんじゃないかしら?」


しろちゃん「その器におさまったり、うまく合わせたりすることが出来るのは、世界中を見渡しても奥様くらいなんじゃないかな?」


奥様「そう思う?そうね、言われてみればそうかもね(笑)」


しろちゃん「大丈夫、なんかあったら奥様にすぐチクるからさ♪安心してよ(笑)」


奥様「ええ、よろしくね♪」



 一方その頃、会長宅では1枚の写真をジッと見つめる会長の姿が。


会長「シニアン、、、」


 そこへ鳴る一本の電話。


電話の相手「お久しぶりです、教授。いや、今は会長と呼んだほうがよろしいでしょうか?」


会長「もしもし。え、あなた誰ですか?」


電話の相手「ジョンです」


会長「ジョン?確か以前飼っていたうちの犬の名前がジョンですが。もしかしてお盆で帰ってきてたのかしら?」


ジョン「ハハ(笑)声に覚えがないのも無理はありませんよ。今の私はあなたよりも年上になっているのですから」


会長「犬は年のとり方が人より早いもんねぇ。そう、元気にしてるのかい?」


ジョン「いや、誤解させてすみません。まさかそんな身近に偶然の一致があるとは思わなくて(笑)では、シニアン=アンダーソンという人物に心当たりはございませんか?私は彼女をよく知る者です」


会長「誰なんだね、君は?」


ジョン「事故で記憶を無くされたようですが、やはり片隅にその名前は残っているみたいですね」


会長「君も何か知っているみたいですが、それで私に何のようかね?」


ジョン「まず私の話を聞いてください。調べたところ、今の彼女は我々の記憶にある姿ではなく子供になってしまっているようです」


会長「、、、」


ジョン「時間のズレや揺らぎというものはわずかながらにも訪れるようで、幾度となく繰り返してきたかに思うような出来事も都度、姿形を変えるものです。ただ今回ばかりは会うことさえままならなかったのが残念で。私の残りの時間ではそれを叶えることはもう無理のようです。このまま誰の記憶にも残らずに私が迎えるのはいつものループなのか或いは今度こそエンドなのかもわかりません」


会長「ちょっと待って。君の声や話し方、どこかで聞いた覚えがあります」


ジョン「そうですか(笑)私があなたに伝えたい事は、私の死後も私の意志は受け継がれるということ。ただそれも、これからもうすぐ亡くなるという私には確認のしようがないことですがね。なので彼女、シニアンがこの先どうするかを決めるのも彼女の選んだ道だと思って、あなたにそれを託したいのです。それだけを伝えたくて」


会長「ニック!そう君はニックじゃないのかね?」


ジョン「覚えていてくれましたか、さすがは我が恩師」


会長「教え子のことを忘れたりはしませんよ♪で、今どこで何をしてるの?」


ジョン「先ほど申し上げたように私の時間はもうそれほど残されておりません。でも私の意志は死後も彼らが受け継いでくれるでしょう。心残りがあるとすれば、まだ人生が始まったばかりの彼女には私の記憶も存在も確かめようがないということです。あと、もう少し気の利いたモノを贈れたら良かったのかもしれません(笑)では、くれぐれもよろしく頼みましたよ」


 ツーツー。


会長「ふむ」



 【回想 会長の教授時代】


シニアン「ねぇ、あなた暇なんでしょ?だったら手伝ってくれないかしら」


 ニックの前でそう話しかけるのは学年一の落ちこぼれであるシニアンでした。なぜ彼女がこの大学にいられるのか?学内の七不思議に数えられるほどで、教授(会長)の隠し子なのではと噂されたりもしたのでした。ニックの知る彼女は、入学当初とても暗い印象で誰とも話すことも無く、一人だけ違う世界を眺めてるかのようなそんな人物でした。勉学が出来るというわけでもなく、むしろ成績はいつもギリギリといった感じで。でも教授たちからは何故か親しまれており、学部の違う法学部の教授からも呼ばれたりする謎の多い学校生活を送っておりました。


一方、ニックは成績優秀で常に首席だったものの人付き合いがあまり好きではなく、というよりも大概のことは学び尽くしたという感じでもはや大学生活には飽きたというような日々を過ごしておりました。


