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第15話 修道院病院の聖女

 マルコは、倒れてしまったのでこの病棟の空いているベッドを勝手に借りて寝かせておくことにした。


 白梅の詠唱した白魔導のパワーはすさまじく『蒼き死の病』の患者たちの病状の進行は完全に止まったようである。

 皮膚からにじみ出ていた膿は止まり、その強烈な匂いも梅の香の粒子がかき消していった。

 また、患者たちは体中の痛みからも解放され、すっかりぴんぴん元気になっている。

 そのためちょっとした騒ぎになり、ゾンダーク教の僧侶が何人かやって来た。


「お前達、いったい何をしたのだ!」

「いや、あっしらは『蒼き死の病』に効くという白魔導を使ってみただけでやして」

「白魔導?

 ここはゾンダークの領域であるぞ、ゾンダークの神々にお伺いも立てず白魔導を唱えるとは!

 なんと恐ろしいことを......」


 それでゾンダーク教の僧侶達とひと悶着あったわけだが、ベアーが「そうでやんすか、大変でやんすね」とかのらりくらりと言いかわしているうちに、「お前たちは、ゾンダークの神々から罰を受けることになるぞ」と捨て台詞をはいて彼らは戻っていった。


 リリ・ミシア・ナミは、マルコを心配そうに見ていた。

 マルコはやがて目を覚ますと、目の前にリリの顔があったので、ちょっと驚いたようだ。

 リリを見ると、彼は顔を赤くして頭から湯気が出した。

 先輩は女性を見ると頭から湯気が出る体質なのか? とアラタは不思議に思ったが、ベアーは男とはそういうものでやんす、親分もあと数年もすればそうなるでやんすと言った。


 そういうものなのでしょうか?

 まあ、それはともかく、リリがマルコに話しかけた。


「マルコさん、大丈夫ですか?」

「......あ、俺、倒れちゃったんですね......」

「マルコさんが白魔導の発動のため頑張ってくださったこと、聞きました」


 マルコは元気そうになった患者達を見て、ほっとした顔をした。

 それから神妙な顔をしてリリに言う。


「......リリさん、俺、俺、俺、......、

 正直言って、こないだ、リリさんやここの患者さん達のこと嫌そうな目で見てしまって......

 俺、俺、なんかその......なんかその......」


 マルコは本当はもっときちんと謝りたかったのだが。

 しどろもどろになってうまく言葉が出ない。


「みんなそうですよ。誰もがみんなこの患者さん達をそういう目で見ます。

 でもマルコさんは綺麗で素直な心をお持ちと思います。

 マルコさんはこの患者さん達のためにご尽力くださいました」


 そしてしかし、ベアーは長居は無用でやんすと言い、マルコはそのままにして、アラタを連れて病院を後にした。


 後日、聞いたところによると、症状の出ていなかった患者さんは退院することができたそうである。

 しかし、修道院病院は症状が出て皮膚が黒くただれた人は退院させなかったそうだ。

 リリは、やはりそういった患者さんのお世話をしたいということで、病院に職員として残ったという。


 それを聞いて、マルコは「リリさんはやっぱり聖女なんだ」と呟いた。


***


 病院から出るとアラタは「僕、ちょっと用事があるので」と言い、ベアーと別れた。

 彼は闇冒険者ギルドというのに行ってみたいのだ。

 教育係のスライムさんは法律違反と言うが、アラタも貧民窟といわれる町で育った少年である。

 法律違反なんてなんぼのものですか、と彼は思う。

 アラタはべつに真面目な優等生ということでもなく、本来の彼は本当はそこそこ悪童でもあるのだ。


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