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捏造の王国

捏造の王国 その45 もしも今冬に解散総選挙したら?プガク驚愕の計算結果!“ジコウ党ガース総理に殺されます?”

作者: 天城冴

食事キャンペーンやら、メイジの党のミヤコ構想やらの失敗に頭を痛めるガース総理。解散総選挙により、活路を見出そうかと総選挙シミュレーションを行う。ニホン国が誇る世界最高峰スパコン、プガクがはじき出した計算結果は驚愕のもので…

日の入りが早くなり、澄んだ日差しに色づいた葉が美しく映える季節となったニホン国。本来なら秋の行楽シーズンではあるが、新型肺炎ウイルスの影響で、ニホン人大移動で観光業ウハウハともいかず、ここ官邸でも悩ましい話題となっていた。

「ああ、お食事キャンペーンも資金が底をつくし、感染者はウナギのぼり。ウナギは絶滅寸前だというのになぜ、こんなに増えたんだ!おまけにドランプ氏の当選はやはり自称だとは。パイデン氏とお話はできたが、くううう」

嘆くガース総理。ひそかに手を組むことを考えていたメイジの党の看板であるミヤコ構想は否決され、それどころかジコウ党ソンカ派の重要現場部隊の婦人部からは総スカンをくらい、ソンカ派分裂の危機。おまけに前総理から仲良くしていたドランプ氏は落選の危機の上、破産、裁判、無一文コースもささやかれている。

「メイジのハシゲンらも頼りにならないし、一体どうしたら、やはり解散か、禁じ手ではあるが」

経済対策、ウイルス対策も目玉なしで、じわじわと失業、倒産、感染者が増え、そのうえ

「学術ニホン会議はまだあきらめてないようだし、が、学者ってなんてしつこいんだ!」

『いやだあ、しつこくなければ学者になんてなれないですよお。あるかないかも不明の素粒子追いかけて数十年で、ノーベル賞取った人もいたじゃないですかあ。賢さと粘り強さがないとだめですよねえ、あと誠実さ、誰かさんにも少しでもあればねえ』

と耳が痛いどころか、耳栓をして二度と聞きたくないセリフをいうのは、毎度おなじみとなってしまった地獄の書記官。今日はガース総理の置きっぱなしのスマートフォン液晶画面からの登場である。

「ま、また、お前か!で、でるな!スマホが使えないではないか!」

『どうせ今は使えないでしょう?あ、国会答弁の原稿を暗記しなくていいんですかあ?前のアベノ総理は覚えられなくても適当にべらべら喋ってましたけど、ガースさんはそれもできないんですよねえ。そのくせ前に喋ったことも忘れちゃうからあ、学術ニホン会議の任命拒否理由が、支離滅裂になってえ、官僚にも影でバカにされてええ、貴方に逆らったからだとかあ、国民にとって有益だけどアベノ・ガース政権にとっては嫌なご忠告したせいだってバレちゃうんですよお』

「そ、それが!なんだ!何で悪いんだあ」

『だからあ、政府がバカなことしないようにい、学術ニホン会議があるのにい、それ忘れて締め付けするからですよお。嫌なこという御異見番がいないとお、破滅しちゃうんでしょお、ニホン国は。いっぺん破滅しかけてえ、地獄も大変だったんですよお、もう。ホントにおバカさんで困りますよお。この間出演したINUHKだかのニュース番組で鋭い質問されたからってえ、子飼いの官僚使ってクレーム入れるなんてえ、情けないですねえ、みっともないしい、野暮ったいですねえ』

「ああ、な、なんでバレるんだ。私はそんなに人望がないのかあ!いや、支持率はまだ大丈夫。そ、そうだ、解散してどうなるか、シミュレーションしてみればよいのだ!ニホンには世界最高峰スパコン、プガクがあるではないか!早速手配を!」

『あ、そんなわかりきったことに超高性能スパコンを使うんですかあ、それよりウイルス感染のシミュレーションとかあ、有益な…プチ』

「ふふふ、スマホを使ったら、消えたか。こんな余計な声に惑わされず、さっさとニシニシムラ君に手配させるか、ああ、もしもし」

と書記官を無視して、プガクによる解散総選挙シミュレーションを行うよう指示するガース総理。だが

『ぷぷぷ。私や優秀キャスターを黙らせても、不都合な真実は変わらないんですけどねえ。ちゃんと目に見える形でわからせてあげないと駄目なんですねえ』

とどこからか書記官がつぶやいていた。


「そ、総理、結果が出ました。その…」

「おお、やはりプガク、もう出たのか。世論調査、経済動向、感染状況、その他もろもろの要素をいれて、複雑なプログラムを組んだと聞いていたが」

上機嫌なガース総理に対し、研究担当者ザトウ博士は口ごもりながら

「は、はあ、ディープラーニングを可能にし、高度なアプリケーションを使用できるように…」

とプガクの素晴らしさを解説するものの、何が何だか意味不明の単語の羅列に

「そ、それは聞いている(下手に返事して、私がコンピューターに無知なことがバレたらどうしてくれる、話題を早く変えよう)。そんなことよりシミュレーションの結果が知りたいのだ、私は忙しいし」