そんな二人が距離を近づけたのは、彼女の研究を彼が手伝うようになってからのことです。


シニアン「いい?タイムトラベルは〜、他のものもそうだけど答えはいつも1つとは限らないのよ」


ニック「いったい何を言ってるかちょっとよくわからないね(笑)問題に対して答えは1つしかありえない、じゃないと理論が成り立たないよ」


シニアン「それがそうでもないんだけど?あなたはいつかタイムマシンを作れるようになるのかもしれない、でも同じ事が自然現象で偶発的に起こるとしたら?」


ニック「馬鹿げてるよ、そういうのはだいたいデマに過ぎない」


シニアン「でも全てがそうだとは限らないでしょ?なら答えが1つとは限らないってことなのよ」


ニック「何を言いたいんだ?」


シニアン「あなたは勉強が出来すぎるから、頭がカチカチだってこと(笑)世の中が今よりもずっと進歩したその先に、すでに導き出された答えだけを鵜呑みにして盲信する人達で溢れかえると思うわ。今のあなたのようにね(笑)」


 シニアンとニックは端からみて言い争う事もあれば、普段見せないような笑顔で語り合うことも多く、ただ彼らの会話自体は第三者には全く理解できないような内容であったことは言うまでもなく、それも七不思議のひとつに数えられていたのでした。ただ一人、ある教授は二人の会話のまとめ役として携わるようになり、いつしか3人の研究室が学内に生まれていたのでした。


シニアン「確かに重力と時間の流れは関係していると私も思うわ。でもそれだけでは説明がつかない点があるのも確かよ?」


ニック「何が?」


シニアン「太陽は地球の重力の28倍もあるの。地球の年齢が46億年で太陽が47億年だとしたら、重力だけでは時間の流れの説明は付かないってことじゃない」


教授「確かに言われてみればそうですね」


ニック「それはあくまで相対的な感覚の話だからね。同様に速いモノが遅いモノを捉えたとしてそれぞれの滞在している時間までが変わるというわけじゃない」


シニアン「そう、そもそも相対性理論はあくまで一つの次元に対して一つの空間で限定された場合の話。だから空間がいくつも同時に重複しているような場合なら、また話は違って来ると思わない?」


ニック「面白いね(笑)面白いけどソレは現実的じゃないよ」


教授「逆にその仮定ならばあらゆる超常現象の説明がつくという事になるわけですよね?」


シニアン「さすがは教授♪頭の固い誰かさんとは違って(笑)」


 ニックは少し不服そうである。しかし、実はニックには二人の知らない秘密が隠されていたのでした。


彼は【タイムルーパー】であるということ。正確には前世の記憶を持ったまま生まれて来ており、そのため彼がこの世で学んだことはすでに彼の記憶の中では学んだことであり、ソレが彼を天才たる所以にしたものでもあり、また彼が退屈な人生を送らざるを得ない原因でもありました。


ニック「じゃあ、空間が同時に多重で存在しているとして我々がソレを認識していないだけだということなのかい?」


シニアン「ええ、認識しづらいのは空間もけして形として存在しているとは限らず、また隔絶されているわけでもなく部分的に干渉しているとしたら?」


ニック「それなら現実の壁をすり抜けるよりは可能性としてはありえなくもないけどね(笑)でも仮に移動できたとして人間のような精密な構造まで再構築は不可能だろう。ただデータだけなら或いは、、、いやしかし」


 この後、3Dプリンターというものが世に出る事になる。


教授「おや、妙な所にニックが食いつきましたね。ですが、今日はこのくらいにしておきましょう♪そろそろ守衛さんが怒ってきそうですから(笑)」


 シニアンがその時、カメラを取り出し二人の席の間に入って自分たちの写真を写しました。


シニアン「ほら、ここにも私達がいるでしょ?彼らはニ次元、私達は三次元だけどね(笑)」



【回想 終わり】



おちょぼん「おばあちゃま、お待たせ♪」


おちょま「お母様、お話のほうはお済みでしょうか?」


奥様「えぇ♪しろちゃんて面白い方ね(笑)」


しろたん「しろちゃん。コレ、おちょぼんのママに買ってもらったの」


しろちゃん「良かったね♪シルバニアファミリーじゃん」


おちょぼん「これで、一緒におままごともできるよね♪」


しろたん「うん♪この子ね、ニックって言うの」


おちょぼん「え、もう名前あるの!?」


しろたん「お店でいつも一人で寂しそうにしてたから名前付けてあげたの。おちょぼんのところでお友達がたくさんできると良いな♪」


おちょぼん「そうだね♪みんな優しくて良い子ばかりだから、しろたんみたいにすぐに仲良くなれるよ」 


 かつてニックと呼ばれていたその人物はこの数日後、色褪せた過去の思い出のように彼の病室に置かれた1枚の写真と共に安らかな眠りについたのでした。めでたしめでたし♪


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