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魔導王国物語 ~誰が王にふさわしいか~  作者: 森野うぐいす
第三章 ゾンダーク教について
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第17話 聖女と少年王

 アラタとマルコはその後もあれこれ言い合っていたが、結局、アラタはマルコと一緒にゾンダーク教の神殿に行くことにした。

 マルコがあまりにもしつこいからである。


 中央区域は綺麗に区画された街である。

 行き交う者は上流階級の人々だ。


 マルコはアラタの後ろで、まるで従者のようについて歩いていた。

 普段は先輩ぶるマルコなのだから、前を歩いていてもおかしくないのだが……

 彼はいま、怖気づいている。

 中央区域にはほとんど来たことがなかったからである。


”まあ、あれはアラタ・アル・シエルナ……様?”

”新しく自治領主になったとかいう……?”


 中央区域の人々は、アラタの顔を知っている。

 王宮が魔導で区域放送(ブロードキャスト)したからである。

 あの貧民窟の自治領主か、と人々の好奇の目で見られている。


 人々が好奇の目で見るのには、もう一つ理由があった。

 つい今しがた、この国の国王がここを通ったばかりであったのである。

 この国の国王とは、もちろんあの少年王のことだ。


”それにしても、あの貧しい地域の領主とは……”

”領主様というなら、もう少しまともな服を着ても良いだろうにな……”

”国王陛下も何をお考えになっておられるのでしょう……”

”声が大きい。陛下のことを口にしてはいけない。どこに耳があるか分からない……”


「おい、お前、噂されてるぞ」マルコが話しかける。

「うん。わかってるよ」アラタはイヤそうに答えた。


 この大通りには等間隔にいくつかの噴水と、いくつかの花壇が並んでいる。

 花壇にはこの季節の花々が整然と植えられていた。

 もちろん、それは美しい。


 ただ、アラタやマルコにとっては、整然とした美しさは居心地の悪いものでもあった。

 彼らはもっと雑多で、汚らしくて、それでいて人間らしい街で育ったのである。


 大通りに面してゾンダーク神殿はあった。

 神殿といっても仰々しいものではなく、いたって簡素な建物であった。

 ただ、その外壁は異様なほど真っ白であった。

 清潔な印象といえば、そうであろうけれども、何か人を寄せ付けないような気味の悪さをアラタは感じた。


 いざ、神殿に入ろうとすると、マルコは躊躇した。


「俺、やっぱり入りたくない」

「この中にリリさんがいるの?」

「うん。ゾンダークの病院のやつがそう言ってた」

「リリさん、なんで神殿にいるのかな?」

「ゾンダーク教の巫女だか聖女だかになるとかなんとかって」

「そうなんだ。

 で、どうするの? 入らないで帰る?」

「うううううう」


 マルコは悩んでいた。

 リリ・ミシア・ナミに会いたくないという気持ちと、でも一目だけでももう一度、彼女を見てみたいという気持ちがないまぜになっていた。


「帰る?」

「うう、入るよ、入る」


 二人は思い切って、神殿の中へと入っていった。

 ゾンダーク神殿の中は、たくさんの人がいた。

 神殿に人が集まっているというのは本当のことであったようだ。


 神殿の奥、一段高くなっている場所に薄気味の悪い彫像が立っていた。

 ゾンダーク信徒達が(あが)める神〈ダトゥル=ザ・オ・ゾンダーク〉の偶像である。


 リリ・ミシア・ナミはその彫像の前で祈りらしきものを捧げていた。

 そして、その傍らにミラノ・レム・シエルクーンがいた。

 この国の少年王である。


「あ! あいつこないだの!」


 マルコ・デル・デソートは、やや甲高い声で言った。

 ミラノは振り向き、まっすぐにアラタを見た。


お読みいただきありがとうございます!

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