と、知識も知見も理解も乏しいことがバレないよう誤魔化すガース総理。が、真面目なザトウ博士はそんなガース総理の心中もしらず

「し、失礼いたしました。では、こちらの結果をお渡しします」

と、紙の束をガース総理に差し出した。

「ふむふむ、うーん(だ、だめだ。用語がわからん。政治用語とかではないのか。アウトブレイクとかエピデミックとか、パンデミックと同じなのか)。こ、これは大変なことになるのか」

「そ、そうです!アウトブレイクが起こってしまったら、終わりです!」

「お、終わりって、そんな君、ニホンが終わるような、その(ひいい、やっぱりパンデミックと同じようなものか、し、しかしパンデミックってそんなにヤバいことだったのか、ホントに)」

学者が何か言ってるぐらいにしか思わず、感染爆発についての用語をロクに尋ねもしないで知ったかぶりで対応していたことをちょっと後悔するガース総理。しかし、そんな総理の様子にも気が付かず、ザトウ博士は興奮気味に

「いや、総理もおわかりでしょう!ミヤコ構想の2週間後のオーサカ市や府の感染者の激増ぶりをみれば明白です!それが全国レベルで行われるんです!アメリカは今や世界で群を抜く感染者を出してるんです!ドランプ氏がマスクなし、ハグ、キスありの集会をやめずに、かえって扇動して新型肺炎ウイルスを広めたと米医師会が非難していたのは嘘ではない!たとえ、一人でも感染者がいたら、あっという間に広まるんです!特に会食!支援者を集めた会食なんて持ってのほかです!アトウダ大臣のマウスシールドなんて気やすめです!アベノノマスクなんて、かえってウイルスを拡散しかねない!プガクの結果でも不織布マスクの立体型でさえ完全防御は無理だというのに、皆さん、変なマスクに手洗いをせずに平気で飲み食いなさるし!サンカイ幹事長はこの時期会食三昧、他のジコウ党の皆さんも!クリスマス、正月行事、後援会の忘年会、新年会なんて、ただでさえ危ないのに!このうえ選挙活動なんてやろうものなら、感染爆発でニホンは破滅です!」

「は、破滅」

「そうです!今でさえ医療現場は疲弊、病床が不足することが懸念され、北の都市から封鎖も言われているんです!ああ、なんで隣国みたいに検査しなかったんです!なんで医療機器や医者、看護士に資金をかけなかったんです!その結果がどうなるか、計算しなくてもわかるじゃないですか!うちの妻なんて働きづめで、もう何か月も会えないんですよ」

『ザトウさんの奥様は優秀なお医者さまですからねえ。何人もの方を必死で助けてますからねえ。ニホン国民何千万を死に追い詰める貴方と違って』

と不気味なセリフ

「うっわ、な、なんてことだ!(ど、どこから出てきたんだ、地獄の書記官!)」

『スパコンでーす!こういう人の精神を模したものは取りつきやすいって、なんたらワトソンさんとかが言ってましたよお』

「ま、まさか、このプガクの計算結果は(お、お前がいじって最悪にしたのかー)」

『そんなことしませんよお。ただちょっと計算のお手伝い。人が思いつきにくい要素を足してあげただけですよお。気象条件とかでなくてえ、人の心の動きというかあ、ほら、お酒とか飲んだり、年末年始浮かれて騒いじゃうことによる危険性、感染率が増加したり発症して重症化したりするのを数値化して、加えてあげただけですよお』

「そ、それは確かに重要だが(そんなことわざわざやらんでいい)」

『より精度の高い計算結果にしてあげただけですよお。これでえ、かなり正確な未来予測ができますねえ、かなり悲惨ですけど』

「ひ、悲惨どころか(よく見たら、死者数が、わーこの人数じゃ首都がなくなる!し、しかも治っても後遺症のため働くどころか生活もままならない患者がでて医療費増大だと!ジコウ議員は…ひぃぃぃ、サンカイさんはじめ、死者、重症患者続出だとおお!こ、呼吸器は、治療薬は)」

