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第16話 法王国王宮・襲撃事件

第四章 忍び寄る災厄

 その日、ダルシア法王国はひどい雨であった。

 法王国国王であるウイト・ウェルギリウス・ダルシアは、法王国王宮・王座の間にいた。

 この法王国の国王は、代々、白魔導士がつとめることになっている。この熊のような大柄の男は、この国随一の白魔導士である。


 また、法王国の国王は『ルナドート教の法王』も兼任している。

 隣国・シエルクーン魔導王国とは互いに、自分達こそがルナドート教の正統なる信徒であるとの『見解の相違』があるため、シエルクーン魔導王国の者達は、法王国の国王が『ルナドート教の法王』を名乗ることを認めてはいない。


 当の主神〈エスタ・ノヴァ・ルナドート〉は、そんなことはどちらでも良いと考えているのであるが。


 ともかくも、その日はひどい雨であった。

 熊のような大柄の男、この国王はよく日に焼けた、本来は陽気な男である。

 しかし、その日は王宮の大窓に打ち付ける雨粒を、物憂げに見つめていた。


「何者か!」


 叫んだのは、法王国王宮・王座の間・大広間に控えていた〈剣聖〉フタバ・ディア・レイクであった。元剣聖の娘である。

 何者か!――〈剣聖〉フタバの声が王座の間・大広間に響き渡る。


 白魔導の結界が幾重にも張られている法王国王宮・王座の間に、三体の黒い影が現れたのである。

 黒い影はなにか魔導を詠唱する。

 彼らは黒魔導士であった。

 ――空間がまるで海のようにうねった。


 空間は歪み、いくつもの大きな波と化した『空間だったもの』がウイト・ウェルギリウス・ダルシアに襲い掛かる。


 〈剣聖〉フタバはその歪む空間の中、タンッと床を蹴ると跳躍し、大きな波と化した『空間だったもの』を器用にかわし、両手に持った二本の剣で黒魔導士の一人を真っ二つに斬った。


 残った黒魔導士二人が、さらに魔導を詠唱する。雨で薄暗い王座の間・大広間にぬらりと漆黒に輝く二重の魔法陣が広がる。


 それと同時にウイト・ウェルギリウス・ダルシアは白魔導を唱えた。

 空間の、海のようなうねりが止まった。

 法王ウイトが時間を止めたのである。

 本来は、時空律令というダルシアの法令により、時間を制御することは禁止されているのだが――


 ウイト・ウェルギリウス・ダルシアは止まった時間の中、二人の黒魔導士にゆっくりと近づき、魔導の力で彼らの息の根を止めた。

 法王ウイトにとって、時間を止めることも、人間の息の根を止めることもたいした労力ではない。

 しかし、自ら止めたとはいえ、止まった時間の中で動くことは彼の体力を相当に奪った。


 ――やがて時間は動き始める。

 大きな波と化した『空間だったもの』は既に消えている。


 薄暗い王座の間・大広間に、真っ二つに斬られた魔導士の死体が一体、息の根を止められた魔導士の死体が二体、ころがっていた。


 法王様! とフタバ・ディア・レイクが叫ぶ。


「この者達が何者か調べよ」


 法王ウイト・ウェルギリウス・ダルシアは、大広間にいて何もできなかった上級魔導士達に命じると、そのままその場にうずくまり倒れてしまった。

 フタバ・ディア・レイクは、もう一度「法王様!」と叫び、法王ウイトに近寄り「たれぞ、法王様を癒しの間へ」と言った。


 幾重にも張られた白魔導の結界である。厳重に守りを固めたこの王座の間・大広間に不審者が現れるとは誰も考えていなかったのである。


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