『呼吸器を使いこなせるお医者さんの数もお、限られてますしい、皆さん疲弊してえ、そろそろお倒れのかたもでそうですしい。治療薬もお、絶対確実万人に効くってわけじゃあないですしい。あ、ドランプ大統領の使った薬ってかなりヤバいらしいですよ。ステロイドとか使いすぎると頭やられちゃうしい、なんたら抗体カクテルなんてえ、中絶した胎児の細胞をもとに作られたとかでえ、保守派激怒らしいですねえ。あ、あの薬使うと再感染したら死ぬ危険性が激増ってやつもあるみたいですしい』

と非常に恐ろしいことを呑気そうに話す地獄の書記官。

「だ、だが、いくらなんでも、そんなひどいことに」

『なーに、言ってるんですかあ。今だって大派遣切り、ホームレス激増、隠れ倒産、廃業、感染者はどんどん増えてますよねえ。貴方が学術ニホン会議にダダこねるわ、なんたらキャンペーンで全国に感染者まき散らすわで。おまけにキャンペーンはお仲間のみが潤って、中小企業は息絶え絶え、しかも不要不急の法案やら政策にばかり熱心で、ウイルス対策真面目にやらない。そのうえ国際大運動会に観客呼び込み、隔離もロクにしない。いやあ、重症患者増やしますよねえ、貧困で死を選ばざるを得ない人も大勢出ますねえ。ホント、ジコウ党いやガース政権に殺されるようなものですねえ、ニホン国民は。このうえ、解散総選挙なんて冬にやろうものなら、ニホン国全体、まさに破滅、国がつぶれますねえ、医療崩壊、経済大打撃、国民激減で。地獄で貴方への怨嗟があふれかえりそうですねえ。貴方、地獄でキジ元総理やアベノ前総理よりずーっと酷い目に合うかもしれませんねえ、ニホン国民の大半を死に追いやった、間接的に殺した罪で』

「ひいい、う、嘘だああ、嘘だと言ってくれえ!」

思わず叫ぶガース総理。

と、そこへ

「そうだああ!プガクの結果なんて嘘だああ!」

と乱入してきたのはメイジの党のマツイダ市長、ヨジムラ府知事、なぜか手にバッドだの、木刀だの、物騒なものを持っている。

「総理!この結果は嘘です!ハンニチサヨクの陰謀です!このザトウとかいう奴も、プガクも我々の敵です!」

「ど、どうしたんだマツイダ君、一体」

マツイダの意味不明のセリフに困惑するガース総理。

「ミヤコ構想やったから、感染者が増えたなんて結果信じるもんかー!俺たちのせいで医者が死にそうだ、ニホン一の新規感染者数なんてえ、デタラメだああ!」

「マツイダ市長、ご依頼があったから無理をしてシミュレーションをしたんです。ウイルスの解析や他の件もありましたが、感染経路や感染者数について知りたいとおっしゃるので、ウイルス感染拡大防止と対策のためにやったのです。結果を今後の政策に役立て、市民、府民、国民の命を守るためにです!結果が望むものでないからといって、私やプガクを否定するのはおかしいです!非科学的なことを何度も言うのはいい加減慎んでいただきたい!」

至極真っ当な反論をするザトウ氏に対し

「ウルサイ!科学なんてどうでもいい!会見で利用するためにあんだよ、カガクテキチケンなんて!俺の思い通りにならないのは全部、サヨクだ、敵だ、ハンニチだあ!」

異口同音に叫んで、プガクを壊そうとするマツイダ氏ら。

「わー、やめてください!世界最高峰、ニホンの栄誉、ニホン国民に多大な恩恵をもたらすスパコンであるプガクに何するんですかー!」

必死で止めるザトウ博士他警備の面々。

暴漢そのものとなったマツイダらが羽交い絞めにされるのを呆然と眺めるガース総理。

(ああ、いっそ、私もプガクを破壊したい!何もかも否定したい!し、しかし地獄の書記官の言う通り、残酷な予想を否定しても、現実は変わらない…。いや、支持率が…、ってマスコミを暗に脅して現政権に有利にし、ネトキョクウ連中を騒がせているだけというのは、他らならぬ、この私が一番良く知っているんだ…)

 残酷すぎる事実を実は誰よりもわかっているが、あまりに情けなく、つらすぎるので計算結果ごと壊してしまいたいガース総理であった。


どこぞの国のスパコンは世界最高峰だそうですが、なんで感染者数シミュレーションとか行って政策とか決めないんですかねえ。グーグルとか他企業、国家いろいろ、各国のデータなどから予測してるらしいですが、極東の島国の感染者数予測はだいたいあたってるみたいですねえ。なんちゃらキャンペーンとか関係ないんだ!という人もいますが、予測と実測値がかなり近い場合、関係ないんて言えるんですかねえ。

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